JTB商事(後藤悟社長)は8、9日の2日間、富士河口湖温泉郷の湖山亭うぶや(外川誠社長)で「2010年度旅館ホテル経営セミナー」を開いた。
年に1度実施している同セミナー。今回のテーマは「若手経営者、次期後継者が取り組むべき経営改善策」。募集定員の20施設、25人は専務、常務、若女将らでほぼ満席となった。
今回はテーマに合わせて講師にも若手経営者を起用。昨年3月に大規模なリニューアルを行った、うぶやの外川一哉常務は、「そうだったのか旅館経営 4つの視点で業務改善」と題して冒頭に講演。経常利益率7〜9%弱を毎年安定してたたき出している同社の経営と組織運営の具体的手法について話した。
ホテル五龍館(長野県白馬八方温泉)女将の中村ゆかりさんは、長野五輪の翌年に売り上げが1億円減少し、キャンプ型宿泊プランの開発や年会費3千円の会員組織「五龍館クラブ」の立ち上げなどで乗り切った体験談を語った。リピータを上手に囲い込む集客手法を披露した。
ほほえみの宿滝の湯(山形県天童温泉)の山口敦史専務は、同館が取り組む環境配慮について解説した。自館の廃食油で石けんとBDF燃料(バイオディーゼル軽油)を作り、食器洗いや浴場用の石けん、送迎車やボイラーの燃料としてリサイクル利用していることや、食べ残しなどの生ごみをたい肥化し、自家農園で作る無農薬野菜・果物の肥料としていること、使用済みの割りばしなどで木酢液、竹酢液を作り、防虫防菌剤として自家農園にまいていることなどを具体的に紹介。エコロジーへのこだわりと実績で範を示した。
また、金融・法律コンサルタント会社、リベロの団弘志常務が「中小企業オーナーが知らないと損をすること、知らなければならないこと」をテーマに講演。今後予定されている法改正、新税制を踏まえた上での事業承継、相続対策や、信託法の概要と仕組み、就業規則・労働争議のリスクと防止策などを説明した。
同氏は「相続に関しては(1)民法(2)商法(3)税法の順で優先する法律が決まっている」と指摘。その上で「民法では“争族”対策、商法では事業承継対策、税法では相続税対策が重要となるが、肝心の“争族”対策ができていない中小企業が多すぎる」と警鐘を鳴らした。
講演するうぶやの外川常務