一般財団法人運輸総合研究所は4月22日、タイ・バンコクに設置するアセアン・インド地域事務所(AIRO)の研究報告会「第2回 AIROレポート」をオンラインで開催する。鉄道・観光・物流・道路公共交通の4分野について、バンコク駐在の研究員らが現地調査に基づく最新動向を報告する。参加費は無料。
バンコク駐在チームが5年分の研究成果を集約
AIROは2021年4月に開設。タイを拠点に、アセアン・インド地域の交通運輸・観光に関する研究調査や情報収集、セミナー・シンポジウムの開催などを行ってきた。開設から5年を迎えるにあたり、これまでの研究成果を改めてまとめて発信する。
報告会は2026年4月22日(水)13時から16時まで、Zoomウェビナーで配信される。
4分野の研究テーマと発表概要
テーマ1:鉄道
「高速鉄道駅周辺における都市内交通の現状と都市鉄道計画に関する調査」と題し、運輸総合研究所アセアン・インド地域事務所研究員の高松俊介氏が発表する。
アセアン・インド地域では鉄道需要の加速が見込まれる。タイではバンコク・チェンマイ間高速鉄道やレッドライン延伸など、日本企業が受注を目指すプロジェクトが多い。両路線が結節するクルンテープ・アピワット中央駅では、周辺都市開発事業も進む。
発表では、バンコクにおける事業の進捗状況とともに、ベトナムやインドの高速鉄道駅(予定地を含む)における都市鉄道・都市開発の状況を整理し、「持続可能な海外鉄道支援のあり方」について報告する。
高松氏は鉄道・運輸機構で整備新幹線の建設や都市鉄道新線調査に携わったほか、海外鉄道技術協力協会で海外鉄道調査にも関わった経歴を持つ。AIROには2024年4月に着任している。
テーマ2:観光
「ASEANを中心とした持続可能な観光の実現に向けた取組及び航空会社の貢献可能性に関する調査」を、神戸正憲主任研究員、岡田良子研究員、中村政照研究員(AIRO)の3名が発表する。
世界の主要観光地ではオーバーツーリズムや文化財への負荷が顕在化しており、国・地域により異なる課題への対応が急務となっている。インドネシア、マレーシア、フィリピンを対象に政策・課題を整理した結果を報告する。
また、日本では航空会社による地域に根ざした取組が進んでいることから、「地方と海外をつなぐ唯一の交通インフラである航空会社が果たし得る役割や貢献の可能性」についても取り上げる。
神戸氏は日本航空株式会社で客室乗務、採用、人財育成、安全管理、海外基地運営など幅広い業務に従事。岡田氏は国土交通省で運輸・観光行政に携わった。中村氏は網走市役所および観光庁での観光行政経験を持ち、AIROには2025年4月に着任している。
テーマ3:物流
「インドネシアを中心とした海ASEANにおける物流の改善に向けた調査」を、富田晃弘・AIRO次長兼主任研究員と高島稔研究員が発表する。
「海ASEAN」とはフィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイを指す。アセアン・インド地域は世界のサプライチェーンの根幹を支える地域として、物流の重要性が一層高まっている。これまでタイ・フィリピンで調査研究を重ねてきた成果をふまえ、今回はインドネシアを中心に物流改善の具体的な対応方策を報告する。ASEAN域内の物流円滑化、および日本とのネットワーク拡大も議題に含まれる。
富田氏は国土交通省での観光行政のほか、外務省経済局での経済調査、在インドネシア日本大使館での交通インフラプロジェクト支援に携わった。AIROには2023年6月に着任。高島氏は国土交通省で航空・港湾行政に従事し、空港・港湾・物流の開発に幅広い経験を持つ。同じく2023年6月のAIRO着任。
テーマ4:道路公共交通
「クアラルンプール・ジャカルタの道路公共交通及びASEAN・インド地域におけるBRTに関する調査」を、高木晋研究員(AIRO)と竹下博之研究員が発表する。
2024年度はバンコク、マニラ、デリーを対象に調査を行い、交通手段間の統合の必要性を課題の一つとして示した。2025年度はその結果をふまえ、交通手段間の統合が進むクアラルンプールおよびジャカルタを対象に、統合を支える制度・運営体制、これまでの取組、統合手段の特徴等を比較。他都市への示唆について報告する。
あわせて、アセアン・インド地域の複数都市で導入・整備が進むBRT(バス・ラピッド・トランジット)について、最新の整備状況、利用状況、導入・運営上の課題を報告する。
高木氏は1994年に運輸経済研究センター(現・運輸総合研究所)に入職し、総務部、国際部、企画部、コンサルティング部など各部門に従事。AIROには2023年4月に着任した。竹下氏は中部大学でタイ・バンコクを対象としたJICA/JST SATREPSプロジェクト「Thailand4.0を実現するスマート交通戦略」に参画(2018年10月〜2024年3月)。運輸政策研究機構(現・運輸総合研究所)では発展途上国における高速鉄道導入の可能性やASEAN地域の低炭素交通に関する国際研究プロジェクトにも従事した経歴を持つ。
プログラムの構成
開会挨拶は運輸総合研究所会長の宿利正史氏が行う(13時〜13時5分)。続いてAIROの活動状況紹介(富田晃弘・AIRO次長、13時5分〜13時15分)、各研究発表(13時15分〜15時15分)、質疑応答(15時15分〜15時45分)、総括・閉会挨拶(奥田哲也専務理事・アセアン・インド地域事務所長兼ワシントン国際問題研究所長、15時45分〜15時55分)の順で進む。
なお、プログラムは今後変更となる場合があるとしており、最新情報は運輸総合研究所ホームページで案内される。
運輸総合研究所について
運輸総合研究所は、旧運輸省(現国土交通省)のイニシアティブにより、日本の産官学の支援で1968年に設立されたシンクタンク。交通運輸および観光分野における研究調査活動や政策提言を行っている。「学術研究と実務的要請の橋渡し」を設立の理念とし、東京本部、米国・ワシントンD.C.のワシントン国際問題研究所(JITTI USA)、タイ・バンコクのAIROが一体となって広域的な活動を展開している。日本財団の助成を受けて活動を行っている。
報告会への参加申し込みは、下記URLから受け付けている(開始直前まで申込可能)。




