ユーロモニターインターナショナルは9月8日、レポート『世界で高まるアジア料理の需要(Asian Cuisine, Global Appetite)』を発表した。
同レポートによれば、アジア太平洋地域を除く世界各地域において、2020年から2025年にかけてアジア系レストランの売上高がレストラン業界全体を上回るペースで成長したことが明らかになった。
旅行やアジア文化への関心の高まりが需要を後押しし、アジア系レストランの売上高の年平均成長率(CAGR)は11%。レストラン業界全体の7%を大きく上回った。また、外食産業の枠を超えて冷凍食品市場でも存在感が拡大しており、韓国料理は2020年から2025年にかけて年平均15%の成長率を記録。世界の冷凍レディミール市場で国・地域別ジャンルの第5位に入った。
出店数の増加によらない、実需に基づく成長
注目すべきは、この成長が店舗数の拡大によるものではない点だ。
北米および西欧という巨大市場において、アジア系レストランの店舗数の増加率は各地域で1〜2%にとどまっている。西欧ではむしろ店舗数が減少傾向にあるにもかかわらず、売上高は拡大を続けた。
ユーロモニターインターナショナルのアジア太平洋地域フード担当インサイトマネージャー、エミル・ファジラは次のように述べた。
「これは、専門飲料店やその他の小型業態のように急速な出店によって存在感を高めた結果ではなく、アジア系レストランでの消費支出そのものが実際に増加していることを反映している。」
急激な出店ブームに乗じた一時的な流行ではなく、消費者の実際の支出増加に裏打ちされた成長。これがアジア系レストラン市場の特徴だ。
地域別の成長状況を見ると、東欧、中南米、中東・アフリカ、北米、西欧のいずれの地域においても、アジア系レストランの売上高CAGRは全レストランのCAGRを上回った。売上高ベースだけでなく、店舗数ベースでも同様の傾向が一部地域で確認されており、アジア系レストランの存在感はグローバルに着実に高まっている。
旅行とアジア文化の普及が需要を牽引
なぜ、これほどまでにアジア系レストランへの需要が世界で拡大しているのか。
ユーロモニターインターナショナルが実施した世界消費者調査「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2026年版(39か国、各国約1,000名を対象)では、世界の消費者の約6人に1人が、旅行先を選ぶ際の重要な要素として「食事の質」を挙げていることが明らかになった。この割合は、「現地文化を体験したい」と答えた消費者の割合を上回る数字だ。
世界の旅行者の4人に1人がアジア太平洋地域を旅行先に選ぶ中、グローバル化やアジア文化の広がりを背景に、アジア料理への関心は世界的に高まっている。旅先での印象的な食体験は、帰国後のアジア料理の購入や外食利用につながる。旅行がアジア料理の新たな顧客層を生み出す入り口となっているわけだ。
韓国料理がアジア料理グローバル展開のモデルケースに
アジア料理のグローバル展開において、今や最も注目される存在が韓国料理だ。
韓流(K-Wave)は、エンターテインメントやソーシャルメディアをきっかけに食への関心が広がる好例とされている。その影響は外食にとどまらず、小売市場にまで及んでいる。
世界の冷凍レディミール市場における国・地域別料理ジャンルのランキングでは、上位から順にイタリア料理、中国料理、メキシコ料理、日本料理、韓国料理、インド料理が並ぶ。この中で韓国料理は2020年から2025年にかけて年平均15%という高い成長率を記録し、第5位に位置した。日本料理は第4位。
同レポートは、韓流が食市場の拡大においても実質的な牽引役を担っていることを示す具体的な事例として、この数字を取り上げている。
本格的な味わいと手軽さの両立が鍵
ただし、海外市場でアジア料理を持続的に拡大するには、新奇性だけに頼ることはできない。
消費者は本格的な味わいを求める一方で、新しい料理を取り入れる際には、厳密な再現性よりも質や利便性を重視する傾向がある。そのため、市場への浸透にはローカライズや手軽さが欠かせない要素となる。
アジア料理はこうした「手間のかかる調理を避けたい」というニーズにいち早く対応してきた分野でもある。この取り組みが世界市場での競争力につながっており、2025年にはチルドおよび冷凍レディミールの世界小売金額売上の38%をアジア料理が占める水準に達した。
ファジラはこの点についても明確に言及している。
「グローバル企業がアジア料理を展開するには、家庭でも手軽に調理できる形で提供することが欠かせない。そうでなければ、消費者への浸透は限定的なものとなるだろう。これは、ハラール対応や地域ごとの辛さの調整などを通じて、アジア料理らしさを保ちながら現地の食習慣や嗜好に合わせられるブランドにとって、大きな成長機会となる。」
本格的な味わいを守りながら、現地の消費者の生活様式や嗜好に合わせてカスタマイズする。この二軸を同時に満たすことが、グローバル展開の成否を分けるポイントだとレポートは指摘する。ハラール対応や辛さの調整といった具体的な工夫が、その実現手段として挙げられている。
アジア以外の市場で持続的需要を獲得するために
同レポートは、アジア料理が海外市場で持続的な需要を獲得するためには、消費者を惹きつける本質的な要因と地域特有の嗜好の両方を見極めることが必要だと強調している。
分析の対象となる切り口は三つ。「味わい」「ライフスタイル」「購買行動」だ。アジア料理への関心がなぜ生まれ、どのような場面で購買や外食利用に結びつくのか——この問いに対して地域ごとに答えを出せるブランドが、グローバル市場での存在感を高めていくことになる。
韓国料理の事例が示すように、エンターテインメントやポップカルチャーを起点とした文化的な関心が、食市場への具体的な需要として結実する流れは、アジア料理全体のグローバル展開においても参照できるモデルだ。
同時に、外食市場だけでなく小売市場でもアジア料理の存在感が増していることは、消費者がアジア料理を「レストランで食べるもの」だけでなく「家庭でも楽しむもの」として取り込み始めていることを示している。チルド・冷凍レディミール市場での38%というシェアは、その証左といえる。
ユーロモニターインターナショナルについて
ユーロモニターインターナショナルは、英国ロンドンに本社を置くグローバル市場調査会社。世界16か国にオフィスを構え、100か国以上に現地アナリストを配置している。210の国・地域および世界の消費者の99.9%を対象に調査を実施しており、業界で50年以上の専門知識を持つ。深い人的洞察とAI技術、先進的なアナリティクスを融合し、グローバル市場における意思決定を支援している。
今回の調査データはPassport Consumer Foodserviceおよびボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ2026年版(39か国対象)に基づく。




