古美術に囲まれた宿
第742回よその旅館ホテル
──彫刻で有名な井波別院瑞泉寺の目の前ですね。
「元禄時代に創業して以来、参詣の宿として瑞泉寺の側で営んできました」
──何代目ですか。
「20代目になります。女将と21代目になる息子と一緒に家族で経営しています」
──井波は木彫刻の町です。
「江戸時代、火災にあった瑞泉寺を再建するため京都からやってきた大工が井波に木彫刻を伝えたと聞いています。瑞泉寺の前の八日町通りは彫刻の工房が建ち並び、彫刻師が店を出しています」
──館内にも木彫刻を飾っていますか。
「興味があるお客さまは当館の欄間を熱心に見学されます。彫刻以外にも何代にもわたって集められた掛け軸や屏風、香炉などの美術品を床の間に飾っていますので、女将が案内しています。『小さな美術館のような宿』と言って下さったお客さまもいます」
──建物はいつ頃のものですか。
「昭和初期です。書院造りの古い宿ですが、普請の仕方や材料が凝っていると、大工さんがわざわざ泊まりに来ました」
──木彫りの里らしい純和風旅館ですね。
「そこが一番の自慢です。この雰囲気を気に入られて、中高年の方がリピーターとして来てくださいます」
──過去には池波正太郎さんや白州正子さんもお泊まりですね。
「池波さんは井波が父方のルーツということで、二度泊まられました」
──美術品の手入れは大変ですか。
「掛け軸や、絵画の手入れは大変です。季節に合わせた掛け軸をかけて、和風旅館ならではのおもてなしを楽しんでいただけたらと思っています」
【8室、1泊2食付き9千円から】