全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が3月に発行した「旅館・ホテルにおけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理手引書~宿泊者に提供する夕食・朝食を対象に~」からHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の取り組みについて抜粋して紹介する。
衛生管理計画を作る
食中毒の発生要因から調理に関わる作業のなかで押さえておくべきポイントが見えてきた。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理手法は、それらのポイントをあらかじめ取り上げ、いつ、どのように対処したら良いか計画を立て、計画に沿って実施することが大切になる。
◆一般的衛生管理のポイント
ここでは、「付けない」「増やさない」対策を計画し、提供する食事を衛生的に取り扱うことを目的とし、次の項目について日常と年間の計画を作成する。
・日常管理
原材料の取り扱い「納品時の確認」「冷蔵・冷凍庫の温度の確認」
厨房、配膳場所の清潔維持「食材への汚染防止」「設備・器具食器類の洗浄、消毒、殺菌」「トイレの洗浄、消毒」
食品取扱者の衛生・健康管理「従業員の衛生管理、衛生的な作業着の着用など」「衛生的な手洗いの実施」
・年間計画で管理
施設の点検「衛生害虫などの駆除」「使用水の管理」「天井、壁、排水、床の点検」
従業員の衛生教育「衛生的な手洗い」「食中毒予防対策講習など」
◆調理工程に応じた重要管理のポイント
調理する食材にはもともと付いている有害な微生物が存在する可能性があるため、調理工程ごとに「増やさない」「やっつける」対策が必要となる。旅館・ホテルで提供する食事の調理工程を大きく分類すると、次の三つのグループに分けて考えることができる。
(1)加熱調理せずに提供
(2)加熱調理し、熱いまま提供
(3)仕込みなどで加熱調理後、冷却し、冷たいまま提供、もしくは再加熱して提供
また、旅館・ホテルで提供する料理は、一つ一つ手作業で丁寧に盛り付け、配膳を行うが、盛り付け、配膳の際に、不十分な手洗いにより有害な病原微生物で汚染させてしまう恐れがある。
盛り付け、配膳は、宿泊客が料理を食べる前の最後の工程となることから、衛生的に取り扱う必要があり、四つ目のポイントとして「付けない」対策が必要となる。
(4)衛生的な盛り付け、配膳
これら四つを調理工程に応じた重要管理のポイントとして下の表のように整理することができる。
衛生管理計画に沿って実施
衛生管理計画を作成し、計画に沿って一般的衛生管理と調理工程に応じた重要管理を実施する。計画に沿って実施することで、作業のムラを防いだり、どの担当者が行っても同じ作業を行うことができ、事故防止に役立つ。
計画を立てる際は、日頃行っている作業を簡潔に盛り込み、どのような衛生管理を行っているかを整理することが大切だ。
実施した記録と振り返り、記録の保管
計画に沿って実施した衛生管理は、1日を振り返って(仕込み後や夕食の提供後などに)実施記録を記入する。記録といっても、計画に基づいた項目にできていれば「良」に〇、できていなければ「否」に〇を付ける。「否」となったときはどのようなことがあったのか、特記事項にメモを記入しておくと、万が一事故が起こった時などに振り返ることができる。
また、定期的に(1~2週間に一度程度)記録を振り返り、適切に衛生管理を実施できていたのか、うまくできていない項目などがないのか確認することができ、施設の衛生管理の向上に役立てられる。
記録は保健所の監視指導などで提示することがあるので、1年間程度保管しておく。