「その映画が観たくなる、その場所に行きたくなる」。そんな思いを掻き立てる、日本のロケ地ガイドブックの決定版が登場した。大ヒット映画の舞台やロケ地を100カ所、豊富な写真とともに紹介。監督や関係者への取材を元に、なぜそこがロケ地に選ばれたのかといったトリビアもまとめられており、物語の世界をより深く味わうことができる一冊だ。
映画のからくりが見える専門的な視点
本書は単なるロケ地紹介にとどまらない。著者は「映画の舞台&ロケ地という切り口から映画を深掘りすると映画のからくりが見えてくる」と語る。その一例として、「映画に映し出される元の空間には8つある」という豆知識を紹介している。「スタジオのオープンセット」や「ステージのセット」といった実在空間から、「VFX」「バーチャルプロダクション」などの仮想空間まで、映画製作者がどのように世界観を創り出しているのかを知ることができる。こうした専門的な視点が、映画鑑賞とロケ地巡りの両方を何倍にも面白くしてくれるのだ。
ジャンル別で楽しむ名作と名所の旅
本書はアニメ、ジブリ、ヒューマンドラマ、恋愛、ホラーなど15のテーマ(ジャンル)で構成されており、読者の好みに合わせて読み進めることができる。
例えば、アニメーションの舞台として『ラブライブ!サンシャイン!!』では、主人公・高海千歌の実家のモデルとなった静岡県沼津市の「安田屋旅館」が登場。ここは太宰治が『斜陽』を執筆した宿としても知られ、国の登録有形文化財にも指定されている。
ジブリ映画のテーマでは、『千と千尋の神隠し』に登場する湯屋「油屋」の参考にされた場所の一つとして、愛媛県の「道後温泉本館」が紹介される。宮崎駿監督自身が「道後温泉は確かに入っている」と語り、絵コンテにも「道後」という文字がはっきりと書かれていたという。また、『崖の上のポニョ』の舞台の参考になった広島県の「鞆の浦」では、監督が崖の上の民家に2ヶ月間滞在したエピソードも明かされる。
ヒューマンドラマの舞台としては、『Dr.コトー診療所』の架空の島・志木那島のロケ地である沖縄県の「与那国島」や、『八甲田山』で会議室シーンが撮影された「青森市森林博物館」など、物語の感動を追体験できる場所が並ぶ。特に『幸福の黄色いハンカチ』のラストシーンの舞台、北海道夕張市の「五軒長屋の炭鉱住宅」は、「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」として整備され、訪れた人々の幸せへの想いが詰まった空間となっている。
他にも、『ちはやふる』の“かるたの甲子園”として知られる滋賀県「近江神宮」、『翔んで埼玉』で巨大な地下空間がアジトとして使われた栃木県「大谷資料館」、『るろうに剣心』で明治の面影が残るロケ地となった熊本県「法の館(旧三角簡易裁判
47都道府県を網羅、充実のコラムも
本書の魅力は、紹介するロケ地が47都道府県すべてを網羅している点だ。また、「ゴジラゆかりの地」「心をゆさぶる映画の橋」「一度は泊まりたい、映画ゆかりの宿」「世界遺産・国宝級! 寺院建築でロケ撮影された映画」といった13のコラムも収録されており、様々な切り口で映画と旅の魅力を伝えている。
著者の谷國大輔氏は、一級建築士であり、早稲田大学大学院を修了後、大手建設会社や広告代理店などを経て株式会社ジムービーを設立。映画による観光・まちづくりに携わるプロデューサーとして活躍している。建築の専門家としての視点と、映画への深い愛情が本書の随所に感じられる。
四六判256ページ、本体2000円+税。
発行=学芸出版社。





