東京工科大学(東京都八王子市、学長:香川豊)は10月3日、八王子市との協働により、同市の新たな大型複合施設「桑都の杜(そうとのもり)」とJR八王子駅南口間で自動運転バスの実証運行を開始した。運行期間は12月25日(金)まで。木曜から日曜および祝日に1日10往復便程度を運行し、一般利用は無料だ。学校法人が保有するスクールバスの運行実績と最先端のAI開発環境を組み合わせ、地域公共交通の課題解決につなげる試みは全国的にも珍しく、将来的な「八王子発の社会実装モデル」の構築を目指す。
実証運行の概要
運行ルートはJR八王子駅南口から桑都の杜(東京都八王子市子安町3-26-1)まで。自動運転レベルはレベル2で、ドライバーの監視のもとに行われる特定条件下での自動運転機能による運行だ。
乗車定員は自動運転時13名。ベース車両には日野自動車の「ポンチョ」を使用する。自動運転システムの開発には先進モビリティ株式会社が協力。事業主体は、八王子市と東京工科大学で構成する「自動運転社会実装推進事業コンソーシアム」だ。
実施期間の詳細は以下のとおり。
- 運行期間:2026年10月3日(土)~12月25日(金)、木曜~日曜および祝日
- 特別運行日:11月2日(月)・12月8日(火)
- 運休日:10月11日(日)~12日(月・祝)、12月19日(土)~20日(日)
問合せは八王子市交通政策課(Tel. 042-620-7432、平日8:30~17:00)で受け付けている。
出発式には市長・国会議員も出席
9月30日には試乗会と出発式が行われた。出発式のテープカットには、美濃部弥生八王子市議会議長、萩生田光一衆議院議員、初宿和夫八王子市長、千葉茂本学園理事長、香川豊学長、須田義大未来モビリティ研究センター長が出席。地域を挙げた取り組みとして注目を集めた。
スクールバス27台の運行実績を地域へ
本学園(東京工科大学および日本工学院専門学校)では、燃料電池バスを含む計27台のスクールバスを実運行している。学校法人としては国内有数の規模だ。
こうしたスクールバスの運行実績と技術開発を地域交通の維持・活性化に活用する事例は全国的にも珍しい。将来的には八王子発の社会実装モデルの構築を目指すとしている。
AI開発資源を自動運転高度化に活用
本学が保有するのはスクールバスの実績だけではない。私立大学最速のスーパーコンピュータ「青嵐(NVIDIA 青嵐)」など高度なAI開発環境を擁しており、これを活用した自動運転アルゴリズムの高度化を推進する。具体的にはレベル4の実現などを視野に入れ、運転士不足や交通空白の解消といった実社会の課題解決につなげていく方針だ。
段階的に積み上げてきた実証の歩み
今回の実証運行は突然始まったものではない。東京工科大学は八王子市とAI/DX連携協定を締結しており、2026年3月にはJR八王子みなみ野駅からキャンパス間の一部区間で実証実験を実施した。
同年7月には、八王子市が国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金」に採択。国土交通省では、ドライバーの担い手不足や地域の足の確保など、地域公共交通が抱える課題に対する解決手段として期待される自動運転について、地方公共団体による自動運転移動サービス実装にかかる初期投資を支援している。
採択を受けて、八王子市と東京工科大学は「自動運転導入に向けたコンソーシアム協定」を締結。今回の実証運行は、この「自動運転社会実装推進事業コンソーシアム」が運行主体となって実施するものだ。さらに本年度中には、JR八王子駅から本学キャンパスへのルートでの実証実験も計画している。
未来モビリティ研究センターとは
今回の取り組みの中核を担うのが、2025年に設立された東京工科大学の「未来モビリティ研究センター」だ。「モビリティ技術が人々の可能性を広げる手助けになる」という考えのもとに設立されたこのセンターは、人間中心の設計と社会システムの構築を重視する。
モビリティを核に工学、デザイン、コンピュータサイエンスなど様々な分野の知識をAIやデジタル技術を使ってまとめる仕組みを提供。研究テーマは、エンパワーメント・モビリティの実現、高齢者や障がい者が自立し社会に参加できる技術の開発、持続可能なモビリティ社会の実現など多岐にわたる。
センター長・須田義大教授のプロフィール
センター長を務めるのは須田義大教授だ。1982年に東京大学工学部機械工学科を卒業。同大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻博士課程を修了し、工学博士の学位を取得している。
法政大学を経て1990年に東京大学生産技術研究所助教授に就任。カナダ・クイーンズ大学客員助教授を経て、東京大学生産技術研究所教授、東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構長を歴任した。2025年4月より東京工科大学教授・片柳研究所未来モビリティ研究センター長に就任。専門は制御動力学で、鉄道・自動車などの交通システムに関する研究に幅広く従事してきた。
主な社会活動として、一般社団法人日本機械学会(理事、副会長)、公益社団法人自動車技術会(理事、副会長、監事)、日本鉄道技術協会(理事)、鉄道技術総合研究所(理事、評議員)、自動車研究所(理事)、道路交通情報センター(理事)、自動車安全運転センター(評議員)などを務める。
受賞歴も豊富。日本機械学会賞(1989年・奨励賞、1996年・論文賞、2004年・論文賞、2007年・技術賞)、2016年にはInstitution of Mechanical Engineers, John F Alcock Memorial Prizeを受賞している。





