かつて筑豊の炭鉱産業でにぎわい、現在は教育やITの集積の街へと柔らかな変貌を遂げた福岡県飯塚市。この街の魅力をひも解くと、そこには飾らない、ありのままの人々の温かい日常が息づいている。派手な観光資源に頼るのではなく、日々の営みそのものが訪れる者を引きつける、目に見えない不思議な魅力が詰まっている。
私はかつて大手旅行会社でアジア諸国の旅を企画し、歴史的背景や暮らしに光を当てた独自のストーリーを紡いできた。その後、縁あって飯塚市の雇用政策に携わった際、かつてアジアで感じた活気や、どこか懐かしい人と人との情愛の深さを、この地で再び確かな温度感として肌で感じることとなった。
その風情を物語るのが、今も街を見守るボタ山と、ゆったりと流れる遠賀川だ。石炭採掘に伴って形成された風景には、街の繁栄を支えた「働く」という根源的な営みの歴史が刻まれている。激動の時代を共に乗り越える中で育まれた強い結びつきは、今も飯塚の風土に根を張る。歩みを知るほどに、この街には「おかえり」「お疲れ様」と、人々を優しく包み込んでくれる心地よい安心感がある。
変化が激しく、正解がない現代社会。そんな中でも、ボタ山や遠賀川は変わらぬ「働く」という人の営みを見守り続けてきたのだろう。「流れゆく時代の中で、戻る場所がある」。そう思えるだけで、人はまた前に進めるのではないか。そんな裏打ちされた確かな温もりが、そこには存在する。
ぜひ、飯塚の歴史のロマンに触れ、日が暮れた頃には地元の小料理屋にふらりと足を運んでみてほしい。そこで交わされる気取らない会話や情けに触れたとき、この街は一過性の目的地ではなく、きっと「また戻ってきたい場所」へと変わる。変わらない温もりに触れたくなったときこそ、ぜひ飯塚市を訪れてほしい。
(一般社団法人Fenol代表理事 假屋静佳)




