WILLERとJR北海道は10月22・23日、「北海道観光MaaSカンファレンス」を開催した。
1日目は開会式、Nature Passの知床探検バスの視察、懇親会が、2日目には摩周レストランバスの乗車体験、JR釧網本線の視察乗車およびカンファレンスが実施されました。
「Nature Pass」は、観光MaaSの実現を目指し、目的地までの鉄道と着地交通の見える化をし、それらをシームレスにつなぐことで旅行者が行きたいところに行けるようにするために作られたプラットフォームで、2018年9月から10月の期間限定で、ひがし北海道で販売・利用されています。
本カンファレンスは、この「Nature Pass」を、2023年に年間50万人・消費額250億円を創造する観光MaaSプラットフォームとして実現するため、その施策の検討を目的に開催されました。参加者は「Nature Pass」を視察・体験したうえで、様々な議論を行いました。
<1日目>
■開会式
開会式では、2日間にわたるカンファレンスをより意義深いものにするため、カンファレンス実施の目的と現在のNature Passの取り組みを参加者と共有しました。主催者挨拶を行ったWILLER 代表取締役 村瀨茂高は「Nature Passの取組みは、WILLERだけでは実現できない。ここにいる皆さまのテクノロジーやサービスを掛け合わせることで実現できる。」、JR北海道 常務取締役 綿貫泰之氏は「ひがし北海道は自然に恵まれた北海道の中でも、特に恵まれた地区である。それぞれの得意分野の方に参加頂き、この地区を盛り上げていきたい」と述べられました。さらにご来賓の網走市長 水谷洋一氏は、「国立・国定公園を走っている列車は、世界広しといえどもこの釧網本線だけではないか。世界に誇れる貴重な財産をしっかりと残していきたい。」と述べられました。
■知床探検バス視察
Nature Passに含まれる「知床探検バス」の視察では、実際に運行しているコースとともに、今回の特別コースとして、原生花園駅の車窓見学や知床五湖の見学などを行いました。移動中、野生のキツネやエゾシカに遭遇し、ひがし北海道の大自然を感じられる一幕もありました。またバス車内では、網走、小清水、斜里、清里の市町の担当者や観光協会の担当者より、それぞれが抱える現状の課題や観光PRが行われ、参加者は、各自それらの課題に向けどのような事ができるのか、観光体験と共に検討・議論を行う場となりました。
■懇親会
JR釧網本線沿線の自治体や地元事業者、道外の事業者ら約100名が親睦を深める場として、懇親会を開催しました。
会の初めには、まずWILLERの村瀨より、JR釧網本線が抱える現状の課題や、沿線の豊富で魅力的な観光資源への着地交通の整備および連携の重要性を発表し、「この懇親会の参加者全員が主体となり、協力していけるようにしていきたい」と力強く語りました。弟子屈町長 徳永哲雄氏、斜里町長 馬場隆氏、清里町長 櫛引政明氏、小清水町長 久保弘志氏にもご挨拶頂き、「各エリアの食や景観、自然の魅力を発信していきたい。」「素材はどれもよいが、それをどのように発信していくかが重要で、例えば地酒のボトルのデザイン一つでもこだわる事で良さをより多くの方に発信できると実感している。」などの話がありました。地元事業者を代表し、1日1組限定の宿泊施設を経営する「ワッカヌプリ」のマネージャー島津友美氏と「弟子屈町ブドウ・ブドウ酒研究会」の髙木浩史氏から取り組み発表も行われ、発表後には、参加者同士が交流する名刺交換の場も設けられ、活発なビジネス交流がなされました。
<2日目>
■摩周レストランバス乗車体験
Nature Passに含まれる「摩周レストランバス」の乗車体験を行いました。2階立てのオープントップの「レストランバス」に乗り、摩周湖や硫黄山など阿寒摩周国立公園を巡りながら、ひがし北海道の絶景とその土地ならではの食を堪能いただきました。メニューは、クリームチーズのハスカップジャム添え、弟子屈産のじゃがいもを使った揚げたていもだんご、メロンソフトクリーム、採れたてのミルク、牧場の牛乳で作ったモッツアレラチーズの特製ピザが提供されました。バス出発時には、今回の特別イベントとして、弟子屈産ベリージュースで乾杯を行い、参加者一同大いに盛り上がりました。酪農家やアイヌ民族と交流する機会もあり、参加者からも多くの質問が飛び交いました。
■JR釧網本線乗車体験
摩周レストランバスの乗車体験終了後には、JR釧網本線の視察が行われました。摩周駅から釧路駅までの区間を乗車し、ゆったりとした時間が流れるローカル線の良さを実感いただきました。釧路湿原を通過する際には、雄大な景色を写真におさめる方や、自身のSNSに投稿をし、ひがし北海道の素晴らしさを発信する方もいました。
■北海道観光MaaSカンファレンス
2日間の集大成として、『北海道観光MaaSカンファレンス』を実施し、来賓の釧路市副市長 名塚 昭氏より開会の挨拶を頂いた後、JR北海道 執行役員 釧路支社長の萩原国彦氏より基調講演「JR釧網本線の現状と今後」についての発表が行われました。その後、「釧網本線を活用した観光交通は、テクノロジーによってどう変わるのか?」「移動データとコンテンツの組み合わせで、トラベラーのエクスペリエンスが変わるか?」をテーマにトークセッションが行われ、「Nature Pass」の方向性や交通の見える化などについて、専門家らが意見を述べ合いました。
会の中では、AIを活用した旅行者の行動予測や、時間や気候、感情などを考慮した交通の用意など、個人旅行者向けのアイディアが出されました。さらに、自動運転技術を活用することで、旅行者の利便性が向上できるという意見も出されました。コンテンツ作りとしては、今ある魅力的なコンテンツをどのように編集・発信すれば、潜在的な旅行者のニーズを顕在化させられるかなどについて、事例をもとに議論されました。