JR東日本、新幹線専用検測車「SOAR」を2029年度導入へ 最高速度320km/hで日本初の検測に挑む


 東日本旅客鉄道(JR東日本)は7月14日、新たな新幹線専用検測車(E927形)の開発を進めると発表した。愛称は「SOAR(ソアー)」。2029年度中の検測開始を予定しており、最高速度320km/hでの高速検測を実現する。

 新たに開発する2つの検測装置——車輪とレールの間に作用する力を推定する「PQ推定システム」と、48台のカメラで走行中に設備や沿線環境を記録する「新幹線車上撮影装置(仮称)」——を320km/hで運用することは、日本初の取り組みだ。デザイン(カラーリング)と愛称も決定した。

現行「East-i」から7両・320km/hへ刷新

 新たな検測車の車両形式はE927形で、7両編成。現行の電気・軌道総合検測車E926形「East-i」が6両編成・最高速度275km/hであるのに対し、編成を1両増やし、最高速度を45km/h引き上げる。

 検測エリアは現行と同様、東北、上越、北陸、山形および秋田新幹線。JR東日本が管内とするすべての新幹線路線を対象とする。

 JR東日本グループはグループ経営ビジョン「勇翔2034」で、モビリティ分野における「究極の安全の追求」を掲げている。今回の新検測車の開発は、その実現に向けた取り組みと位置づけられている。

日本初、PQ推定システムで予防保全を高度化

今回新たに開発・搭載する検測装置の一つが「PQ推定システム」だ。公益財団法人鉄道総合技術研究所が開発した技術で、現在、JR東日本の研究開発センターで装置化の開発を進めている。

台車に複数のセンサを取り付け、台車の揺れや傾きなどを測定することで、車輪とレールの間に作用する力を推定する。「PQ」とは、この力を示す記号で、上下方向をP(輪重)、左右方向をQ(横圧)と表す。

現行のE926形による検測では、レールのゆがみを測定し、目安値を超えた箇所を整備する手法をとっている。E927形では、このゆがみのデータに加え、車輪とレールの間に作用する力のデータも組み合わせる。力が大きいほどゆがみが進行しやすいという特性を活用し、ゆがみと力の双方が目安値を超えた箇所を優先的に整備する仕組みだ。

整備箇所や優先度をより明確にし、「さらに効果的な予防保全と安全レベルの向上を実現する」(JR東日本)。

48台カメラで走行中に設備・沿線環境を記録

 もう一つの新開発装置が「新幹線車上撮影装置(仮称)」だ。

 1号車・7号車の前頭部に各8台、3号車の側方・天井部分に32台、合計48台のカメラを設置する。高精細な画像を連続撮影し、設備の状態や沿線の環境を詳しく記録する。

 現在は、列車による巡視、沿線環境の調査・把握、構造物の検査といった作業を人力で行っている。新装置の導入後は、車両の前方・側方・天井のカメラで走行しながら設備や沿線環境を撮影し、後日に撮影データを解析・共有する形に移行する。

 具体的には、設備状態の前回比較による検査等のさらなる効率化が期待される。また、列車運行の支障となるおそれのある沿線木などをリサーチし、沿線環境のより正確な把握に役立てる。

 今後は「AI技術を用いた自動判定・抽出の導入に向け開発を進める」(JR東日本)としている。

現行East-iとの装備比較

 E927形「SOAR」とE926形「East-i」の検測装備を比較すると、以下の通り。

 軌道分野では、軌道変位検測装置が新方式で継続(既発表)、動揺加速度計・軸箱加速度計が継続搭載。PQ推定システムは今回新たに開発・搭載される。

 電力分野では、電車線金具モニタリング装置が新開発(既発表)、トロリ線状態測定装置が新方式で継続(既発表)、架線相互離隔測定装置・パンタグラフ衝撃検出装置が継続搭載。

 信号分野では硬点検出装置・信号検測装置が継続。通信分野では通信検測装置が継続。共通装備として、新幹線車上撮影装置(仮称)が今回新たに開発・搭載される。

 なお、軌道変位検測装置(新方式)、電車線金具モニタリング装置(新開発)、トロリ線状態測定装置(新方式)の3点については、2025年10月7日のプレスリリース「新たな新幹線専用検測車の開発に着手します」で既に発表済みだ。

愛称「SOAR」に込めた「0(ゼロ)」への願い

 新たな検測車の愛称「SOAR(ソアー)」および車体のデザイン(カラーリング)は、JR東日本グループの社員からの応募作品の中から選考・決定した。

 愛称「SOAR」を考案したのは、水戸事業本部事業推進部地域共創モビリティユニットの高村真央氏だ。グループ経営ビジョン「勇翔2034」から取り、「勇ましく、翔け上がる」という意味を込めた。

 作者はその想いについて、「安全を基盤としたうえで、安心と感動の実現というかつてない高みを目指して勇ましく翔けていくことをイメージ」と説明している。「SOAR」は英語で「翔ける」という意味を持ち、「安全に向かって翔ける」という意味も込められている。さらに、アルファベットの「O(オー)」には、究極の安全を目指す事故事象「0(ゼロ)」という表記・意味も込められているという。商標出願中。

白を基調に赤と緑のアシンメトリーデザイン

 カラーリングを考案したのは、東京事業本部事業推進部地域共創モビリティユニットの堀嘉洋氏だ。

 デザインのコンセプトは次の通り。East-iの白を基調にしたデザインを継承しつつ、グループ経営ビジョン「勇翔2034」から「勇」は勇気をイメージした赤系統、「翔」は羽ばたき伸びていくイメージから緑系統の色で表現。これはJR東日本のコーポレートカラーとEast-iの赤色も意識したものだ。

 側面はアシンメトリー(非対称)なデザインとし、「線路・架線などが常に同じ状態ではないことと、それらを検測し安全につないでいくという『検測車の使命』を表現した」(作者コメント)。意匠出願中。

 今後、デザインを考案した社員とE10系のデザインを担当したtangerine社が連携し、2026年秋頃を目指して実車のデザインの細部を仕上げる予定。愛称に関してもロゴ等を検討していく。

将来は省人化・無人検測の実現も視野

 JR東日本は今後の展望として、AI・DXの技術も活用しながら、より安全で安心の高速輸送サービスの実現に取り組むとしている。

 320km/hでの高速走行による検測に対応するとともに、「省人化や遠隔からの無人検測の実現にも取り組む」(JR東日本)方針だ。

 検測開始は2029年度中を予定。現行のEast-i(E926形)が最高速度275km/hで6両編成であるのに対し、E927形「SOAR」は320km/h・7両編成へとスペックを向上させ、新開発の2装置を加えた高機能な新幹線専用検測車として投入される。

 
 

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