マリオット、Z世代富裕層の旅行志向を4分類 「ラグジュアリーは一つの基準で定義されない」


 マリオット・インターナショナルは7月7日、アジア太平洋地域(中国圏を除く)におけるZ世代のラグジュアリー・トラベルに関する志向をまとめたレポート「Beyond the Gen Z Myth and the State of Luxury Travel in APEC」を発表した。調査対象8カ国の富裕層旅行者2,800名(うちZ世代1,200名)のデータを基に、Z世代が「ラグジュアリー」そのものを独自の価値観で再定義しつつある実態が明らかになった。

 レポートは、Z世代富裕層旅行者を「伝統愛好家」「ウェルネス投資家」「静寂の探求者」「文化の回帰者」の4つのペルソナに分類。異文化への没入、ウェルビーイング、デジタルデトックス、ルーツの探求という多様な軸で「ラグジュアリー」が語られており、業界全体の価値基準が根本から変わりつつあることを浮き彫りにした。

旅行の「受け手」から「クリエイター」へ

 今のZ世代富裕層旅行者は、用意されたプランに受動的に参加するのではなく、旅を主体的に作り上げていく存在だ。

 半数以上が旅行費用を自己負担し、半数が旅行の計画から手配までを自ら行っている。旅行の同伴者として最も好まれるのは「家族」(51%)だが、少人数グループでの旅行は前年比17%増加。より親密で、旅行者同士が体験を共有できるスタイルへのシフトが見られる。

 旅行先を選ぶ際の重視項目では、87%が「異文化への没入や地域コミュニティとの交流」を挙げた。続いて「食の発見」(86%)、「自然との触れ合い」(86%)、「ウェルネス」(85%)が旅行先の決断を左右する主要な要素として並んだ。

 シームレスなサービスへの需要も高まっている。時間のロスやコミュニケーション不足はZ世代にとって大きな不満の要素であり、ストレスなく利用できるスマートなサービスが求められている。テクノロジーの活用も進んでおり、旅行者の23%がすでにAIツールを情報収集や計画作りに活用している。

4つのペルソナ

本物志向の「伝統愛好家」(34%)

 最も大きな割合を占めるのが「The Connoisseur Traditionalist(伝統愛好家)」だ。このグループにとってのラグジュアリーは、「評判」「サービス」「職人技」といったホスピタリティの本質に根ざしている。象徴的なホテル、卓越したサービス、ロイヤルティプログラムによる優遇、高評価のダイニング体験、綿密に計画された旅程を好む傾向がある。

 このグループでは、79%が常にラグジュアリーホテルを利用する。宿泊先を選ぶ際に「ブランドの評判が予約に影響する」と答えたのは91%に上り、85%が会員特典やリワードにモチベーションを感じている。また、66%が旅行の1〜2カ月前には予約を完了する計画的なグループであり、正確さや信頼性、質の高さを重んじる姿勢が数字に表れている。

心身を整える「ウェルネス投資家」(30%)

 「The Future Proofer(ウェルネス投資家)」にとって旅行は、将来の健康やウェルビーイングへの投資だ。心身の最適化とバランスを求め、ほぼ全員(97%)が滞在中にウェルネス施設を利用すると回答した。

 95%がホテル内のヘルスケア専門家へのアクセスを重視し、旅行先を選ぶ際には自然に近い環境であることも重要な要素として挙げた。ウェルネス・トリートメントへの出費を惜しまないと答えたのは57%で、他の同年代旅行者の平均(20%)を大きく上回る。ラグジュアリー・トラベルが予防医学や心身の回復などウェルビーイングに重点を置く方向へとシフトしていることを示す結果だ。

喧騒を離れる「静寂の探求者」(20%)

 「The Quiet Luxurist(静寂の探求者)」は、オンラインで常につながっている時代にあって、「常につながっていること」よりも「デジタルから離れること」を選ぶグループだ。ラグジュアリーを「デジタルから距離を置き、日常を離れて静寂を取り戻すこと」と再定義している。

 このグループの全回答者(100%)が旅行中にテクノロジーの利用を制限しており、他の同年代旅行者の63%を大きく上回る。85%が秘境や穴場を探し、90%がプライベート・ダイニングの体験を重視。ブティックホテルや人里離れた隠れ家のような宿泊施設を好み、「目立つこと」ではなく「日常から離れる自由」に価値を見出す。

ルーツを辿る「文化の回帰者」(16%)

 「The Cultural Reclaimer(文化の回帰者)」にとってのラグジュアリー・トラベルは、自らのアイデンティティやルーツを辿り、大切な人とのつながりを深めるための体験だ。回答者の全員が家族旅行の計画で中心的な役割を担い、65%が旅行費用に関する決定権を持っている。

 「家族のルーツに関連する旅行先」を「非常に重要」と答えたのは半数で、他の同年代旅行者の33%を上回る。88%が現地の文化を深く体験できる没入型の体験を求めており、旅の原動力はSNSなどでの社会的評価ではなく、文化的な発見や個人的な成長、世代間の絆を深めることにある。

旅行回数より「体験の深さ」へ

 レポートはZ世代にとどまらず、アジア太平洋地域全体のラグジュアリー・トラベルの新たな潮流も示している。

 富裕層旅行者はより厳選した旅行スタイルへと移行しており、旅行回数を減らす一方で滞在期間を延ばす傾向にある。海外旅行の平均日数は7泊から9泊へと伸びることが予想されており、旅行の価値基準が「頻度」から「体験の深さ」へと変化している。旅行者が時間と資金を一つの旅に集中させるにつれ、パーソナライゼーション、シームレスなサービス、心に残る体験への期待はかつてないほど高まっている。

 「今の時代のラグジュアリーは、もはや一つの基準で定義されるものではなく、一人ひとりの価値観に強く影響を受け、形作られています」

 こう語るのは、マリオット・インターナショナル アジア太平洋(中華圏を除く)ラグジュアリー部門 リージョナル・ヴァイス・プレジデントのオリオル・モンタル氏だ。モンタル氏はさらに、「今回のレポートから、Z世代の富裕層旅行者は単にサービスの受け手となるのではなく、『旅の意味』や『ウェルビーイング』、『本質的なつながり』を求める強い思いを原動力に、ラグジュアリー・トラベルそのものを再構築していることが分かりました。ラグジュアリーの定義が細分化され変わり続ける中、次世代の旅行体験を創出する上で、こうした新たな視点への理解は不可欠となります」とコメントした。

 レポートは、「ラグジュアリーの価値が単一の理想によって定義される時代は終わり、多様な価値観の広がりによって定義されるようになりつつある」と業界の根本的な変化を指摘。旅行業界にとって今後の成功は、「画一的なラグジュアリーの定義」を追求することではなく、多様化する価値観を深く理解し、一人ひとりに寄り添ったパーソナルかつ感情に響く体験を提供できるかどうかにかかっていると結論づけている。

調査概要

 本レポートは、オーストラリア、インド、インドネシア、日本、シンガポール、韓国、タイ、ベトナムの富裕層旅行者2,800名(うち18〜29歳のZ世代1,200名を含む)を対象に実施した調査に基づく。調査対象には、主にレジャー目的で頻繁に海外旅行をする、各市場の居住者のうち上位10%の最富裕層(各市場350名)が含まれている。調査はマリオット・インターナショナル ラグジュアリー・グループの委託により、2026年4月24日から5月19日にかけて実施された。

 レポート「Beyond the Gen Z Myth and the State of Luxury Travel in APEC」の全文はマリオット・インターナショナルの公式サイトからダウンロードできる。マリオット・インターナショナルは現在、146の国と地域に30以上の主要ブランド、10,000軒以上の施設を展開している。ラグジュアリーグループポートフォリオは、ザ・リッツ・カールトン、リッツ・カールトン・リザーブ、リッツ・カールトン・ヨット・コレクション、ブルガリ ホテルズ&リゾーツ、セントレジス ホテルズ&リゾート、エディション、ラグジュアリーコレクション、JWマリオット、Wホテルの9ブランドで構成され、70の国と地域に560軒以上のホテルとリゾートを展開している。詳細はLuxury.Marriott.comで確認できる。

 
 

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