「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律案」(観光圏整備法案)が16日、参院本会議で可決、成立した。誘客や滞在促進に広域で取り組む隣接する複数市町村を「観光圏」に認定し、長期滞在につながる観光地づくりを補助事業などで総合的に支援する。8月までに施行される見通し。初年度は、10数カ所の支援を想定している。
観光圏整備法は、国内客、外国人客を問わないものとしては、観光地づくりを支援するための初めての法律と言える。また、同法に基づき市町村や都道府県が策定する観光圏整備計画を農山漁村活性化法の規定による活性化計画の提出とみなし、別途に交付金も受けられるなど、横断的な支援制度になっている点も特色だ。
複数の観光地を観光圏として連携させ、国内外の観光客による2泊3日以上の滞在を促進するのが狙い。周遊・体験型の観光メニューの充実や宿泊の魅力向上、移動の快適化、観光案内の強化などに向けた地域の取り組みを支援する。
市町村や都道府県は、関係団体や観光事業者などで構成する法定協議会の立ち上げを受けて、観光圏整備計画を国に提出。観光圏整備のための事業を実施する事業者らは、さらに具体的な実施計画を申請する。国に認定されると、事業費に対して最大40%の国費補助が受けられる。
観光圏整備に関する今年度予算額は、調査費などを含めて約2億8千万円。「初年度には10数カ所の観光圏を支援したい。すでに高い関心を持っている地域もあると聞いており、実際に自治体からの問い合わせも多い」(国交省観光地域振興課)。観光圏の詳しい認定基準などは、基本計画を策定し、今後公表することにしている。
宿泊施設も支援 財投に特例措置
観光圏の中には、宿泊サービス向上のための事業を重点的に実施する「滞在促進地区」を設定する必要がある。宿泊の魅力向上には実施計画に基づいた補助事業による支援のほか、同地区内の宿泊施設が客室改修などの設備投資を行う場合、中小企業金融公庫から特別融資が受けられるようにした。貸付後の5年間は最優遇金利が適用されることになっている。
また、同地区内の宿泊業者には、旅行業法の特例措置として、観光圏内を範囲とする宿泊旅行商品を取り扱う旅行業者代理業を認める。一定の研修などの条件を満たせば、旅館・ホテルのフロントで着地型旅行の受け付けなどが可能になる。