住民主体の基盤生かし戦略的な観光地経営へ
湯河原町では、観光が地域経済を支える基幹産業となっております。首都圏から至近に位置し、静謐(せいひつ)な環境と豊かな自然に恵まれた湯河原温泉は、夏目漱石や芥川龍之介など名だたる文豪たちに愛されてきた歴史を有し、これらの風情は、本町の大きな魅力となっております。しかしながら、一方で、企業保養所の減少や旅館の後継者不足等の影響により、宿泊客数は、ピーク時の120万人から現在は約60万人へと減少し、観光地としての再生が大きな課題となっておりました。
こうした状況を踏まえ、湯河原町では、「閑雅(かんが)」や「静謐さ」といった地域固有の本質的な価値を見つめ直し、現代のニーズに即して磨き上げる取り組みを進めてまいりました。
具体的な取り組みの一つは、温泉場エリアの景観再生です。湯元通りと呼ばれる温泉街の中心地では、石畳舗装や街路等整備、建築物の修景を進め、落ち着いた街路空間の創出に取り組んでまいりました。
また、空き家再生では、昭和初期の建物を活用した飲食店の開業など、新たな魅力づくりを進めてまいりました。さらに、温泉場エリアの核となっていた万葉公園は、Park―PFI手法を導入し、自然環境と調和した魅力的な空間へと再編いたしました。カフェやコワーキングスペースも整備することで、滞在機能の向上を図り、新たなにぎわいを創出するとともに、従来の通過型から滞在型への利用形態の転換が進むなど、地域全体の魅力向上に寄与しております。
そして、これらの取り組みを支えているのは、地域一体となった連携体制であり、住民、行政、観光事業者が一体となった協働体制と来訪者を温かく迎える「おもてなしの心」が町民に広く共有されていることが基盤となっているものと思っております。
近年は、「コト消費」を重視した地域回遊の促進にも力を入れており、温泉街のみならず、駅前商店街なども巻き込み、手作り市やイベントの開催により、回遊性を高め、滞在時間の延伸と地域経済への波及効果を図っております。また、映画やドラマの撮影誘致によるロケツーリズムを推進しており、地域の魅力を発信し、新たな来訪動機の創出にも取り組んでおります。
加えて、将来の安定的な財源確保のため、この4月から宿泊税の導入をいたしました。観光による収益を受け入れ環境整備や観光資源の磨き上げに再投資し、持続的な観光地経営の確立を図ってまいります。
静謐な環境と人の温かさ、そして住民主体のまちづくりという基盤を生かしながら、戦略的な観光地経営に転換できるか。湯河原温泉は今、再生から次の成長段階への歩みを進めてまいります。

宮下氏




