大熊氏
生管理適合証」の取得で温浴施設利用者に「安心・安全」を証明
全国水利用設備環境衛生協会(水利協、東京都台東区)は、水利用設備の衛生管理の重要性の啓発を目的に、任意団体として1995年に設立。2014年に内閣府から公益社団法人の認可を受け、肺炎などレジオネラ症を引き起こすレジオネラ属菌の増殖を抑制するための方法・技術を伝えるなど衛生管理の必要性を提唱している。会長の大熊久之氏に今春から発行する「水利用設備環境衛生適合証」を含めて同協会の取り組みを聞いた。
――レジオネラ属菌による感染症事故の過去10年間の発生件数の推移と、それに至った背景について。
大熊 感染症事故は毎年、増加傾向にあり、昨年は2413人の症例報告が上がっている。年間の死亡者はここ数年、約80人にも及ぶ。

年度別レジオネラ症例報告数
レジオネラ属菌は自然界の土中や河川などに存在する常在菌だ。土中などから舞い上がり、身近な温浴設備や冷却塔設備など循環型の水利用設備機器や、ため水の中に入ると、その適度な温度(20度~50度)により配管内の内壁のバイオフィルムに守られ、増殖する。
衛生管理上のヒューマンエラーのほか、地球温暖化による水温の上昇や、異常気象による消毒剤の消毒効果の減少なども菌の増殖や新種発生の要因だと指摘されている。
温泉など入浴施設へ需要が近年の官民挙げた観光立国の推進とともに高まり、水に対する衛生意識の向上も叫ばれている。
――レジオネラ属菌による事故発生で、施設にどのような影響が及ぶか。
大熊 事故の発生は施設運営者や作業者の衛生管理に対する過信や、清掃・衛生管理記録の不備といった知識・意識の不足が少なからず関わっている。
2023年の福岡県の老舗旅館で発生した日常清掃の不備による感染者の発生事故は大きな社会問題となり、地域社会・経済を巻き込んだ事態は記憶に新しい。
菌の発生や感染者の確認がなされた施設は保健所への届け出をしなければならず、その立ち入り調査により、発生原因によっては営業休止・停止などの処分が下される。感染者や死亡者の発生においては賠償責任を求められる。
感染症事故を引き起こすと、その緊急対応や社会への説明責任が求められるなど、施設運営に大きな影響を与えるとともに、地域の関連産業にまで影響を及ぼす可能性がある。
――レジオネラ症にかかりやすい場所は。
大熊 温浴施設をはじめ、循環機器設備、プール施設、シャワー設備、冷却塔設備などの水を利用する施設でエアロゾル(霧状の水飛沫)が発生するところ。ただ、水が対流していない箇所でも菌の発生が確認されている。
――協会における対応・対策は。
大熊 当協会は全国の保健所と連携しており、その依頼により、保健所業務の補完事業として衛生管理に関する講演や、当協会独自の資格「水利用設備環境衛生士」の資格取得に向けた講習会を開催している。
今春からは温浴施設などに向けて「水利用施設衛生管理適合証」の発行を開始する。
――「水利用施設衛生管理適合証」とは。
大熊 水利用施設において日頃の衛生管理の重要性を確認するとともに、利用者に安心・安全な施設づくりの取り組みを証明する指標の一つとして、活用が見込める。
――旅館・ホテルに向けて。
大熊 温暖化など地球環境の変化により、菌の発生・増殖など感染症事故の原因となるものは、近い将来急増することが予想され、衛生環境の維持・向上は喫緊の課題となっている。
施設1軒でのレジオネラ感染症の発生が、地域産業全体や観光業界全体の風評被害を招き、大きな経済損失にもつながりかねない。
衛生管理の実践を広く宿泊客らに理解してもらうことは、施設の安定した経営の基盤作りにもなる。今春から当協会が発行する「水利用施設衛生管理適合証」を取得し、経営の安定、ひいては観光立国の実現にも貢献してほしい。

大熊氏




