HISは18日、観光庁に「Go To トラベル不正受給問題に関するガバナンス改善報告書」を提出した。
Go To トラベル不正受給問題に関するガバナンス改善について
当社は、2021 年 12 月 24 日付「当社連結子会社における取引に関する調査委員会からの調査報告について」でお知らせしましたとおり、当社連結子会社である株式会社ジャパンホリデートラベル及び株式会社ミキ・ツーリストにおける Go To トラベル事業のルールに適合しない取引に関する調査委員会の調査報告書を受領いたしました。
その後、調査委員会からの意見・提言等も踏まえ、組織運営上における問題発生の原因の特定及び再発防止に向けたガバナンス改善を策定し、本日、監督官庁である観光庁に改善報告書を提出させていただきましたので、その要旨を下記のとおりご報告いたします。
今般の Go To トラベル不正受給問題に係る調査の過程においては、Go To トラベル事務局による宿泊実態等に関する調査が 2020 年 12 月から開始されていたにも関わらず、その状況に関しては、長期間にわたり上記連結子会社2社から親会社に対する報告がなされておらず、また、親会社としてもそれを把握することができていませんでした。各社のコンプライアンス意識の乏しさや、親子間の適切な情報共有が行われていなかったという当社の関係会社管理体制については非常に反省すべき点であると認識しております。当社としては、こうした事実の発生を重く受け止め、下記再発防止に向けた改善措置を着実に実施し、より良いグループ運営を実行し信頼回復に努めてまいります。
記
1. 本疑惑(問題取引)の発生原因の分析
(1)親会社(当社)の側に由来する原因
子会社の自立性を尊重する企業文化が子会社の問題取引の早期把握・是正への取組みを遅らせた可能性があるほか、当社グループの傘下に入った企業に対する当社グループ理念や行動規範の浸透が不足していた点が、問題取引の適切性に疑問を感じる意識の欠如につながった可能性があると考えております。
また、関係会社管理体制について、子会社役員として任命した当社役職員が多重兼務となるなか、子会社プロパー役員との意思疎通の機会が不足していたことや、関係会社の業務執行に対するコンプライアンス上の観点からの牽制が十分に機能していませんでした。
さらに、助成金の受給に着目した内部監査の監査項目の設定がなされておらず、内部通報制度の適用範囲や存在周知も十分ではありませんでした。
(2)子会社の側に由来する原因
株式会社ミキ・ツーリストについては、コンプライアンス精神の欠如、社長への権限集中・牽制機能の不全等が原因と考えており、株式会社ジャパンホリデートラベルについては、社長の業務執行に対する不十分な監視・監督、コンプライアンス意識の不足、関係会社管理体制の不十分性や内部通報制度の不十分性等が原因と考えております。
(3)紹介者・提案者の属性に由来する原因
案件を主導した紹介者(提案者)が当社元代表取締役の平林氏であった点も、案件の無謬性を無批判に信じ、問題点に異議を唱えにくかった背景と考えております。
2. 再発防止に向けた改善措置(実施済みのものも含みます)
(1)コンプライアンス意識の改革
当社のリスク・コンプライアンス委員会の活動を通じ、当社グループのコンプライアンス施策の実施、コンプライアンス意識の向上を図ります。事務局としてのリスク管理室は、子会社役職員がコンプライアンス違反が疑われる事案に遭遇した際の報告・相談窓口として機能します。また、経営トップがコンプライアンス遵守を発信するとともに、Go To トラベル事業の趣旨の再確認を含むコンプライアンス研修を実施します。さらに、グループ各社のマネジメント層との面談を実施し、コンプライアンス意識の確認を進めます。
(2)各社取締役会による監督機能の強化
社長の業務執行に対する監視・監督機能を強化するため、各社取締役会における付議事項の見直しを実施するとともに、十分な検討時間や事前の情報共有、事後の進捗報告等により取締役会の審議の実質化・充実化を図ります。また、従前当社役職員からの役員任命が行われてこなかった子会社についての任命要否を再検討するとともに、現在の任命役職員の定期的な見直しを行ってまいります。
(3)親会社による子会社管理の強化
前記のとおり、従前当社役職員からの役員任命が行われてこなかった会社(特に当社から見た孫会社の中で、グループ連結業績に与える影響が大きいと思われる会社)について任命要否を検討します。また、関係会社管理規程を見直して一定金額以上の経常的取引についても報告義務を課すほか、事前承認・報告ルールの周知徹底及び事後チェックを通じて運用状況を改善してまいります。また、人材の採用・育成・確保等を含めた関係会社管理部門の体制の強化を図ります。
(4)内部監査の強化
内部監査については、IT を活用したリスク分析の強化、監査部門の人員補充を含めた監査体制の強化並びに助成金受給に関する項目追加など監査項目の見直しを検討してまいります。
(5)不祥事の早期発見のための取組み
内部通報制度をグループ横断型の制度とし、定期的に制度の周知を図ります。また、グループ各社経営層に対する定期的なアンケートを通じてコンプライアンス意識の浸透や不正発生への抑止力を高めます。
(6)その他の再発防止に向けた改善措置(IT 統制について)
内部不正の早期発見や事後的監査の効率的実施、IT 統制の観点から各種施策を実施してまいります。
以上
観光庁 御中 2022 年 1 月 18 日
Go To トラベル不正受給問題に関するガバナンス改善報告書(全文)
株式会社エイチ・アイ・エス
1
(本報告書の要旨)
第1 経緯
1 調査委員会が設置された経緯等
2 調査委員会の調査により判明した事実の概要等
第2 本疑惑(問題取引)の発生原因の分析
1 親会社(当社)の側に由来する原因
子会社の自立性を尊重する企業文化が子会社の問題取引の早期把握・是正への取組みを遅らせた可能性があるほか、当社グループの傘下に入った企業に対する当社グループ理念や行動規範の浸透が不足していた点が、問題取引の適切性に疑問を感じる意識の欠如につながった可能性があると考えております。
また、関係会社管理体制について、子会社役員として任命した当社役職員が多重兼務となるなか、子会社プロパー役員との意思疎通の機会が不足していたことや、関係会社の業務執行に対するコンプライアンス上の観点からの牽制が十分に機能していませんでした。
さらに、助成金の受給に着目した内部監査の監査項目の設定がなされておらず、内部通報制度の適用範囲や存在周知も十分ではありませんでした。
2 子会社の側に由来する原因
㈱ミキ・ツーリストについては、コンプライアンス精神の欠如、社長への権限集中・牽制機能の不全等が原因と考えており ㈱ジャパンホリデートラベルについては、社長の業務執行に対する不十分な監視・監督、コンプライアンス意識の不足、関係会社管理体制の不十分性や内部通報制度の不十分性等が原因と考えております。
3 紹介者・提案者の属性に由来する原因
案件を主導した紹介者(提案者)が当社元代表取締役の平林氏であった点も、案件の無謬性を無批判に信じ、問題点に異議を唱えにくかった背景と考えております。
第3 再発防止に向けた改善措置(実施済みのものも含みます。)
1 コンプライアンス意識の改革
当社のリスク・コンプライアンス委員会の活動を通じ、当社グループのコンプライアンス施策の実施、コンプライアンス意識の向上を図ります。事務局としてのリスク管理室は、子会社役職員がコンプライアンス違反が疑われる事案に遭遇した際の報告・相談窓口として機能します。また、経営トップがコンプライアンス推進を発信するとともに、Go To トラベル事業の趣旨の再確認を含むコンプライアンス研修を実施します。さらに、グループ各社の経営層との面談を実施し、コンプライアンス意識の確認を進め、コンプライアンス推進状況が経営層の評価や処遇に活かされるよう制度設計を進めてまいります。
2 各社取締役会による監督機能の強化
社長の業務執行に対する監視・監督機能を強化するため、各社取締役会における付議事項の見直しを実施するとともに、十分な検討時間や事前の情報共有、事後の進捗報告等により取締役会の審議の実質化・充実化を図ります。また、従前当社役職員からの役員任命が行われてこなかった子会社についての任命要否を再検討するとともに、現在の任命役職員の定期的な見直しを行ってまいります。
3 親会社による子会社管理の強化
前記のとおり、従前当社役職員からの役員任命が行われてこなかった会社(特に当社から見た孫会社の中で、グループ連結業績に与える影響が大きいと思われる会社)について任命要否を検討します。また、関係会社管理規程を見直して一定金額以上の経常的取引についても報告義務を課すほか、事前承認・報告ルールの周知徹底及び事後チェックを通じて運用状況を改善してまいります。また、機能の強化や効率化を含めた関係会社管理部門の体制の強化を図ります。
4 内部監査の強化
内部監査については、ITを活用したリスク分析の強化、監査部門の人員補充を含めた監査体制の強化並びに助成金受給に関する項目追加など監査項目の見直しを検討してまいります。
5 不祥事の早期発見のための取組み
内部通報制度をグループ横断型の制度とし、定期的に制度の周知を図ります。また、グループ各社経営層に対する定期的なアンケートを通じてコンプライアンス意識の浸透や不正発生への抑止力を高めます。
6 その他の再発防止に向けた改善措置(IT統制について)
内部不正の早期発見や事後的監査の効率的実施、IT統制の観点から各種施策を実施してまいります。
(報告書本文)
第1 経緯
1 調査委員会が設置された経緯等
⑴ 各疑惑の発覚
2021 年 11 月に、株式会社エイチ・アイ・エス(以下「当社」という。)における 2021 年 10 月期決算の確定作業期間中に、以下(a)(b)の各子会社から以下の各疑惑に係る事実の申出がありました。
(a) 当社の連結子会社である株式会社ミキ・ツーリスト(以下「MIKI」といいます。)が買い取りを行った客室について、Go To トラベル事業の対象に該当するものとして、所定の給付金を受けたが、後に宿泊者として記載された者の相当部分につき実際には宿泊していなかった事が判明するなど、給付金の支給要件を満たしていないことが発覚しました(以下「MIKI 疑惑」といいます。)。
(b) 当社の連結子会社である株式会社ジャパンホリデートラベル(以下「JPH」といいます。)が受注型企画旅行として法人団体に対して販売した旅行に関し、Go To トラベル事業の対象に該当するものとして、所定の給付金の給付を受けたが、後に宿泊者として記載された者の相当部分につき実際には宿泊していなかった事が判明するなど、給付金の支給要件を満たしていないことが発覚しました(以下「JPH 疑惑」といいます。)。
⑵ 調査委員会の設置
当社は、MIKI 疑惑と JPH 疑惑(以下総称して「本疑惑」といいます。)を把握したことから、専門家を含めたメンバーによる調査により、これら各疑惑の全容を解明するとともに、類似事案の有無等を確認することが必要であると判断したため、2021 年 12 月 8 日に、本疑惑に関する事実関係の解明等に関する調査を目的として調査委員会を設置することといたしました。
2 調査委員会の調査により判明した事実の概要等
⑴ MIKI 疑惑に関する事実の概要
MIKI は、株式会社 JHAT(以下「JHAT」という。)との間で、JHAT の運営するホテルの客室 20 室 60 泊分を、1 室(定員 4 名)当たり 1 泊 6 万 8,000 円、合計 8,160 万円(=6 万 8,000 円×20 室×60 泊)で MIKI が買い取る内容の客室買取契約(以下「客室買取契約」といいます。)を 2020 年 10 月に締結し、MIKI は、買取客室を自ら消費することとしました。しかし、JHAT に提出した宿泊者名簿に記載された役員及び従業員 80 名のうち、客室にリモートワーク等の目的で宿泊できる旨を伝えたのは、20 名に対してのみで、その余の 60 名に対しては、このような説明をせず、また、上記のように宿泊者名簿に氏名を記載して JHAT に提供することに対する同意も取得しませんでした。そのため、この 60 名が買取客室に実際に宿泊した事実はなく、また、上記 20 名についても買取期間中の宿泊実態は乏しく、MIKI が後日 Go To トラベル事務局の要請を受けて調査した結果、実際に宿泊がなされたのは、延べ 4,800 泊(=20 室×4 名×60泊)中 114 泊に過ぎませんでした。この客室買取契約に関し、Go To トラベル事業の給付の合計額は 4,080 万円(=地域共通クーポン 1,224 万円+Go To トラベル給付金2,856 万円)となっております。
一方、MIKI は、JHAT との間で、MIKI が欧州及びアジアの 20 ヶ国の各拠点において JHAT の宿泊商品の販売促進活動を行う等の協賛メリットを付与し、JHAT が MIKIに対し 6,354 万円の協賛金を支払う内容の協賛契約(以下「協賛契約」といいます。)を 2020 年 10 月に締結し、この協賛契約に基づいて、JHAT は、MIKI に対し、2020 年 12 月と 2021 年 3 月の 2 回に分割して協賛金 6,354 万円を支払いました。しかし、MIKI は、現在に至るまで、上記の販売促進活動を行っていません。このように、客室買取契約において MIKI の役員及び従業員の宿泊実態が延べ4 ,800 泊(=20 室×4 名×60 泊)中 114 泊しか確認できなかったこと、協賛契約においても協賛金の対価として行われるべき販売促進活動が契約締結後 1 年以上経っ
ても全く履行されていないことも併せ考えると、客室買取契約と協賛契約は、いずれも Go To トラベル事業の給付を申請するための実態のない契約であり、MIKI とJHAT が、当該申請により得た給付金(4,080 万円)を両社で折半する(給付金の不正受給)目的で締結されたものと認定せざるをえない、との判断に至っております。
⑵ JPH 疑惑に関する事実の概要
2020 年 10 月に、JHAT より JPH に対し、JPH の Go To トラベルの給付枠を利用して、JHAT の運営ホテルにおける研修付き宿泊旅行(受注型企画旅行)の提案がなされ、JPH はこれに応諾し、旅行事業者として実務手続を進めることとしました。上記の研修付き宿泊旅行は JHAT の提案によるもので、宿泊する法人顧客(4 社)や宿泊に付随する研修の提供企業との契約については、JHAT が締結のアレンジを行い、JPHは、これら法人顧客や研修会社の担当者とは面識を有することなく、法人顧客との間の客室販売契約、客室の仕入先(JHAT)との間の客室の仕入契約、研修委託先と
の間の研修業務委託契約、を締結しました。
JPH に対しては、この研修付き宿泊旅行に関し、2020 年 10 月分と 11 月分の合計で Go To トラベル給付金として 312,494,000 円が支給されています(12 月分の458,248,000 円及び Go To トラベル事業の一時停止に伴う取消料対応費用818,300,000 円は未支給となっています)。
その後、2021 年 10 月に至り、Go To トラベル事務局から、同事務局の実施した参加者向けアンケートの結果、アンケート回答の中に相当数、本人が「全く宿泊していない」「まったく知らない」との回答があること等の連絡を受けた事から、JPH において、法人顧客の代表者に対し、宿泊実態に関する調査依頼を行い、その結果、法人顧客 3 社からは宿泊者名簿に記載がある参加者のうち宿泊実態のある人数について以下の報告がなされました。
S 社 200 名中 109 名
P 社 699 名中 299 名
A 社 200 名中(回答ないため不明)名
T 社 70 名中 29 名
以上の点から、JPH 疑惑に関し、研修付き宿泊旅行における関連契約は、いずれもGo To トラベル事業の給付を申請するための実態のない契約であると認定せざるをえないとの判断に至っております。ただし、JPH において、当初から実泊を伴わない旅行であることを認識し、又はその可能性が高いことを認識しながら、研修付き宿泊旅行を実施し、不正な給付金の支給を得ようとした主観的意図が存したものとは認められなかったとの事です。
⑶ なお、調査委員会においては、MIKI 及び JPH における本疑惑外取引の調査を合わせて実施しておりますが、本疑惑外の JHAT との取引、本疑惑外の Go To トラベル事業給付金申請案件、のいずれについても、本疑惑との類似事例は検出されませんで
した。
第2 本疑惑の発生原因の分析
MIKI 及び JPH における本疑惑に係る不適切な取引を把握できず、是正できなかったのは、1.会社(当社)の側に由来する原因、2.子会社(MIKI 及び JPH)の側に由来する原因、3.本疑惑の特殊要因、がそれぞれ起因した結果であると考えております。
1 親会社(当社)の側に由来する原因
⑴ 自立性を尊重する企業文化
当社においては、創業者の経営方針の一つとして、各社の自立性や独自性を尊重し、互いに切磋琢磨しながら成長することを是とし、親会社からの管理を最小限とする価値観や行動様式が長年にわたり培われており、こうした子会社の自立性を尊重する企業文化の存在が、一方では、本疑惑の把握及び是正への取り組みを遅らせた可能性があるものと考えております。
⑵ M&A により傘下入りした企業に対する当社グループ理念、行動規範等の浸透不足
MIKI(創業は 1967 年)が当社の連結子会社となったのは 2017 年であり、JPH(創業は 1993 年)が当社の連結子会社となったのは 2011 年のことです。
いずれも M&A(株式取得)により当社の連結子会社となったものであり、このように M&A で HIS グループ傘下入りした企業との関係で、当社のグループ理念である HISポリシーや行動規範である HIS 企業行動憲章を早期に浸透させることの優先度は低く、その後も定期的にその度合いをフォローアップする仕組みが欠けておりました。
このような浸透不足が、本疑惑に係る取引の適切性に疑問や留意を感じる意識の欠如につながった可能性があるものと考えております。
⑶ 関係会社(子会社及び関連会社)の管理監督体制の不十分性
当社は、重要性の高い子会社や事業規模の大きい子会社に対して、当社の役職員を取締役(非常勤)または監査役(非常勤)として任命しております。また、関係会社管理規程を策定し、当社の株式保有率や実質支配状況に応じ、かつグループの経営戦略上の重要性、売上および総資産規模で連結経営におけるウエート、またはスタートアップや M&A 等に起因する管理サポートの必要性等に鑑み、当社の関係会社を4つのグループに分け、それぞれのグループに応じた事前承認事項や報告事項を定めており、関係会社の業務執行に対する牽制の体制を整えております。
しかしながら、当社の役職員の非常勤役員としての任命に関しては、複数の子会社の非常勤役員に任命されていることから多重兼務になっており(最大では 19 社を兼務している役員がおり、その職務を適切に果たすには困難な状況でした)、各子会社経営陣との意思疎通の機会が不足していたことは否めず、取締役会における審議が定型的・形式的なものに陥ったり、そもそも取締役会に上程されない事項の把握が困難となる等の問題点が生じておりました。また、MIKI に対しては、当社グループの傘下に入った後も経営の独自性を尊重する観点等からそもそも当社役職員の任命が行われていませんでした。
また、関係会社管理規程に関して、孫会社はその親会社(当社から見た場合の子会社)による管理が予定されているところ、MIKI はその親会社であるグループ・ミキ・ホールディングスによる管理体制の整備は不十分であり、また、グループ・ミキ・ホールディングスについては MIKI の代表である檀原氏が代表を兼任している状況にありました。そのため、子会社(グループ・ミキ・ホールディングス)を通じた MIKI(孫会社)に対する十分な管理が期待できる状態にはありませんでした。
さらに、本疑惑に係る取引は、外形上はいずれも旅行事業や宿泊に伴う経常的な取引であることから、関係会社管理規程上は、事前承認や報告の明示的な対象とされているものではありませんでした(なお、孫会社である MIKI については当社への適時報告事項、子会社である JPH については当社による事前承認事項として「事業に重大な影響を及ぼす契約の締結、変更、解約」が規定されていますが、その射程範囲は明確ではなく、対象取引が該当するか否かは各社の解釈に委ねられていました。)。そのため、MIKI について実泊を伴わない宿泊契約や、JPH について実泊を伴わない多人数の長期間にわたる研修付宿泊、極めて高額な研修委託費用など、営業数値における異常値の検出や、社会的妥当性を欠く不適切な取引についてのコンプライアンス上の観点からの牽制が十分に機能しておりませんでした。
加えて、MIKI 及び JPH とも「行政庁による法令違反に係る処分・命令」や「重大な事件・事故の発生」については適時報告するべき事項として関係会社管理規程に定められているにもかかわらず、Go To トラベル事務局による調査(MIKI について2021 年 4 月、JPH について 2020 年 12 月)が開始された後も、2021 年 11 月までの長期間にわたり当社への報告や相談がなされず、当社において当該調査の実施を認識することができなかったことは、同規程に基づく関係会社の管理体制が不十分であったことを示す重要な事実であると言わざるを得ません。
⑷ 内部監査の不十分性
当社は、内部監査規程を制定し、監査部長若しくは内部監査担当者は、年度ごとに内部監査計画(基本計画及び実施計画)を策定し、権限者の承認を経て、内部監査を実施することとしています。
内部監査の対象は会計・業務・リスクに係る監査が中心で、不正に関わる調査(営業所における顧客との不適切な金銭授受や、広告や店舗に関する契約についての業者との癒着等)も対象としておりますが、本疑惑に係る取引のような経常的な取引については、取引額の大きさ(リスクの高さ)や助成金の受給に関わらず、監査計画の対象外となっていました。
このように、当社の内部監査は、本疑惑の検出や是正につながる項目を監査の対象にしていなかったなど、不十分なものと言わざるを得ないものでした。
⑸ 内部通報制度の不十分性
当社は、「さわやかホットライン」という名称の社外の専門機関を窓口とする内部通報制度を設けています。ただし、MIKI は孫会社の位置付けであったこともあり、そもそも「さわやかホットライン」の対象ではなく、JPH は「さわやかホットライン」の利用登録をしていますが、JPH の役職員はその存在を知らず、存在の告知もなされていない状況であり、内部通報制度の実効性は一部の関係会社において形骸化している状況でした。
2 子会社(MIKI、JPH)の側に由来する原因
⑴ MIKI について
① コンプライアンス精神の欠如
MIKI 疑惑は、本来、Go To トラベル事業における給付金が給付されるためには、原則として宿泊を伴う旅行が想定されているところ、ホテル(JHAT)と結託することによって、実際に宿泊が確認されなくとも宿泊証明書が発行され、あたかも申請人数での宿泊があったかのように装うことが可能となってしまうという給付金申請手続の限界を悪用したものと言えます。
このような旅行形態が、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、全国の旅行業、宿泊業はもとより、貸切バス、ハイヤー・タクシーや飲食業、物品販売業など地域経済全体が深刻な状況に追い込まれており、給付金の給付により、感染拡大により失われた観光客の流れを取り戻し、観光地全体の消費を促すことで、地域経済に波及効果をもたらすことを目的(Go To トラベル事業給付金給付規程第 2条)とする Go To トラベル事業の趣旨に反することは明白です。とりわけ、MIKI については、自社社員による利用が前提とされていたところ、大部分が宿泊利用はしないであろうことを見越しており、宿泊実態が伴わないことは十分認識していました。
この点、MIKI の関係役員からは、JHAT が Go To 事務局に確認して宿泊代金の支払いがされていれば実際に宿泊したかは問わないとの回答を得た、との説明があったとの弁明がありましたが、今回の取引の形態及び規模並びに事業の性質を勘案すれば、自社にて改めて確認することが旅行業に携わる者として当然であり、敢えて、かかる行為を行わなかったと評価せざるを得ません。
以上のように、公的支援としての側面を持つ Go To トラベル事業の性質及び本件における取引(客室買取契約及び協賛契約)の形態及び規模を勘案すれば、本件取引の異常性(調査委員会の調査報告書においては、MIKI の役員 4 名における協議の中で「JHAT スキーム」が「錬金術」という表現がされたとの指摘もなされています)について当然に疑問を持つべきです。
一般に、企業統治におけるコンプライアンスという言葉は、企業倫理・法令遵守という趣旨において用いられますが、もっとも、これは、企業の構成員全員が具体的な法令・条文の知識があることまでを意味するものではなく、各構成員が企業倫理や法令違反につながるべきリスク管理・危機察知をする基礎的能力・感覚を具備し、必要に応じて担当部署への相談等を行う体制の整備を求めるものです。
本件で言えば、Go To トラベル事業に関する規程について詳細な知識がなかったとしても、少なくとも旅行事業に携わる者であれば、本件取引の異常性に疑問を持つはずであり、かかる疑問を持った上で、JHAT との本件取引の構築を止める者、少なくとも異を唱える者、あるいは、Go To トラベル事業の規程に照らし合わせて妥当性を検討する者がいなかったことは極めて遺憾であります。そして、このような疑問を持たないまま、あるいは持ったとしても然るべき措置を取らぬまま追従し、問題となる取引の構築に至った原因は、ひとえにコンプライアンス精神の欠如と言わざるを得ません。
なお、客室買取契約及び協賛契約の構築に至った背景としては、いわゆるコロナ禍における旅行・ホテル業界の空前の不況があったことは否めないところです。すなわち、コロナ禍において海外旅行(主にヨーロッパ・中近東エリアの地上手配業務)を主たる事業とする MIKI において、売上げが殆どない状況に陥り、「JHAT スキーム」により一定の金員がもたらせることは誘惑的な面があったものと思われます。
しかしながら、こうした苦境下において、Go To トラベルが本来予定している需要を喚起して真摯に苦境に立ち向かっていた企業が殆どであった中、コロナ禍が背景としてはあったとしても、原因として位置付けることは妥当ではないものと考えます。
② 社長への権限集中・牽制機能の不全
MIKI の檀原氏は 1987 年にミキツーリストカンパニーリミテッド東京支社に入社し、ヨーロッパのミキグループ拠点に長期間赴任し、2011 年から MIKI の代表取締役、また、グループ・ミキ・ホールディングスの経営最高責任者(CEO)に就任しており、文字通りミキグループのトップの立場にありました。ミキグループは、2017 年に当社の連結子会社となりましたが、それ以降も、ヨーロッパ・中近東エリアの地上手配業務に長じたミキグループの特性や、既存顧客維持の観点から当社と異なるミキグループの独自性を尊重することを意図し、当社から取締役を派遣することはなく、檀原氏を経営トップとし、他の取締役も MIKI に長年勤務していた背景を持つ者で組織されていました。
こうした体制は、ミキグループの独自性を維持するという当初の目的には合致していた面があったかもしれませんが、本件を見れば、結果として、檀原氏に権限が集中し、その意向・方針に反論・意見し難い経営土壌が形成されてしまったこともまた否めません。すなわち、檀原氏を含む各役員の発言によれば、檀原氏と平林氏が、客室買取契約及び協賛契約を構築することについて合意をし、その具体的な作業を MIKI 取締役の氏家氏らが行っていたとのことであり、本件は社長主導で決められた案件と言えます。そして、社長が決めた案件について他の役員から異議が述べられることがないままでした。なお、JHAT の代表取締役であり、JHAT において本件を主導したと思われる人物が当社の元代表取締役である平林氏であったという点も、異議が唱えにくい背景としてあったものと推察されます。
しかしながら、本来、取締役会は、取締役相互の情報共有・意思統一を図りながらも相互牽制による経営への監督機能も期待されています。残念ながら、MIKI においては、コロナ禍による会社の存続危機の中、檀原氏の決定に対して他の取締役が事実上異議を唱えにくい状態に陥り、自浄作用を確保しにくい経営体制になってしまっていたものと考えられ、こうした社長への権限集中・他の取締役による牽制機能の不全も本件の原因の1つと考えます。
③ 当社の経営理念の浸透度の不足
前記のとおり、当社のグループ理念や行動規範が MIKI に十分に浸透していたとは言い難く、このような浸透不足が、本疑惑に係る取引の適切性に疑問や留意を感じる意識の欠如につながった可能性があるものと考えております。
④ 内部通報制度の不十分性
前記のとおり、MIKI については、そもそも当社の内部通報制度(さわやかホットライン)の対象とされていませんでした(なお、MIKI の親会社であり当社の子会社であるグループ・ミキ・ホールディングスには固有の内部通報制度はある(2021 年7 月設置)ものの、本疑惑に関しての内部通報はありませんでした。)。
⑵ JPH について
① 社長の業務執行に対する不十分な監視・監督
JPH 疑惑において、JPH の吴社長は、JHAT の平林社長から電話による研修付き宿泊の受注型企画旅行の提案を受け、即これに応諾し、実務担当者に作業指示を行っており、実務担当者としては、JPH の利益を 3%とするトップ同士の「握り」があったため、研修委託費用や宿泊代金の妥当性、研修期間の長さや人数の多さに合理的な注意を抱くこともなく、各種契約を締結していたことが調査委員会の調査で認定されております。
上記の注意すべき案件特性に加え、JHAT の平林社長が当社の元社長であったことや、案件規模が 2,200 百万円にものぼること(直前期(2020 年 9 月期)の売上高は5,842 百万)、からすれば、取締役会において慎重に案件受諾の可否を審議し、少なくとも事後的なフォローアップを定期的に進めるべきであったと解されますが、JPH の取締役会には当社から取締役が派遣されていたものの、同取締役会においては定例的な業績推移に関する報告が行われるのみで、高額取引について取締役会の付議事項に関する明確な定めも無いなか、JPH 疑惑案件に係る審議が行われた形跡はなく、吴社長の経営判断並びにその後の対応を委ねられた実務担当者による業務執行に対する監視・監督は不十分な状況でありました。
② コンプライアンス意識の不足
JPH 疑惑案件については、JPH が旅行業者として受注型企画旅行を主催する立場にあった以上、たとえ平林氏の紹介であったとしても、顧客である法人 4 社や研修委託先など JPH の直接の契約締結先との間では、担当者とコンタクトをとり、契約内容の合理性等を含めた協議交渉を行うべきであったと解されます。そのような直接協議の過程を経たならば、原価(JHAT からの MONday ホテル仕入代金/W 社に対する研修委託費用)の内訳や研修の実質的内容、研修委託費用の水準の適正性、宿泊代金(1 泊 40,000 円)の妥当性、研修期間の長さ(S社向けでは最長で 69 連泊になる等)や人数の多さ(P社向けでは 699 名が宿泊すること等)、について合理的な注意を向けることにより、研修内容との関係で、多人数・長期間の宿泊の実現可能性に疑問を抱く可能性もなかったわけではないものと思われます。しかし、JPH においては、紹介元の JHAT を窓口としたコミュニケーションに終始し、上記のような研修委託費用や宿泊代金の妥当性、研修期間の長さといった契約内容の合理性に関わる部分を自ら突き詰め交渉する姿勢を欠いていました。この結果、実務担当者が一貫して確認したのは、契約書類や帳票類の形式的整合性や入出金の金額等であって、取引の適切性、社会的妥当性等を含むコンプライアンスの観点からの検証は行われておらず、JPH については、全社的にコンプライアンス意識の低さが看取されます。このようなコンプライアンス意識の不足が、JPH 疑惑案件について合理的な注意や検証が向けられなかった一因であると考えております。
③ 当社の経営理念の浸透度の不足
前記のとおり、当社のグループ理念や行動規範が JPH に十分に浸透していたとは言い難く、このような浸透不足が、本疑惑に係る取引の適切性に疑問や留意を感じる意識の欠如につながった可能性があるものと考えております。
④ 関係会社管理体制の不十分性
前記のとおり、当社には関係会社管理規程が存在し、関係会社の区分に応じた事前承認事項や報告事項が定められています。JPH 疑惑においては、2020 年 12 月以降、Go To トラベル事務局から JPH に対し、研修型宿泊旅行に関する宿泊実態に関する詳細な調査が開始されており、このような行政庁による法適合性に関わる調査が開始された場合、JPH としては、同規程の「重大な事件・事故の発生」や「行政庁による法令違反に係る処分・命令」といった報告事由に基づいて当社に対する報告や相談を行うべきであったものと考えられますが、JPH は 2021 年 11 月に至るまで当社に対し JPH 疑惑に係る事実の申し出を行うことがなかったなど、同規程に基づく管理については、その実効性を伴っておりませんでした。
これに加えて、同規程においては、コンプライアンスの観点あるいはリスク・コンプラアインス管理の観点からの報告義務についても明確ではなく、また、コンプライアンス上の疑義がある取引への取組可否について、報告・相談がなされる体制も十分ではありませんでした。
そのため、関係会社役職員が JPH 疑惑案件のような事案に遭遇した際に、当社グループのコンプライアンス目線による取組を適時適切に実施する体制が不足していたものと考えております。
⑤ 内部通報制度の不十分性
前記のとおり、JPH においては、内部通報制度の利用登録をしていますが、JPHの役職員はその存在を知らず、存在の告知もなされていない状況でした。
3 紹介者・提案者の属性(当社元社長の平林氏)に由来する原因
本疑惑に係る案件を主導した紹介者(提案者)が、いずれも JHAT の代表取締役であり、当社の元代表取締役である平林氏であったという点も、MIKI や JPH の関係当事者において、無批判に案件の無謬性を信じ、また、問題点に異議が唱えにくい背景としてあったものと考えております。
第3 再発防止に向けた改善措置(実施済みのものも含みます。)
以下の施策については、今後直ちに実施し、その実施状況についても適宜フォローを行うこととします。
1 コンプライアンス意識の改革
本疑惑の発生原因であるコンプライアンス意識の欠如又は不足を解決するため、以下の各施策を講じてまいります。
⑴ リスク・コンプラアインス委員会の設置
コンプライアンス上のリスク管理を徹底する観点から、2021 年 11 月 1 日付でリスク・コンプラアインス委員会を設置いたしました。人員構成は、矢田コンプライアンス担当取締役を委員長、中森取締役専務執行役員、織田取締役常務執行役員、有田執行役員、阿部監査部長を委員とし、オブザーバとして鍋島社外取締役・監査等委員(コンプライアンスオフィサーの経歴あり)を参画させることにより、監督機能を強化することとしております。あわせて、委員会の活動を当社取締役会に四半期に1回報告をすること、また、外部専門家(弁護士など)を委員として加え、より体制を充実させていくことも実施いたします。
リスク・コンプライアンス委員会は、新たに設置されるリスク管理室を事務局とし、四半期に1回定期的な開催を行うことで、当社グループでのコンプライアンス施策の実施、倫理意識及びコンプライアンス意識の向上を目的としておりますが、本疑惑の発覚のような有事の際には、矢田委員長のもと、内部監査部を中心とした適切なメンバーを選定し、速やかに危機対応を実施することになります。
リスク・コンプライアンス委員会の初動の活動として、同委員会主催の会議(国内子会社の全社長を対象とし、経営トップからコンプライアンス推進の発信を行うとともに、今後の関係会社管理体制についての共有等を目的)を 2022 年 1 月 24 日に開催いたします。
⑵ コンプライアンス意識の改革、再発防止策の教育、研修
経営トップによるコンプライアンス推進の発信の機会を設けるとともに、グループ内全役職員を対象としたコンプライアンス研修を定期的(年1回)に開催します。Go To トラベル事業の趣旨の再確認を含む再発防止策、その他具体的事例に基づくコンプライアンス全般についての教育を継続的に実施することで、コンプライアンス意識の醸成を図ってまいります。
⑶ 各社経営層との面談を通じたコンプライアンス意識の向上、再発防止
⑵のコンプライアンス研修に加え、当社経営層と各社経営層との面談を実施し、コンプライアンス意識の確認をするとともに、面談を通じた研修内容の充実を図ってまいります。また、これらの対象者の評価や処遇については、営業成績だけではなく、コンプライアンス推進状況なども反映する仕組みの構築を進めてまいります。
⑷ レポートラインやルールの再確認・周知
子会社役職員が本疑惑のようなコンプライアンス違反が疑われる事案に遭遇した際に、適時に親会社のリスク管理室に直接報告や相談ができるレポートライン/ルールを再確認し、グループ内全役職員に周知いたします。こうした周知が単なる形だけのものになることを防ぎ、実際に問題が生じ、あるいはそのおそれを感じた場合に各人が適切な行動を取れる意識の改革・体制の醸成を行うため、上記のコンプライアンス研修の機会や後記の経営層に対するチェックリスト形式のアンケート等を通じてグループ全体に注意喚起をし、また、コンプライアンス推進状況が経営層の評価や処遇に活かされるよう制度設計を進めてまいります。
2 各社取締役会による監督機能の強化
本疑惑の発生原因である各社社長に対する牽制機能等の不全を解決するため、以下の各施策を講じてまいります。
⑴ 取締役会の監視・監督機能の強化
社長の業務執行に対する監視・監督機能を強化するため、各社取締役会における付議事項の見直しを行います。具体的には、各社の取締役会規程を検証し、親会社(当社)によるサポートのもと、付議事項の追加等を行います。
⑵ 子会社取締役会の審議の実質化・充実化
JPH 疑惑においては、当社が任命した役員(非常勤)とプロパー役員(常勤)との間で情報の非対称性が生じていたことが明らかになっております。従いまして、議案付議にあたっては、資料の事前配布による情報の共有や、十分な検討期間の確保により、このような情報の非対称性が生じないようにするとともに、現場で発生した問題事案については、一度の報告に留めるのではなく、随時進捗状況の情報共有を行い、定期的にモニタリングを実施すること等により、取締役会の審議の実質化・充実化を図ってまいります。
⑶ 取締役会構成の見直し
MIKI を含め、従前当社役職員の任命が行われてこなかった子会社について、役職員任命の要否を検討するとともに、現在役職員任命がなされている子会社についても、多重兼務や在任期間長期化による弊害等防止の観点から、任命役職員の定期的な見直しを行ってまいります。
3 親会社による子会社管理の強化
本疑惑の発生原因である関係会社管理体制の不十分性を解決するため、以下の各施策を講じてまいります。
⑴ 子会社の重要性・事業規模に応じた親会社役職員の任命
前記のように、従前当社役職員の任命が行われてこなかった子会社についても、その重要性・事業規模に加え、特性や独自性を考慮しつつ、役職員の任命の要否を検討いたします。具体的には、グループ・ミキ・ホールディングス傘下の各社(なお、MIKI については任命済みです)や、当社から見てグループ連結業績に与える影響が大きいと思われる孫会社を中心に検討をする予定です。
⑵ 関係会社管理規程の見直し
現行の関係会社管理規程上、外形上は各社の事業内容に応じた経常的な取引については、金額の多寡にかかわらず、事前承認や報告の明示の対象となるものではありません。リスク抑制の目的で、事業に重要な影響を及ぼす契約の締結や変更・解約については事前承認事項となっていますが、当該「重要」の意義を明確化するとともに、一定金額以上の経常的取引についても報告義務を課すなど、同管理規程の見直しを図ってまいります。
また、子会社の姿勢如何により、報告・相談の対応範囲が異なっている実態(積極的に報告相談をする子会社もあれば、一切の報告をしてこない子会社もある実態)を改めるべく、事前承認・報告ルールの周知徹底に加え、監査部による定期的な運用状況のチェックを実施し、改善を図ってまいります。
⑶ 関係会社管理部門の補強及び効率化
当社グループでのコンプライアンス施策の実施等については、上記のとおり、リスク・コンプライアンス委員会及び事務局であるリスク管理室が主としてその機能を果たすこととなります。もっとも、経営事項全般について適切な親会社による管理が行われることがコンプライアンス推進にあたって重要であることに変わりはなく、M&A の継続的な実施により管理対象となる関係会社(子会社や関連会社)が大幅に増加していることから、関係会社管理部門における機能の補強、また、関連部署との所管事項を整理し効率化を進め、その体制の強化を図り、状況に応じた深度ある監視・監督が実施できる体制を整えてまいります。
4 内部監査の強化
本疑惑の発生原因である内部監査の不十分性を解決するため、以下の各施策を講じてまいります。
⑴ 内部監査部門におけるリスク分析の強化及び人員の補充の要否検討
関係会社に対して実効性ある監査及びモニタリングを実施できるよう、ITを活用したリスク分析の強化、内部監査部門の人員補充や専門的知識の向上を含めた監査体制の強化を行ってまいります。
⑵ 内部監査部門における監査項目の見直し検討
監査項目については、各種助成金受給に関する監査を追加するとともに、監査対象会社、部門、部署で発生した過去の不祥事等を棚卸し、再発防止への取組と不正が発生していないかの表明を得ることといたします。
5 不祥事の早期発見のための取組み
本疑惑の発生原因である内部通報制度の不十分性等を解決するため、以下の各施策を講じてまいります。
⑴ 内部通報制度の改善
前記のとおり、現行の内部通報制度の対象となる関係会社が区々であったり、内部通報制度の存在の周知が不十分である等の問題点がありました。
そこで、内部通報制度については国内関係会社を対象とした横断型の制度とし、定期的に制度の周知を図るものとします。
また、現状、「さわやかホットライン」の最終報告先は当社業務執行部門メンバーとなっていますが、今後は、リスク・コンプライアンス委員会を最終報告先といたします。
⑵ 役職員に対する定期アンケート調査の実施
コンプライアンス意識の浸透度を測定し、また、不正発生への抑止力となること等を目的として、リスク・コンプライアンス委員会により、経営層(各社の取締役及び執行役員)に対して、コンプライアンス意識に関するチェックリスト形式でのアンケートを年1回程度実施することといたします。
アンケートにより得られた結果については、次年度のコンプライアンス施策の方針策定の参考にいたします。
6 その他の再発防止に向けた改善措置(IT統制について)
本疑惑の発生に関し、IT関連の整備状況や統制ルールの不備又は教育の不徹底が直接の原因になっているものではありませんが、内部不正の早期発見や事後的監査の効率的実施、IT統制等の観点から、以下の施策を実施してまいります。
⑴ 関係会社のアカウント管理と定期的な棚卸しができているかモニタリングを実施します。
⑵ 重要資産のデジタル化の推進
情報資産の検索の効率化や利用履歴等をデータベース化することで、事後監査の効率化・実効性を高めます。
⑶ メールサービスにおけるログ・証跡の記録と保存
内部不正の早期発見及び事後対策の影響範囲の観点から、メールサービスはログ・証跡を記録・保存する機能を有しているものを導入します。
⑷ 関係会社へのIT教育の実施
当社で実施しているeラーニング教材を関係会社にも共有するなど、当社グループ内で同水準のITリテラシーを維持できるようIT教育を実施してまいります。
⑸ 関係会社におけるシステム担当の選任と緊密な連携
小規模でシステム担当のリソースが持てない会社は、当社情報システム本部がフォローし、当社グループ内で同水準の情報システム運用体制を早期に確立できるよう推進してまいります。
(以 上)