JR東日本、2027年度末に日本初の水素ハイブリッド電車「HYBARI」を営業運転へ 次世代車両の開発も始動


 東日本旅客鉄道(JR東日本)は7月14日、ゼロカーボンの取組みをさらに加速させると発表した。2027年度末に日本初の水素ハイブリッド電車「HYBARI」の営業運転を実現するとともに、次世代水素ハイブリッド電車の開発に着手。川崎発電所では水素バリューチェーン推進協議会の「水素1%調達宣言」に参画する。グループ経営ビジョン「勇翔2034」が掲げる”持続可能で豊かな地球環境”の実現に向け、2050年度までのCO2排出量「実質ゼロ」を目指す。

「HYBARI」、鶴見線・南武線で営業運転開始へ

 JR東日本は2022年3月から、水素ハイブリッド電車「HYBARI」の実証試験を進めてきた。「HYBARI」は水素を燃料とする燃料電池装置と蓄電池を搭載したハイブリッド電車だ。搭載された水素は燃料電池に供給され、空気中の酸素と化学反応することで、地球温暖化の原因となるCO2を排出せずに発電できる仕組み。

 これまでの実証試験を通じて、鉄道車両としての車両性能やシステムの安定性を検証。今回、試験車両「HYBARI」を日本初の水素を利用した営業車両として改造し、2027年度末を目途に、鶴見線および南武線(尻手〜浜川崎間)で営業運転を開始する。

 水素充填は鎌倉車両ベース(中原)で35MPaの高圧水素を用いて実施。1回の充填で走行できる距離は約70kmとなる。営業運転の詳細については今後改めて発表される予定だ。

世界初の70MPa対応、次世代車両は2030年度末の運転開始目指す

 「HYBARI」で得た知見をもとに、次世代水素ハイブリッド電車の開発も同時にスタートする。

 最大の特徴は、世界初となる70MPaの高圧水素の使用だ。これによりディーゼル車両と同等の走行距離を確保し、連続する勾配線区に対応可能な走行性能を検討していく。広範囲な線区で走行できる鉄道車両の実現を目指し、2030年度末を目途に営業運転を目指す。

 運行開始に際しては、より短時間で高圧の水素充填ができる設備も整備する方針。将来的には海外で製造され国内に輸入される水素や、国内の再生可能エネルギーが豊富な地域で製造される水素の活用も検討していく。さらに、世界各地の環境問題へのソリューションとして海外展開も視野に入れる。

 次世代水素ハイブリッド電車の概要については今後改めて発表される。

川崎発電所で「水素1%調達宣言」に参画

 発電分野でも新たな動きがある。JR東日本は信濃川発電所(水力)と川崎発電所(火力)の自営発電所を運用している。信濃川発電所はCO2を排出しないクリーン電源として首都圏の鉄道輸送を支え、川崎発電所ではこれまで重油や灯油から天然ガス主体への燃料転換を進めるなど、低炭素化に取り組んできた。

 2024年度のJR東日本の電力使用量は57.8億kWhで、そのうち自営電力が34.2億kWh(59%)、購入電力が23.6億kWh(41%)。自営電力の内訳は火力が21.5億kWh(37%)、水力が12.7億kWh(22%)だ。

 今回、川崎発電所で小型専焼機を導入し水素への燃料転換を実現することを通じ、保有する火力発電設備の燃料使用量の1%以上を水素とすることを目標として「水素1%調達宣言」に参画した。この1%以上という目標量は、一般家庭約5,500世帯分の1年間の電力消費量に相当する。

 本目標は、水素利活用拡大に向けた「第一段階の取組み」と位置付けられており、2050年度の水素専焼等によるゼロカーボン実現に向けて、さらなる利用拡大を検討していく。水素の調達については、海外からの輸入が計画されている水素の供給を受けることを考えている。

 なお、JR東日本は「水素1%調達宣言」について、水素バリューチェーン推進協議会および資源エネルギー庁が推進する、水素の需要創出と調達拡大を目的とした取組みと説明。2026年6月4日には第一弾の参画企業として公表されている。

軽井沢・高輪でもまちづくりに水素を活用

 水素を利活用した取組みは、まちづくりの分野にも広がる。

 軽井沢エリアでは、2025年11月に発足した「浅間ゼロカーボンコンソーシアム」に参画。JR東日本グループは軽井沢駅周辺での水素ステーションの建設とモビリティを核とした水素需要創出をはじめとして、将来的にはまちのエネルギーとして広範囲に水素を利活用していくことを検討していく。今後、モビリティや住宅での水素利活用を目指し、コンソーシアムのメンバーと水素社会の実現を推進していく方針だ。

 TAKANAWA GATEWAY CITYでは、未来へ向けたイノベーションの軸とする「三本柱」の一つに「水素・GX」を掲げる。小型物流拠点からまちへの配送に燃料電池(FC)トラック、まちのごみ収集にFCごみ収集車を導入。まちの中を回遊する自動走行モビリティのエネルギーとしての利用など、水素の利活用をすでに進めてきた。

 今後はモビリティだけでなく、まちを支えるエネルギーの一部にも水素の利活用を目指すなど、より大規模な水素の社会実装を目指す。「持続可能で先進的な都市型エネルギーシステムの創出をTAKANAWA GATEWAY CITYからリードしていく」としている。

 JR竹芝水素シャトルバスについても動きが続いている。「WATERS takeshiba」のまちびらきに合わせ、2020年10月にデザインの異なる2台の燃料電池バスを使用して運行をスタート。東京駅から竹芝周辺、日の出ふ頭を循環するシャトルバスで、2025年9月からはTAKANAWA GATEWAY CITYへの乗り入れを開始した。2026年3月から6月の間は期間限定で、平日にTAKANAWA GATEWAY CITYとOIMACHI TRACKS間で水素シャトルバスを運行し、多くの利用者に使われた。JR東日本グループは引き続き水素を利用したモビリティを活用し、回遊性の向上を目指す。

社内炭素価格を約3倍の1万5,000円に引き上げ

 JR東日本はCO2排出量削減につながる設備投資を促進するため、2022年度より社内炭素価格(インターナルカーボンプライシング、ICP)を5,000円/t-CO2に設定し、LED照明や高効率空調設備の導入促進に活用してきた。

 このたび、非化石証書価格の上昇動向を踏まえ、社内炭素価格を見直した。見直し価格は、上昇動向の1.5倍となる約3倍の15,000円/t-CO2へ引き上げ。今後も社内炭素価格を活用し、CO2排出量の削減につながる設備投資を積極的に推進することで、省エネルギー化と脱炭素経営のさらなる加速を図っていく。

2050年に向けた3段階のロードマップ

 JR東日本グループが描く水素利活用のロードマップは3つのステップで構成される。

 現在から2030年代にかけてのステップ1では、HYBARIの開発・営業運転、次世代水素ハイブリッド電車の開発着手、そして水素混焼発電に取り組む。2040年を見据えたステップ2では、次世代水素ハイブリッド電車の社会実装と国内気動車区間への導入、都市部における大規模利活用モデルの構築、地方部における地域型利活用モデルの構築を進める。2050年のステップ3では、海外展開、水素専焼発電、そして社会実装と普及を目指す。

 「ゼロカーボン・チャレンジ2050」として、JR東日本グループは2030年度までに2013年度比でCO2排出量を50%削減し、2050年度までに「実質ゼロ」を達成することを長期目標としている。太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの開発、新型車両導入等による省エネ化、自営火力発電所の効率化など、エネルギーを「つくる」から「使う」までのすべてのフェーズでCO2排出量「実質ゼロ」に向けた取組みを推進してきた。今後も水素を軸に、モビリティ・発電・まちづくりの各分野で脱炭素化を加速させていく。

 
 

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