エミレーツ航空 日本支社長 サティシュ・セティ氏
成田線の増便、そしてファーストクラスおよびビジネスクラス利用者を対象とした運転手付き送迎サービスの成田・関西国際空港への拡大――。エミレーツ航空が、日本市場におけるプレゼンスをかつてないほどに高めている。その背景には、どのような戦略と展望があるのか。ドバイを拠点に、世界と日本を結ぶ同社の取り組みと未来像について、日本支社長のサティシュ・セティ氏に話を伺った。
――日本市場の現状に対するご見解と、中長期的なポジショニングについてお聞かせください。
日本は私たちにとって、商業的にも戦略的にも非常に重要な市場です。日本の観光業と商業ビジネスは年々成長しており、特にコロナ禍の終了後は、アウトバウンド(日本から海外へ)の需要が増加しているだけでなく、インバウンド(海外から日本へ)においては記録的な旅行者数を記録しています。また、日本は自動車や電子製品、食品などにおける製造業のハブとしての役割も担っています。こうした旅客および貨物の需要に応え、日本が今後も世界とつながっていくために、当社はこれまでも日本市場への投資を続けてきましたし、これからも継続していきます。
――その投資の具体的な表れとして、最近では便数を増やすことを発表されましたね。
おっしゃる通りです。成田空港では2026年5月に貨物専用便を増便し、2026年10月からは旅客便も1便増便いたします。これにより日本から出発する旅客便は毎日4便となります。内訳は成田から2便、そして羽田と大阪(関西)からそれぞれ1便ずつです。これは、成長市場である日本に対する当社のコミットメントの表れに他なりません。日本のお客様、そして日本へいらっしゃる海外からのお客様、双方の需要にお応えしていきます。
――4便体制となる機材や座席構成について教えてください。エミレーツ航空は、ラグジュアリーなイメージが強いですが、ファーストクラスやビジネスクラスの比率も高いのでしょうか。
現在、関西と成田の1便はエアバスA380型機、羽田はボーイング777型機で運航しています。10月から成田に追加となる便もボーイング777型機です。そして、この4便すべてが最新の内装仕様となっております。クラス構成は、ファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアム・エコノミー、エコノミークラスの4クラス制です。日本を発着する4便を合わせると、1日あたりファーストクラスは42席、ビジネスクラスは240席をご提供することになります。
世界70都市以上で展開、ドア・ツー・ドアの快適な移動体験
――そのファーストクラスとビジネスクラスのお客様を対象に、運転手付き送迎サービスを拡大されました。これはどのようなサービスなのでしょうか。
これは、対象クラスをご利用のお客様に、ご自宅やホテル、オフィスと空港の間を無料で送迎するサービスです。ドア・ツー・ドアのシームレスで快適な移動体験をご提供します。日本では、これまで羽田空港でご提供していましたが、2026年2月1日に成田国際空港、3月1日に関西国際空港へと対象を拡大しました。私たちが知る限り、現在日本でこのサービスを提供している国際航空会社は当社のみです。
――日本独自のサービスではないのですね。
はい。この送迎サービスは、グローバルでは20年以上前から提供しており、現在では世界70以上の都市で展開しています。例えば、成田から出発し、ドバイでストップオーバーしてロンドンへ向かうお客様の場合、日本、ドバイ、そしてイギリスの各都市で往復、合計8回このサービスを無料でご利用いただくことも可能です。日本に限らず、サービスを提供している都市からご出発されるお客様は、どなたでもご利用いただけます。
――送迎に利用される車両も特別なものなのでしょうか。
常に高級車種をご用意しています。日本では、MKグループ様と提携し、質の高い車両を提供できる体制を整えています。車内では無料のWi-Fiサービスもご利用いただけます。お客様が実際に体験される状況と同じものをご用意し、地上でも空の旅と同様の快適性ときめ細やかなサービスをお届けしたいと考えています。
お客様のニーズに応えるフレキシブルなロイヤリティプログラム
――エミレーツ航空を利用されるお客様には、どのような特徴がありますか。
ラグジュアリー志向のお客様はもちろんですが、客層は非常に多様です。例えば、学生のお客様も多く、そうした方々には追加の手荷物許容量をご提供するなど、ニーズに合わせた商品をご用意しています。また、旅行会社様を通じたグループ観光のお客様や、ヨーロッパや中東でクルーズに参加されるお客様が、そこまでの移動手段として利用される「フライ・アンド・クルーズ」という需要もございます。そしてもちろん、当社のファーストクラスやビジネスクラスを好んでご利用くださるビジネス渡航のお客様も数多くいらっしゃいます。
――多様な顧客層を惹きつけるロイヤリティプログラムについてもお聞かせください。他の航空会社との違いはありますか。
当社のマイレージプログラムは「スカイワーズ」と呼ばれ、お客様の間で大変ご好評をいただいています。会員ティアは、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブルーの4段階です。特徴的なのは、お客様のニーズに合わせたフレキシブルな支払い方法です。お客様ご自身でマイルと現金を組み合わせてお支払いいただく事も可能です。また、パートナー航空会社のご利用はもちろん、ホテルやその他サービス業の提携ブランドでもマイルを獲得・利用することが可能です。例えば、ドバイの免税店では、特典航空券に交換するほどのマイルがなくても、お買い物の支払いにマイルを即時利用することができます。
――マイレージ上級会員向けのサービスも充実していますか。
はい。スカイワーズの上級会員のお客様は、ファーストクラスをご利用でなくても、世界各地の空港ラウンジをご利用いただけます。もちろん成田空港も対象で、約170席をご用意したラウンジがございます。
AI活用で、よりパーソナルな顧客体験を
――少し話は変わりますが、昨年OpenAI社との戦略的コラボレーションを発表されました。AI技術をどのように活用されていくのでしょうか。
AIは、今やあらゆる大企業の戦略に欠かせない要素となっています。その発展スピードは目覚ましく、航空会社としてまず重要なのは、そのテクノロジーの進化に遅れないことです。最初のステップとして、まずは運営の効率化にAIを活用していきたいと考えています。
――将来的には、旅行者のようなエンドユーザー向けのサービスにも繋がっていくのでしょうか。
どのようなテクノロジーであっても、最終的な目的は、お客様への貢献です。AIが発展していく中で、当社のウェブサイトで旅行をご検討されているお客様に対し、よりパーソナルなオファーをご提案できるようになると考えています。運営の効率化はもちろん、お客様にご提案するオファーの質を高めることにも活用できるでしょう。まだ現在進行形の取り組みですが、お客様体験のさらなる向上に大きな可能性をもたらすと確信しています。
日本の文化に魅了。JNTOとの連携で観光振興に貢献
――ここからは少し個人的なご質問をさせてください。支社長は日本の温泉や旅館に行かれたことはありますか。
はい、あります。とても楽しんでいますよ。特に冬の温泉は最高ですね。箱根には2回ほど行きましたし、最近では北海道のニセコにも行きました。景色が大変美しかったです。ただ、一番のお気に入りは草津温泉で、機会があればまた訪れたいと思っています。
――エミレーツ航空で日本に来られる海外のお客様にも、草津のような温泉旅館は魅力的に映ると思われますか。
間違いなく興味深い体験になるでしょう。日本はすべての人にとって魅力的な国です。ビジネスで来日された方でも、少し時間を作って日本の文化に触れたいというご要望は非常に多いです。私たちは、日本政府観光局(JNTO)と連携しています。昨年、日本への旅行者を増やすことを目的とした覚書(MOU)を締結しました。温泉を含め、日本にはまだ多くの可能性が眠っていると感じています。JNTOが世界に置く拠点と協力しながら、日本の観光振興に貢献していきたいと考えています。
日本の観光業界と共に成長を目指す
――最後に、日本の観光業界で働く読者に向けてメッセージをお願いします。
日本には、文化、食、美しい自然、歴史的な神社仏閣など、観光客を惹きつける素晴らしい要素が数多くあります。そして、業界内で多くの投資がなされているからこそ、これらの重要な魅力が維持・更新され、旅行者に喜びを与え続けているのだと理解しています。私たち航空会社の役割は、その素晴らしい日本と世界を繋ぐ「橋渡し」をすることです。この良い流れを継続させるためには、インフラの強化が不可欠です。エミレーツ航空としては、便数を増やし、サービスの提供範囲を拡大することで、日本の旅行業界全体の発展に貢献していきたいと考えています。皆様のような方々が、それぞれの事業を通じて旅行業界に貢献されていることに、心から感謝申し上げます。皆様と共に、これからも日本の観光を盛り上げていけることを楽しみにしております。

送迎サービス用車両

エミレーツ航空 日本支社長 サティシュ・セティ氏
【kankokeizai.com 編集長 江口英一】




