中国からの訪日観光は、個人旅行(FIT)化が進展し、2016年上半期に個人観光の割合が団体観光を上回った。日本政府観光局(JNTO)の北京、上海、両事務所は、12、13日に東京都内で開かれた「JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」の中で、中国人観光客のFIT化を踏まえ、デジタルメディアを活用した一般消費者に向けたプロモーションの重要性などを指摘した。
中国からの訪日旅行者数は、16年1〜7月累計で前年同期比38%増の380万8千人で、訪日旅行の最大市場となっている。7月には全市場を通じて初めて1カ月間の訪日旅行者数が70万人を突破した。
北京事務所の服部真樹所長は、現地旅行会社へのヒアリングなどの結果として、「中国経済の減速は影響しているものの、訪日旅行意欲はそれほど減退していない」と指摘。昨年の「爆買い」のような旺盛な購買行動は沈静化したが、円高傾向の影響は「限定的」と説明した。
観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、観光・レジャー目的の中国人訪日旅行は、個人観光の割合が年々上昇し、16年上半期に個人観光、団体観光の比率が逆転した。全体に占める個人観光の割合は10年には22.5%だったが、個人観光査証(ビザ)の要件緩和などで上昇し、15年に43.8%、16年1〜3月期に52.1%と半数を超えた。16年4〜6月期も53.9%だった。
JNTOでは、FIT化に併せて、訪日旅行の目的も、都市部の若者などの生活意識の変化で多様化していると報告。日本料理、温泉などの日本らしい体験だけではなく、美容院やエステといった日常に近い体験、ランニングやサイクリングといったスポーツなど多様な体験が求められているという。
FIT化、旅行目的の多様化が進む中国からの誘客に関して、上海事務所の原口健司所長は「スマートフォンとソーシャルメディアの普及が消費者のライフスタイルに大きな影響を与えている。今後のプロモーションではデジタル環境への対応が最も重要」と指摘した。
中国では“中国版LINE”と言われる「微信WeChat」のアクティブユーザーが約6億人とされるほか、上海などを中心にオンライン・トラベル・エージェントの利用者が急増、スマートフォンでの電子決済も普及している。JNTOは、一般消費者への情報発信では、「微博」「微信」といったSNS、旅行情報サイトの口コミ、動画サイトなどの活用が有効と説明している。