東海道新幹線で新横浜駅を出ると、列車はぐんぐん速度を上げていきます。しばらくは住宅地の景色が続きますが、やがて建物の密度が下がり、工場や物流施設、畑などが目立つようになります。進行方向右手には、丹沢の山並みも見えてきます。
その先でJR相模線をまたぎ、ほどなく相模川を渡ります。相模線との交点は倉見駅のすぐ南側。このあたりに東海道新幹線の新駅をつくろうという構想があります。「倉見新駅」です。
新横浜―小田原間は約51.2キロあり、東海道新幹線では2番目に長い駅間です。神奈川県内では1970年代から新駅誘致の動きがあり、1997年に寒川町倉見地区を誘致地区に決定しました。相模川対岸の平塚市大神地区と一体化した「ツインシティ」のまちづくりも進めており、大神地区は2023年にまちびらきしています。
9月には、神奈川県が補正予算案に1430万円を計上し、新駅の構造や配置を検討する概略設計に乗り出しました。2028年度までの継続費は総額2億7千万円で、経済波及効果なども推計します。
従来、概略設計は経済効果などの調査後に進める予定でした。しかし、駅の具体像がなければ事業費や経済効果を算出しにくいため、県が費用を負担して実施することにしました。
もっとも、新駅建設の見通しが立ったわけではありません。JR東海は、現在の東海道新幹線は高密度のダイヤで運転しており、新駅設置は「極めて困難」としています。一方、リニア中央新幹線の開業後はダイヤの過密が緩和され、新駅設置の余地が高まるとの考えも示しています。将来的な可能性はあるわけです。
倉見新駅で注目したいのは東京方面への利用です。相模線沿線や相模川周辺から新幹線で東京都心へ向かえるようになれば、この一帯は新幹線通勤という新しい選択肢を持つことになります。周辺の開発が進み、東京通勤圏の住宅地として注目されるでしょう。
名古屋や大阪方面へ向かうなら、「のぞみ」が停車する新横浜駅が便利なのは確かです。そのため、倉見新駅は長距離旅行の玄関口というより、東京との時間距離を縮める点で大きな価値があります。
リニアの開業時期もまだ定まっておらず、倉見新駅の実現はさらに先の話です。それでも、将来を見据えた計画がどこまで具体化するのか、楽しみにしたいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)




