縁側で交流楽しめる
第925回よその旅館ホテル
──宿の歴史は。
「少なくとも江戸末期には宿をやっていたとの資料があるのですが、それ以前については分かりません。ただだいぶ昔から大峯山に入る行者の団体をお迎えしていたようです」
──一番の売りはなんでしょうか。
「会話の多いところでしょうか。私も従業員も、常連さん、一見さん関わらずいろいろ話しかけ、世話をやきます。お客さまとの距離が近くないと逆に失礼があるような気持ちになるんです。『大峯に行って無事に帰ってきてほしい』と行者を案じ、世話する気持ちに由来するものなのでしょうね。そこが今どきの宿と違うのか、お客さまに喜んでいただいているようです」
「洞川の宿はどこも通りに面して、たくさんの行者が一度に装束を解いたり草履を脱いだりできるような広い縁側があります。最近はお客さま同士、座っておしゃべりしたり、温泉街の雰囲気を楽しまれたりするふれあいの場になっています」
「行者や登山客の他に、都会の仕事を持つ女性などさまざまな年代の人が1人旅で泊まりに来ます。従業員や他のお客さまとの触れ合いを楽しみにされているリピーターの方も多いですね」
──経営の課題は。
「木造なので設備の修繕、維持が一番。あとは冬の集客です。冬場はマイナス10数度まで冷え込み、雪も降りますが、それでも来ていただける方法はないか考えています」
「近年は高齢化で行者の団体が減っており、行者の歴史や過ごし方などが失われていくのはもったいないことです。若い人に受け継いでもらうきっかけづくりに、洞川の旅館組合では毎年5〜9月には行者体験を行っています。ぜひご参加を」
【14室、1泊2食税別1万2千円から】