日本航空(JAL)は8月3日、2027年3月期第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の連結業績を発表した。売上収益は前年同期比11.2%増の5,237億円と、第1四半期として過去最高を記録した一方、急激な燃油市況の高騰と円安基調が収益を直撃し、EBITは前年同期比72.1%減の127億円にとどまった。
過去最高の売上収益も、燃油費が前年比58%増
第1四半期の売上収益は5,237億円と、前年同期の4,710億円から526億円増加した。航空事業、マイル/金融・コマース事業ともに前年を上回り、過去最高の四半期収益を達成。
しかし費用面では燃油費が前年同期の940億円から1,488億円へと548億円、率にして58.4%の大幅増加となった。燃油費以外の費用も265億円(7.8%)増加し、営業費用合計は5,168億円(前年比18.7%増)に膨らんだ。
その他収支も前年同期の98億円から58億円へ40億円(41.1%)減少した。
以上の結果、EBITは127億円(前年同期比72.1%減)、EBITマージンは2.4%(前年同期9.7%から7.2ポイント低下)となった。純利益は53億円(同80.2%減)。EBITDAは555億円(同35.7%減)となり、EBITDAマージンは10.6%だった。
フルサービスキャリアは燃油高騰で赤字転落
フルサービスキャリア(FSC)事業の売上収益は前年同期比13.8%増の4,202億円となったが、燃油市況高騰の直撃を受け、EBITはマイナス8億円となった。
国際旅客事業では、機動的なレベニューマネジメントと燃油サーチャージスキームの改定により単価が大幅に上昇した。旅客収入は前年同期比14.4%増の2,116億円。有償旅客数は前年同期比0.4%減の194万7,000人となったものの、単価は1人当たり10万8,673円と14.9%上昇した。RPKは108億1,300万人キロ(前年同期比2.1%減)、ASKは127億3,100万席キロ(同0.7%減)、有償座席利用率は84.9%(同1.2ポイント低下)だった。
国内旅客事業では、レベニューマネジメントを徹底し、タイムセール適正化などにより単価向上を実現。旅客収入は前年同期比3.6%増の1,390億円となった。有償旅客数は883万2,000人(前年同期比2.7%減)にとどまったが、単価は1万5,741円と6.5%上昇した。ASKは84億7,200万席キロ(同2.1%減)、RPKは67億2,200万人キロ(同2.3%減)、有償座席利用率は79.3%(同0.2ポイント低下)だった。
国際貨物は56%増収、カーゴルクスとの連携が奏功
貨物郵便事業では国際線が前年同期比56.4%増収の526億円と大幅に伸長した。アジア〜北米間の旺盛な貨物需要を取り込むとともに、カーゴルクス航空との連携による貨物機ネットワークの拡充が収益に貢献。有償貨物トンキロは前年同期比13.7%増、貨物輸送重量も11.5%増加し、重量単価は334円/kgと40.3%上昇した。
国内貨物は新規顧客獲得への取り組みにより、貨物収入が前年同期比6.5%増の77億円となった。
LCCは増収も、燃油高でEBITはほぼ均衡
LCC事業の売上収益は前年同期比6.7%増の324億円と前年を上回ったが、燃油市況高騰の影響によりEBITはマイナス1億円となった。
ZIPAIRは、全機への高速インターネット「Starlink」搭載完了によるプロダクト価値向上と柔軟な価格戦略が奏功し、旅客収入は前年同期比6.5%増の223億円を達成した。有償旅客数は35万5,000人(前年同期比1.9%増)、RPKは22億6,000万人キロ(同4.5%増)、有償座席利用率は88.5%(同11.3ポイント上昇)と高水準。単価は6万3,029円(同4.5%上昇)となった。
一方、SPRING JAPANは供給減により旅客収入が前年同期比4.8%減の50億円となった。有償旅客数は17万9,000人(前年同期比35.9%減)、ASKも36.6%縮小した。ただし、北京・上海(浦東)線などを中心とした需給の引き締まりを捉え、単価は2万8,008円と48.5%の大幅上昇を実現した。
マイル/金融・コマースは増収増益を維持
マイル/金融・コマース事業は、JALカード決済額の増加とグローバル提携強化による非航空領域の発行マイル数拡大が好調に推移。売上収益は前年同期比13.3%増の563億円、EBITは前年同期比17.6%増の120億円と、燃油高騰の逆風下でも安定的に利益を伸ばした。
その他事業は、中国および中東における外国航空会社の減便に伴う受託便の減少等により売上収益が前年同期比5.5%減の566億円となったが、JAL Innovation Fundの為替評価損益の変動等によりEBITは前年同期比96.7%増の26億円となった。
財務状況は引き続き健全
2026年6月末時点の財政状態は、総資産3兆3,737億円(2026年3月末比1,750億円増)、現金及び現金同等物は1兆1,574億円(同1,472億円増)となった。有利子負債は8,279億円(同480億円減)、自己資本は1兆4,473億円(同1,576億円増)。自己資本比率は42.9%(格付評価上の数値は37.1%)と健全な水準を維持している。
キャッシュフローでは、営業キャッシュフローが978億円(前年同期比168億円増)のキャッシュインフロー。一方、投資キャッシュフローはマイナス665億円(同423億円悪化)、フリーキャッシュフローは312億円の黒字(同254億円減少)となった。
通期目標のEBIT1,800億円は変更なし
JALは「年度目標であるEBIT1,800億円、純利益1,100億円を引き続き目指す」としており、2026年4月30日に公表した2027年3月期通期の業績予想(連結売上収益2兆950億円、EBIT1,800億円、当期利益1,100億円)および年間配当金予想(1株当たり96円)に変更はないと発表した。
燃油市況・為替変動による収益影響については、シンガポール・ケロシン200ドル/バレル、為替160円/米ドルの場合、燃油費は計画(前提:ケロシン90ドル/バレル、為替150円/米ドル)から約280億円/月増加すると試算。これに対し、底堅いベース需要と機動的なレベニューマネジメント、激変緩和措置、5月改定以降の燃油サーチャージ収入で対応し、第1四半期の月当たり影響をマイナス110億円程度に抑制。7月以降はマイナス20億円程度まで縮小させる方針を示している。
地域活性化から宇宙輸送まで事業を多角化
第1四半期中の主な取り組みも多岐にわたった。
フルサービスキャリア事業では、2026年5月からGMO AI&ロボティクス商事との共同で国内初となる空港でのヒューマノイドロボット活用に向けた実証実験を開始。深刻化するグランドハンドリング領域の人財不足という課題への対応として、省人化と作業負荷軽減を通じた持続可能なオペレーション体制の構築を目指す。
ZIPAIRは2026年5月にアジアのエアラインとして初めて全機への高速インターネット「Starlink」導入を完了し、全便・全路線でのサービス提供を開始。また6月には成田〜ラスベガス間の直行チャーター便を初運航し、8月には成田〜オーランド間の直行チャーター便3往復を運航するなど、北米市場での新たな需要取り込みを推進している。
マイル/金融・コマース事業では、ライフネット生命保険との資本業務提携契約を4月30日に締結。JALが持つ約4,100万人のJALマイレージバンク会員基盤やマイルなどのアセットと、ライフネット生命のオンライン生保としてのプレゼンスや高度なUI/UXを融合し、新たな保険商品・サービスを共創する方針。NTTドコモとの協業では「JALモバイル powered by ahamo」の提供も開始した。
さらに6月にはプレミアムウォーターとの協業による「JALウォーター」の提供を開始。7月には東京電力エナジーパートナーとの協業による「JALガス」も提供開始し、電気・ガス・水という主要生活インフラとJALマイルライフのシームレスな連携を構築した。
7月14日にはマリオット・インターナショナルとの戦略的パートナーシップを締結し、相互のステイタスマッチを開始した。
新規事業分野では、ispace(アイスペース)が2028年に予定する月面着陸ミッションにおけるペイロード輸送サービス契約を締結。5月27日より企業・自治体向けに輸送枠の販売を開始した。月面に地球の文化を継承する「ARGO PROJECT」として専用ボックス「Möbius Ark」の開発と搭載品の募集・販売を担う。
また6月1日には三菱重工業とJALエンジニアリングの合弁会社「株式会社Aero Breath」を設立。愛知県の県営名古屋空港を拠点として2026年度中のリージョナル機整備事業開始を目指す。
地域活性化では、7月17日に「つながる、二地域暮らし2026」を開始。昨年度6地域だった対象を全国36地域へ大幅拡大し、航空便の利用に応じたマイル付与による移動費支援や滞在先での交流機会を提供する。東日本旅客鉄道および西日本旅客鉄道との二地域居住プログラムも始動した。
なお、JALは2026年3月期(FY2025)通期においても過去最高益を達成しており、売上収益は前年比9.1%増の2兆125億円、EBITは前年比26.4%増の2,180億円、純利益は前年比28.6%増の1,376億円だった。中期経営計画の最終年度における財務目標(EBITマージン10%以上、ROIC9%達成、EPS290円レベル)もすべて達成している。FY2025の年間配当は1株当たり96円(配当性向31.3%)。




