【地域創生と観光ビジネス111】伊香保温泉「和心の宿大森」と日本総本山「佛光山法水寺」へ 千葉千枝子


 丙(ひのえ)午(うま)の26年も、早や後半戦。先日、馬にゆかりが深い群馬・伊香保温泉「和心の宿 大森」に泊まった。空気が澄んだ秋晴れのなか、ハンドルを握って関越道で渋川伊香保インターをめざした。インターを出てわずか20分と、地の利がよいのも伊香保の魅力だ。

 創業107周年を迎えた同館は、この春、館内リニューアルをしたばかり。ラウンジの窓外には小野子(おのこ)山はじめ赤城山や武尊(ほたか)、苗場の山々が見渡せた。

 チェックインを笑顔で出迎えてくれたのが、同館の大森隆博会長と典子大女将、そして運営マネージャーの北村真紀枝さんだ。畳敷きの館内では、スリッパは履かずに「お足袋で」とのこと。わが家に帰ったような気分で、ラウンジの無料ビールを飲み干した。

 フロントまわりを見渡すと、馬をモチーフにした書画や置物が目に入る。ひと汗流そうと向かった大浴場の壁画にも、馬の絵があしらわれていた。というのも、明治半ばの創業時は馬車を扱い、伊香保御用邸があった時代には、お馬のお世話を。さらに昭和には、馬主として”イカホ”の名を全国に知らしめた。しかも当代・6代目は午年生まれというから、馬づいていて縁起がよい。

 夕食は地のものにこだわり、赤城牛きのこ鍋やデザートの「板前特製プリン」も絶品だった。最上階の露天風呂から望む朝日が美しく、癒やされた。

 大森の場所は、伊香保ロープウェイ・不如帰(ほととぎす)駅に近く、東京駅からの高速バスを降車して目の前という好立地で、石段街や伊香保神社も近い。併設するいなり寿司(ずし)専門店「CON」で”映える”いなり寿司を買って帰ったところ、家族にも大好評だった。さらに、道をはさんで向かい側の伊レストラン「AFURO(アフロ)」は、もとは金融機関の建物で、金庫室を改装した個室が面白い。大森は泊食分離も可能だ。

 「われわれは、商売敵(がたき)ではなく、商売仲間。どこから切っても同じな”金太郎あめ”のような旅館づくりではなく、独自性をもって互いを磨きあいましょう」。隆博さんが渋川伊香保温泉観光協会の会長を務めたとき、そう言って旅館経営者の結束を呼びかけた。そのかいあって、団体から個人への変遷やOTA移行の流入変化、そしてコロナ禍を、手をとりあって乗り越えることができた。

 風情ある伊香保のまち歩きには着物姿が映える。翌朝、大森をチェックアウト後は、レンタルサロン「着物の日 伊香保」を訪ねて、フォトウエディングのロケーションなどをヒアリングした。

 この日、片品村観光協会・倉田剛専務理事とJTB群馬支店・三上敬太支店長との待ち合わせで、「うどん茶屋水沢 万葉亭」に向かった。カラッと揚げた天ぷらにコシのある水沢うどん。皆で舌鼓を打った。

 満腹になったところで訪ねた先が「法水寺」である。台湾四大仏教の一つ・臨済宗佛光山の日本総本山で、伊香保の温泉街や万葉亭から車ですぐ。圧倒のスケール感と絶景でパワースポットとして知られ、写経や座禅体験もできる。2人とは去る8月、台湾・高雄の佛光山を参拝したとき、「次回は伊香保で」と約束していたのだ。法水寺では、栄えあることに釈(しゃく)満(まん)潤(じゅん)総住職と歓談して、親交を深めることができた。このご縁を大切にしたい。

(観光ジャーナリスト・淑徳大学経営学部観光経営学科教授 千葉千枝子)

 
 

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