山下氏
訪日外国人観光客に向けて、相撲や茶道などの日本文化体験を提供する事業を起こした山下藍子氏。起業に至った背景や、事業を通して実現したいことなどを聞いた。
国際関係の仕事に興味 全員で文化体験作る楽しさが魅力
――この業界を目指したきっかけは。
バックパッカーとして35カ国ほど旅した経験が大きいです。その国を好きになるかどうかは、そこでどんな人と出会ったかに大きく影響されると旅を通して感じました。日本に来る外国の方にも「日本はいいな」と思ってもらいたい。文化体験を通してそのタッチポイントになりたいと思ったのがきっかけです。
――国際関係の仕事に興味があった?
大学進学時には、国連などの国際機関で働きたいという気持ちが強くなっていました。この時点で将来起業することも視野に入れ、北海道大学経済学部に進学しました。在学中スイスに留学にも行きましたが、コロナ禍で強制帰国に。10カ月いるはずが半分くらいで終わってしまいました。
大学卒業後は、民間企業で人材・店舗・金銭管理や人材採用の営業などを経験しました。幅広い業務を経験したことで、起業するための基本スキルが身に付きました。
――創業当初は。
最初は自分で「これが売れそう」と考えたもので勝負しましたが、うまくいかず失敗。自己満足の商品では売れないということを痛感しました。
そこからは東京や大阪の旅行会社を見つけられる限り当たり、数千件への電話がけ、数百社への企業訪問をしました。ニーズを徹底的にヒアリングし、求められているものを作る。今でも営業部で毎月20~30社ほど訪問し、そのサイクルを続けています。
――現在の組織体制は。
営業、手配、現場と役割が分かれ、多様なバックグラウンドを持つスタッフが活躍しています。特に営業、人事などは、さまざまな人生経験を積んでこられた60代、70代のシニアの方々に活躍いただいています。こうした方々は何が起きても動じないですし、どっしりと構えて対応してくれます。本当に頼りになりますし、勉強させていただいています。
20~30代の方は、主にプロジェクトのマネジメントなどを担当してもらっています。今はまだ事業を拡大させていかなければならない時期なので、即戦力として活躍してくれています。
――うれしかったエピソードはありますか。
京都で茶道体験をしてくださった30人ほどのツアー客の方々が、後日、「10日間の日本旅行の中でThird Deningの体験が一番楽しかった」と言ってくれたことです。
私たちの仕事は、旅行会社の方やパートナーである講師の先生方など、皆で一つのものを作り上げる仕事です。最近は100人、千人といった大人数のご依頼も多いので、プロジェクトを皆で作り上げるという感覚で、とても楽しいです。
――今のお仕事の魅力はどこにあると思いますか。
やはり、人と人とをつなぐことができる点です。人が直接つながることで、温かさや豊かさが伝わる。そして、旅行会社さん、パートナーさん、お客さま、皆が一致団結して何かを成し遂げる。これは他の業界にはない、この業界ならではの大きな魅力だと思います。
異文化交流で世界平和に貢献 今後は海外展開も
――世界情勢が不安定な今、国際交流の重要性が高まっています。
国が違っても、人と人とのつながりや結びつきがあれば、お互いを思いやり尊敬し合える関係が作れるはずです。
近い国同士だからこそ誤解が生まれることもあります。他国の人のふるまいを見て「マナーがなっていない」と思ってしまうことがあっても、それは互いの文化を知らないだけかもしれません。人と人とのコミュニケーションがあれば、そうした問題は解消されていくはずです。
私の活動はまだ小さいかもしれませんが、この「人と人とのつながり」を通して、世界平和に貢献していきたいと思っています。
――今後の目標は。
国内事業の拡大はもちろん、海外展開もしていきたいです。欧州に拠点を置くことも考えています。最終的には日本と海外をつなぎ、世界平和に貢献できる人材になりたいです。
――お忙しい毎日だと思いますが、どのように気分転換されていますか。
バックパッカーとして旅をすることです。最近は国内のゲストハウスに泊まることも多いのですが、そこにいる外国の方と仲良くなることで、新しいアイデアのヒントがたくさん見えてきます。今何がはやっているのか、どんなことに興味があるのか、生の情報を得られる貴重な機会です。
最近気づいたのは、ゲストハウスにいる外国人の多くが日本のいちごを食べていること。彼らに聞くと、日本のいちごは他国と比べて格段においしいそうです。傷みやすく輸出が難しいことを考えると、日本でいちごを食べる体験には高い価値があるかもしれない。こうした気づきが、次の新しいコンテンツ開発につながっていきます。常にアンテナを張って、少し視点をずらしながら新しいものを探しています。

山下氏
【聞き手・水田寛人】




