学校間交流では民族衣装をまとった生徒たちから歓迎を受けた
教育旅行は、思い出づくりにとどまらず、生徒の成長を促す重要な学びの機会だ。自ら考え、仲間と協力して行動する中で、主体性や判断力が育まれる。こうした力をどう引き出すか。学校の実践事例から考える。
自然、文化、生活環境など五感で本物に触れて知る
「独立自彊」「社会有為」を校是に、幼稚園から大学院までの総合学園を形成する追手門学院(大阪府茨木市)。2019年、追手門学院大学の総持寺キャンパス開設と同時に、追手門学院中・高等学校(木内淳詞学校長)も新たな校舎での学びをスタートさせた。同校は移転を前に、目指す教育の方向性や用意すべき学びの機会などを抜本的に検討。従来の進学実績偏重の教育から脱却し、子どもたちが安心して学べる、楽しんで学べる、自ら学べる学校の実現に取り組んでいる。
生徒たちが自らと向き合い、どのような形で社会とつながっていくのかを考えるために、同校ではさまざまな体験を通して五感で感じたり学んだりすることを重視。特に「本物」に触れることに重きを置いている。「例えば学校で大人に接するといっても、教員という閉鎖的な社会の大人でしかない。学校という閉じた環境ではなく、自然や文化、社会問題などあらゆる本物に接して、五感で知る。そうすることで視座を高め、価値観を広げるきっかけをつくりたいと考えている」と話すのは、学習統括委員長も務める辻本義広教頭だ。
同校が実施するスリランカへの体験旅行も、「本物を五感で感じて知る」ことが一つの大きなテーマ。従来型の北海道への修学旅行や旅行先での社会課題解決に全力を傾ける探究型の旅行を経て、24年から新たに始めた。「体験旅行の行き先は、学校の広報面でもインパクトが強い部分。本校のミッションとビジョンに合わせて、本物体験や『共創と対話』などの要素を持ちつつ、目新しさのある『おもろい』旅行先を求めていたところ、旅行会社からスリランカに下見に行ってみないかとの提案を受けた」と辻本教頭は振り返る。
スリランカは、アジア諸国でよく見られるような近代都市がある一方で、車で30分程度走れば、トゥクトゥクや満車の路線バスなど“THEアジア”な情景、さらに車で4時間程度移動し郊外へ行くと、ゾウや水牛が道を横断するようなエリアにも行ける。また世界遺産もある。第2次世界大戦後に当時の大統領が対日賠償請求権の放棄演説をしたことなど、親日感情も強い。さまざまな「本物」に触れられるのはもちろん、費用面や他校が行っていないことなどから、スリランカを行き先の一つに選んだ。
同校では1学年約500人のうち、スポーツコース、創造コース以外の特選SSクラス、Ⅰ類、Ⅱ類に所属する400人超が高校2年生で体験旅行を行う。昨年はスリランカと韓国・対馬方面に分かれて実施し、約300人がスリランカで体験旅行を行った。スリランカコースは、5泊6日の旅程を昨年9月16~21日他、3班3日程で実施。1日目はスリランカまで移動、2日目は日本大使館訪問とコロンボ市内観光、3日目は現地の学校との学校間交流、4日目は世界遺産・シギリヤロックの見学の後、ビレッジサファリでの農村体験とジープサファリ体験、5日目は世界遺産・ダンブッラ石窟寺院の見学と買い物、帰国便への搭乗という旅程だ。

ジープ・サファリで野生のゾウを目の当たりにした
このうち学校間交流では、高等学校や日本語学校を訪問。スリランカの民族舞踊で歓迎を受けたり、カレーランチを一緒にとったりした。
日本からも人気のスナック菓子を持っていきアイスブレイクに使ったほか、折り紙や箸などを持ち込んで体験してもらった。

学校間交流では民族衣装をまとった生徒たちから歓迎を受けた
主に片言の英語でのコミュニケーションとなったが、現地の生徒の日本への羨望(せんぼう)や関心の高さなどが追手門の生徒たちの交流への意欲を高めさせ、積極的に交流する姿が見られたという。「生徒の感想でも学校間交流の満足度が非常に高かった。積極性、協働性の部分で予想以上に成果があった」と辻本教頭。日本の生活や環境が当たり前でないことを知れたことも成果の一つとして挙げた。

漢字や音楽、おもちゃを用いて互いの文化を伝え合った
また全旅程を共にした現地バスガイドの人間的な温かさも生徒たちの心に響くものがあったようで、一緒に写真を撮る生徒や別れ際に涙を流す生徒もいたと辻本教頭は振り返った。
旅行後には、グループ単位で体験旅行新聞を制作し、まとめとした。毎食出てくるカレーのバリエーションの豊富さや現地の文化に合わせカレーを右手で食べた体験、数百頭のゾウが集まる「エレファント・ギャザリング」などを目の当たりにしての感想など、記事の内容はさまざま。五感で本物を知っての衝撃や、体験を起点に調べた内容などが詰まったものとなった。

農村体験でも昼食は多彩なカレー料理を体験
アンケートによるとスリランカコースの生徒たちの満足度は非常に高く、先輩から話を聞いた後輩たちもスリランカコースを希望する生徒が多いそうだ。
理想の修学旅行について辻本教諭は「単純な経験学習ではなく、体験を受けてのリフレクションがある、対話と共創が兼ねられているもの」と話し、スリランカ体験旅行もかなり理想的な旅行だったと評価した。その上で、生徒たちが行き先決定から全てにオーナーシップを持って決める旅行も取り組んでみたいものの、教員側が求める教育効果などが盛り込まれづらいことなどを課題に挙げた。
同校では来年度以降もスリランカコースを設定する予定。さらにアイスランドコースも追加する方針という。追手門流の本物を五感で知り、学ぶ旅行は、これからも進化し続ける。

辻本義広教頭




