エイチ・アイ・エス(HIS、澤田秀雄会長、矢田素史社長)は13日、2022年10月期中間決算(21年11月1日~22年4月30日)を発表した。売上高が684億9100万円、営業損失が281億3千万円、経常損失が281億1100万円、純損失が269億1100万円となった。最終赤字幅は過去最大。澤田会長は「海外旅行ナンバー1を確立し、HIS本来の市場を確立する。また、国内旅行にも力を入れ、2本の柱を築く」と話す。また、飲食、人材、太陽光など非旅行事業にもチャレンジする方針を示している。
同社は、今期から会計基準を「収益認識に関する会計基準」に変更。旧基準では売上高が前年比57%増の1022億円、営業損失が282億円(前年同期比34億円の改善)、経常損失が282億円(同24億円の改善)となった。純損失が270億円(同34億円の悪化)。
旅行事業は、売上高が234億500万円、営業損失が147億4200万円。各国で渡航制限、入国制限が継続されるなど、主力の海外旅行で甚大な影響を受けた。旅行需要の回復が遅れる中、コスト削減を徹底し、損失の改善に努めた。
テーマパーク事業は、売上高が103億6600万円、営業利益は1億7400万円。開業30周年の各種アニバーサリーイベントが好調に推移。上期では、2年ぶりに営業利益を計上した。
ホテル事業は、売上高が35億7200万円、営業損失が20億6800万円、EBITDAベースでは1億7千万円の損失となった。国内はレジャー需要を中心に穏やかな回復が見られたが、海外は困難な状況が継続して宿泊者数が減少した。
九州産交グループは、売上高が85億9100万円、営業損失が7億100万円。まん延防止等重点措置の実施で、熊本県全体に人流抑制の動きが強まった影響を受けた。
エネルギー事業は、売上高が684億9100万円、営業損失が94億1300万円。燃料在庫の減少に伴うLNG火力を中心とした供給力の低下などが慢性的に続き、12月下旬以降の寒波到来に伴う電力需要の増加で需給がひっ迫。63億円の増収となったが、卸売市場の高騰が継続し、損失が拡大した。
特別利益として、固定資産売却益14億円や助成金収入68億円があったが、一方でエネルギー事業でHTBエナジーの株式売却(31億円の損失)など大幅な特別損失(48億円の損失)があった。
店舗は統廃合を実施し、国内145拠点、海外60カ国113都市162拠点に(4月末時点)。
22年10月期連結業績予想は、新型コロナの影響で未定としている。
非旅行回復24年想定 非旅行と1対1に
同日には発表会を開催。矢田社長は、旅行事業の反転攻勢、再成長に向けた取り組みとして、(1)海外旅行市場の立て直し(2)国内旅行の強化継続による「国内旅行のHIS」の確立(3)地方自治体や観光施設との連携を強化するなど訪日旅行市場マーケット再開に向けた準備(4)オンライン中心による販路拡大、HIS現地法人のリソースの集中による海外の旅行事業のシェア拡大―を挙げた。
非旅行事業においては、事業ポートフォリオを再構築。農業、人材派遣業、飲食事業など新規事業の展開のほか、他業種企業と提携やM&Aによる事業領域の拡大、官公庁、自治体の課題解決などBPO事業の強化に取り組む。
矢田社長は「黒字化は23年。24年には19年のコロナ禍前の水準まで回復する。旅行事業と非旅行事業は、8対2から1対1にし、経営の安定化を図る」と述べた。
このほか、グループ内で発生したGo Toトラベル事業における不正受給問題を受けたグループガバナンスの強化対策を説明。(1)コンプライアンスの意識の改革(2)各社取締役会による監督機能の強化(3)親会社による子会社管理の強化(4)内部監査の強化(5)内部通報制度など不祥事の早期発見―などの施策に取り組む。
発表会で説明する澤田会長(右)と矢田社長