グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026閉幕 熊本で27カ国・地域が自然再生へ議論 「熊本宣言」を採択


開会式で英語でごあいさつされる高円宮妃久子さま

 自然損失の食い止めと回復を目指す国際会議「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026(GLOBAL NATURE POSITIVE SUMMIT 2026)」が7月14、15の両日、熊本城ホール(熊本市)で開催された。企業や金融機関、自治体、研究者、市民社会の代表らが一堂に会し、「共に船出しよう―ネイチャーポジティブな未来への航海へ」をテーマに、2030年までに自然の損失を止め、回復へ転じる国際目標の実現に向けた議論を交わした。

 同サミットは、2022年に196カ国が合意した「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」の実施を加速することを目的とする国際会議。2026年10月にアルメニア・エレバンで開催予定の生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)を前に、世界の取り組みを確認する重要な機会となる。2024年にオーストラリア・シドニーで開催された第1回に続く第2回大会で、ネイチャーポジティブ・イニシアチブ(NPI)と国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)が主催した。

 

熊本から自然と経済の調和を世界へ発信

 開会式には高円宮妃久子さまがご臨席し、英語でご挨拶された。久子さまは「人間は自然の一部」であることに触れ、極地の氷の保全と科学的根拠に基づく行動の重要性を述べられた。

 開会式で英語でごあいさつされる高円宮妃久子さま

 

 開催都市を代表して挨拶した大西一史熊本市長は、同市が豊富な地下水に支えられ、豊かな生物多様性の恩恵を受けてきた都市であることを紹介。一方で、自然開発や地球温暖化、外来種の増加に加え、近年の半導体関連企業の進出に伴う地下水への影響など、自然環境と経済活動の調和が課題になっていると説明した。その上で、「世界各国から関係者が一堂に会し、生物多様性の損失を止め、回復へ転じるネイチャーポジティブの実現に向けて活発な議論が交わされることは誠に意義深い。本サミットを契機に、生物多様性に関する取り組みが世界中で加速することを期待している」と述べた。

「世界一の地下水都市」熊本を紹介する大西一史熊本市長

 

 

 石原宏高環境大臣はビデオメッセージで、「30by30(2030年までに陸と海の30%以上を保全する国際目標)」の達成に向けた地域主導の取り組みや、企業による自然関連リスク・機会への対応が進んでいることを紹介。また、サプライチェーンの調達段階でネイチャーポジティブを実装するためのガイドラインを本サミットで公表することを明らかにした。

 

 金子恭之国土交通大臣もビデオメッセージを寄せ、国土交通省が今年1月に「グリーンインフラ推進戦略2030」を策定したことを紹介するとともに、

 来年3月に開幕する「GREEN×EXPO 2027」について、人と自然が共生する未来を世界へ発信していく考えを示した。

ビデオメッセージを寄せた金子恭之国土交通大臣

 

 開会式には、生物多様性条約(CBD)事務局長のアストリッド・ショーメーカー氏ら国内外の要人も出席した。

 

基調講演「今こそ自然を回復へ転じる行動を」

 開会式後の基調講演では、「ネイチャーポジティブとは何か―今の時代における喫緊の課題」と題し、ネイチャーポジティブ・イニシアチブ主宰のマルコ・ランベルティーニ氏が登壇した。

基調講演するマルコ・ランベルティーニ氏

 

 同氏は、現在が地球環境の破滅への臨界点である一方、社会を転換できる重要な局面でもあると指摘。人類が発展する一方で自然は大きく衰退している現状に触れ、「人間が引き起こした問題をようやく理解し始め、ネイチャーポジティブに向けた認識と行動が進みつつある」と説明した。また、生物多様性は測定が難しく複雑であるものの、実用的な指標づくりを進めているとし、「生物多様性の損失を食い止め、反転させる真に必要な行動」が求められていると訴えた。

 

 会期中は、「企業のネイチャーポジティブ戦略」「金融の役割」「イノベーション・ネイチャーポジティブとテクノロジー」「海のネイチャーポジティブ」などをテーマに、多彩なパネルディスカッションや分科会を開催。企業や自治体、国際機関、研究機関がそれぞれの取り組みや課題、実践事例を共有した。

 

「NATURE TECH!」で産官学民の実践を発信

 展示ホールでは、併催イベント「NATURE TECH!」を2日間開催。「自然の損失を止め、再生へ向かうための技術活用とレジリエンス」をテーマに、産官学民の実践者が最新技術や研究成果を紹介した。スタートアップによるピッチや企業、大学、行政による展示・講演のほか、小中高校生も会場を訪れ、自然環境や生物多様性への理解を深める学びの場にもなっていた。

「NATURE TECH!」で研究成果を発表するリンデンホールスクール中高学部の生徒

 

 開催地の熊本市は、阿蘇山の火山活動や河川が育んだ豊富な地下水に支えられ、市民生活と生物多様性が共存する「世界一の地下水都市」として知られる。地下水を共有する10市町村と行政区域を越えたランドスケープレベルでの協働を進める一方、2016年の熊本地震からの創造的復興や半導体関連企業の進出など、新たな発展と自然環境の調和にも取り組んでいる。

 

「熊本宣言」を採択 自然資本の回復へ行動加速

 サミットには27カ国・地域から関係者が参加し、2日間で2,725人が来場。80を超える組織がネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みに署名した。

 

 最終日の15日に採択された「熊本宣言」では、2030年までに自然の損失を止め、2050年までに自然を回復させる国際目標の実現に向け、政府や企業、金融機関、市民など社会全体で行動を加速することを確認。自然資本を持続可能な成長やイノベーションを支える重要な資産と位置付け、COP17に向けた国際的な連携と具体的な取り組みを進める方向性を共有し、2日間にわたる国際会議を締めくくった。

【九州支局長 後田大輔】

 
 

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