目の前で見られる醸造蔵の蒸米工程
「茅乃舎」ブランドなどを展開する久原本家グループ(福岡県久山町、河邉哲司社主)は7日、福岡県宗像市にある1717(享保2)年創業の老舗酒蔵「伊豆本店」をリニューアルし、新生「福岡 宗像 酒蔵 伊豆本店」として開業した。
同グループが2024年4月に株式を取得して以来、約1年9カ月にわたる大規模な改修工事を経ての再出発となる。コンセプトに「魅せる酒蔵」を掲げ、世界遺産・宗像の地で新たな観光拠点の創出と、農業振興を含めた地域活性化を目指す方針だ。
伊豆本店は300年以上の歴史を持つ宗像の老舗蔵元だが、今回の再興には単なるM&A以上の深い縁がある。同蔵は河邉社主の母方の実家にあたるほか、久原本家グループが全国展開する「御料理 茅乃舎」のシンボルであるかやぶき屋根も、かつて河邉社主が同蔵の屋根の葺き替えを目にしたことが原点となっている。
新装された施設は、歴史的なかやぶきの母屋やれんが造りの煙突といった趣を残しつつ、現代的な観光ニーズに対応した複合施設へと生まれ変わった。
最大の特徴は、ガラス越しに酒造りの工程を見学できる「醸造蔵」の新設だ。これに加え、搾りたての日本酒を楽しめる「酒蔵BAR」、限定酒や特産品を扱う「直売所」、蔵の歩みを伝える「歴史展示」、そしてノンアルコール需要やファミリー層も楽しめる「甘味」処の計五つのエリアで構成する。
酒を飲む人だけでなく、飲まない人や子供連れでも滞在を楽しめる「体験型観光施設」としての機能を大幅に強化した。
リニューアルに合わせて発表された新銘柄「宗像(むなかた)」への期待も高い。北海道の上川大雪酒造から招へいした若山健一郎氏を杜氏に迎え、最新の醸造設備と伝統技術を融合させた酒造りを開始した。「山田錦」や「夢一献」といった福岡県産の酒米を中心に使用し、宗像の自然と風土に根差した地酒としてブランド化を図る。
7日に行われたオープニングセレモニーで、久原本家グループの河邉社主は「酒造りで最も重要なのは農業だ。良い米(酒米)がなければ良い酒はできない」と強調。「宗像市も米をテーマにした地域振興を掲げており、われわれもそれに共鳴している。将来的には米に関連した商品開発など、宗像初の商品も生み出していきたい」と述べ、酒造りを通じた地域農業への貢献に意欲を見せた。
伊豆本店の伊豆寛子社長は「長い改修期間を経て、ようやく『魅せる酒蔵』として生まれ変わった。世界遺産である宗像大社や道の駅むなかた等の既存スポットと連携し、宗像全体を盛り上げていきたい」とコメントしている。「まずは県内での認知拡大を図り、将来的にはインバウンド(訪日外国人客)の方々にも目的地として選ばれる施設を目指す」と今後の展望を語った。
「神宿る島」として世界遺産登録され、歴史と文化が色濃く残る宗像エリア。食の強みを持つ久原本家グループの資本とノウハウが注入された老舗酒蔵の再生は、地域観光の新たな起爆剤として注目される。

目の前で見られる醸造蔵の蒸米工程





