鈴廣かまぼこ “立ち寄り型”から脱却 観光の目的地へ体験コンテンツを強化 鈴木智博氏に聞く


鈴木社長

 神奈川県小田原市で観光施設「かまぼこの里」を展開する老舗かまぼこメーカー、鈴廣かまぼこ。創業から161年の歴史を誇る同社で昨年9月、鈴木智博常務が第11代の社長に就任した。新社長に観光事業を中心に今後の展開を聞いた。

――社長就任から約半年。

 改めて強く感じるのは、多くの取引先とお客さまに支えられているという事実だ。われわれにはこれらの方々に向けて果たすべき使命がある。責任を重く感じているところで、しっかりと取り組まなければならないと、思いが一層深まった。

――今後の経営方針と新たな事業展開について。

 市場環境が大きく変化している。コロナ禍を経て、団体・大人数型の旅行形態が縮小し、さらに運輸業界の労働時間に関わる問題、いわゆる「2024年問題」により、当社の施設に立ち寄る長距離のバスツアーが成立しにくくなっている。こうした外部環境の変化を受け、「今までと同じやり方では通用しない」との認識のもと、”立ち寄り型”の観光施設から脱却し、「かまぼこの里」そのものを目的地としていただく提案へのシフトを進めている。

 具体的な取り組みとして、第一に教育旅行・体験学習のコンテンツ強化がある。海、川、里、森がコンパクトにつながる地域の特性を生かした、食と自然の循環を学ぶプログラムを学校向けに提案している。ワークシートを用意し、事前学習から工場見学、製造体験、食事、そして事後学習まで一貫して行える体制を整えている。参加した児童らがこれらの体験をまとめたレポートを新聞のようにまとめ、送ってくれるのだが、返事を出すと大変喜ばれる。そんな温かい交流も生まれている。

 第二に、地域連携による”オール小田原”の観光を盛り上げる取り組み。田植え・稲刈り体験、みそ作り体験、地引き網体験など、地域の生産者や事業者の方々と連携した多彩なプログラムを展開している。かまぼこ製造時に出る残渣(ざんさ)を肥料として活用する農家が育てたブランド米「キヌヒカリ」を、かまぼこの里のレストランで味わうという食のつながりも体感できる。さらに地元スポーツチームの湘南ベルマーレフットサルクラブとの連携により、スポーツビジネスの探究学習プログラムを高校生向けに提案するなど、教育旅行の対象年齢・テーマの幅を広げている。

――エコやサステナブルへの取り組みも積極的に進めているという。

 当社のオフィスはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証を取得している。地下水や地中熱を利用した空調、ソーラーパネル、屋上から室内へ自然光を導く集光装置など、複数のエネルギー削減の工夫を重ねることで、通常の約3分の1のエネルギーで建物を運用している。この取り組みはBtoBの視察需要も生んでいる。今後さらに間口を広げ、このエコ・サステナブルの取り組みを一般来訪者にも伝えていきたいと考えている。

――観光事業の今後の可能性について。

 首都圏からのアクセスに恵まれた当社にとって、首都圏の人口がこれから30年は増えるといわれていることもあり、今後に向けてチャンスは大きい。加えて注目するのが、AIやIoTの急速な普及がもたらす人々の心の”揺り戻し”だ。私もよく業務でAIエージェントなど、デジタルを活用しているが、「人間に戻りたくなる瞬間」がふと訪れる。デジタル化が進む世の中、誰もがそう感じていることだろう。土に触れ、季節を感じ、おいしいものを食べる。このような原体験への需要、とりわけ食への需要は絶対になくなることはない。自然と食に関わる体験を同時に楽しめる当社の取り組みは今後に向けて大いなる可能性を秘めている。

 


鈴木社長

鈴木 智博氏(すずき・ともひろ)1989年生まれ。2014年青山学院大学経営学部卒業後、商社で世界各地の魚の買い付けを経験し水産業のダイナミズムを体得。16年に株式会社鈴廣蒲鉾本店へ入社し、常務取締役企画本部長として全社のマーケティングを統括。1to1マーケティングを推進し、顧客起点での需要創造に取り組む。さらに、アスリートや地域スポーツと連携した「魚肉たんぱく同盟」を発足し、魚の良質なたんぱく質の魅力を幅広く発信している。

【観光経済新聞 論説委員 森田淳】

 
 
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