北海道豊富町と秋田県仙北市、大分県竹田市は7月22日、東京・赤坂の竹田市東京オフィスで「温泉力地域協力協定」を締結した。それぞれ特徴的な泉質を持っているが、協力し合うことで国民の健康増進に寄与し、さらなる観光振興を図るのが狙い。3市町は厚生労働省に温泉施設に対する医療費控除の規制緩和要望を行っており、この実現も視野に入れている。温泉を生かした新たなビジネスモデルとなるか、今後の展開が注目される。
同日は豊富町の工藤栄光町長、仙北市の門脇みつひろ市長、竹田市の首藤勝次市長が出席、NPO法人健康と温泉フォーラムの三友紀男会長立ち合いのもと、協定書に署名。締結式には日本健康開発財団、PHP研究所、ANAセールスの関係者も同席した。
豊富温泉の泉質はナトリウム塩化物泉など2種類。いずれも黄濁し、井戸からは石油や天然ガスとともに湧出してくるためわずかに油分を含んでいる。この油分が抗炎症作用を発揮するため、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬(かんせん)に効果があるとされる。
一般用と湯治用の浴場を備えた町営の日帰り入浴施設「ふれあいセンター」には、保健師常駐の健康相談室や総合案内所兼憩いの場となる「コンシェルジュ・デスク」などを設けるなどサポート体制を充実。自炊形式の宿泊施設もある。「アトピーや乾癬に悩む人たちの救いの場ともなっている」と工藤町長。
仙北市の玉川温泉は、1カ所から毎分9千リットルという湧出量を誇り、ph(ペーハー)1.2という強酸性の温泉。神経疾患や皮膚病、脊髄性小児まひや悪性腫瘍(ガン)に効果があるといわれる。特に、ガンの予防や再発防止が期待される「北投石」は玉川温泉が日本唯一の産地であることは有名だ。特別天然記念物に指定され、保護されている。
地方創生では玉川温泉を中核とした医療と健康の国際交流拠点を提案、3月に特区指定とする方針が閣議決定されている。門脇市長は「この取り組みが湯治文化を世界に発信し、医療としての温泉に位置付けられる力になればいい」と力を込めた。
竹田市の長湯温泉は高濃度炭酸泉のため、循環器・消化器系疾患の療養に適している。浸かるだけでなく、飲んで直す「飲泉文化」が根付いているのも特徴だ。7月には日本健康開発財団と慶応大との産学官連携による飲泉エビデンス調査を実施し、高濃度炭酸泉の効果を発表した。
また、湯治を目的とした長期滞在者に給付金を支給する独自の「温泉療養保険制度」を設けている。
首藤市長は「3温泉地の治療効果の調査研究をさらに進めながら、ゆくゆくは温泉の力を世界に知らしめたい。また、この締結が特色ある温泉力を持つ全国の温泉地とつながるきっかけになれば」と抱負を述べた。
3市町は先頃、厚労相に「温泉利用型健康増進施設における医療費控除認定要件緩和に関する要望書」を提出、大病になる前の湯治に公的医療保険を適用できるよう働きかけている。
締結後ガッチリと手を握る(左から)工藤、門脇、首藤、三友の各氏