【高校教育旅行特集2026】教育旅行レポート 県立平塚高等学校(神奈川県平塚市) 九州方面(長崎・福岡)


地元漁師に教わる船釣り体験(写真提供:まつうら党交流公社、写真の生徒は同校と関係ありません)

 教育旅行は、思い出づくりにとどまらず、生徒の成長を促す重要な学びの機会だ。自ら考え、仲間と協力して行動する中で、主体性や判断力が育まれる。こうした力をどう引き出すか。2校の実践事例から考える。

漁村・農村の営みを向き合う 民博体験や方言交流も

 神奈川県の湘南エリア、海と川、山に囲まれた自然豊かな地にある県立平塚工科高等学校(塩浦健吾校長、平塚市)。2003年に平塚工業高校と平塚西工業技術高校の再編統合により設置された全日制高校で、前身の工業高校を含めると87年の歴史を持つ。総合技術科を置き、科学技術の発展を担う人材育成に取り組んでいる。

 一般的な工業高校では入学前に専門分野を選択するが、同校では1年次に工業の基礎を学び、2年次から「系」と呼ばれる専門科目を選択する仕組みを採用。基礎的な学びを踏まえた上で、自身の興味や適性に応じた分野を選択できるのが特徴だ。 

 専門科目は県内で唯一、自動車の整備や電気装置を学べる「自動車系」をはじめ、「機械系」「電気系」「環境化学系」「総合技術系」の計5分野を設置。3年次からはさらに七つのコースに分かれて専門性を深める。就職希望者の内定率は100%と高い実績を誇り、2年次に上級学校を訪問するなど、専門学校や4年制大学への進学を目指す生徒の指導にも力を入れる。

 こうした専門分野中心の学習に日々打ち込み、進路先も地元志向が強い生徒が多いことから、2年次の修学旅行では「普段とは異なる環境に身を置き、地域の人々との交流を通じた体験」を重視。2年前に実施し生徒から好評だった長崎県松浦市での漁村・農村体験と民泊体験を中心に構成し、市内や福岡への訪問も組み込んだ。

 修学旅行は11月13日から16日の3泊4日で実施し、2学年135人(7クラス)が参加。学期末試験を控えていたことや感染症の流行状況も考慮し、事後の特別な学習は設けず、現地での体験を通じて学ぶことを重視した。

 修学旅行の目玉は、長崎県北部に位置する松浦エリアでの体験プログラム「松浦党の里ほんなもん体験」だ。一行は2日目の14日に松浦に入り、事前にクラスごとに選択した福島、今福、青島、生月、田代の5地区に分かれ、2日間にかけて体験活動を行った。


普段とは異なる環境に身を置き、地域の人々の生業にも触れた

 松浦は伊万里湾に面し、日本一のアジの水揚げ量を誇る漁業の盛んな地域であることから、田代地区を除く4地区では地元漁師とともに船に乗り込み、船釣りや港釣りを体験した。生徒たちは地元漁師の指導を受けながら、自らさおを握って魚を釣り上げ、釣れた魚は自分で針を外す体験にも挑戦した。普段漁師が使うポイントに案内してもらい、魚との駆け引きを楽しんだ。現役の漁師との貴重な体験で、地域の生業への理解も深まったようだ。


地元漁師に教わる船釣り体験(写真提供:まつうら党交流公社、写真の生徒は同校と関係ありません)

 田代地区での農業体験では、ジャガイモの袋詰め作業を体験した。地域の人々から作業の手順や栽培の工夫を教わりながら作業に取り組み、農業の大変さや食の大切さを実感した。

 松浦市に隣接する佐世保市江迎町で古くから伝わる縁起物「えむかえ繭玉」作りも行った。ちりめん生地を球状の発泡スチロールに埋め込みながら模様を作るもので、発泡スチロールに刻まれた溝に布を押し込んでいく。工科高校ならではの手先の器用さを発揮する生徒も多く、「実習で身に付けた丁寧な作業や手先の感覚が体験でも生きていた」と水田智大教諭。


えむかえ繭玉作りに挑戦(写真提供:まつうら党交流公社、写真の人物は同校と関係ありません)

 14日の体験学習後は、松浦の受け入れ家庭で民泊体験を行った。一つの家庭に最大5人の生徒が滞在し、郷土料理づくりや食事、日常生活をともにしながら交流を深めた。体験で釣った魚が振る舞われたり、日本の棚田百選に選ばれた「土谷棚田」まで車でドライブし、満天の星を一緒に眺めたりするなど、民泊ならではの温かいもてなしに触れた。

 また、生徒の関心を大きく集めたのが県北部特有の方言だ。「~ばい」「~たい」といった語尾が特徴で、言葉の意味を尋ねるなど、地域の文化に興味を示す生徒の姿も見られた。

 このほか、体験プログラム前の1~2日目には平和学習として長崎市の平和公園と原爆資料館を訪問したほか、班ごとに市内を巡る自主研修の時間も設けた。3日目の午後からは福岡に移動し、太宰府天満宮の参拝、市内での自主研修も行った。

 修学旅行を終え、川戸梨紗子教諭は「普段自分からの発言が控えめな生徒でも、修学旅行での出来事を積極的に語る姿が印象的だった」と振り返る。生徒たちからも「普段の生活とは真逆の体験ばかりで刺激的だった」「いつかこういった場所で暮らしてみたい」と、漁村・農村での暮らしに興味を示す声もあったという。

 今後は、交通費や宿泊費の値上がりと修学旅行費の上限との板挟みなど、公立高校ならではの制約がある中で、どこまで生徒にとって意義のある修学旅行を実現できるかが課題となっているという。酒井崇教諭は「課題は多いが、修学旅行を通じて、生徒たちに少しでも前向きな変化が生まれてくれればうれしい」と期待を示した。


酒井崇教諭


水田智大教諭

 
 
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