愛媛県大洲市 地域存続に向けDMOなど行動計画策定 観光起点に関係人口拡大


大洲市の街並みと肱川

大洲市の街並みと肱川

 地域を存続させるには、観光誘客、観光消費の拡大だけでは足りない―。愛媛県大洲市は、民間、行政、金融機関が連携し、城泊や分散型ホテルを成功させるなど、新たな観光地域づくりの先進地として注目されてきた。しかし、地域の根本的な問題である人口減少には歯止めがかからず、将来、自治体としての存続には不安を抱えている。こうした課題を直視し、解決策を探ろうと、地域のDMOであるキタ・マネジメントなどは、観光を起点に、ものづくり、教育、健康にもテーマを広げる関係人口の拡大戦略を打ち出した。

観光だけでは街は守れない

 「歴史的資源を観光活用している今の取り組みだけで、この先、この街を守っていけるのだろうか。答えはノー。現実は甘くない。このまま観光の『一本足打法』を続けていたのでは、将来、大洲市は本当に消滅してしまうかもしれない。そんな危機感を持っている」

 大洲市の地名「喜多」にちなむ、地域のDMO、キタ・マネジメントの高岡公三代表理事は、3月26日に東京都内で開いた記者発表会でそう語った。

 キタ・マネジメントは2018年に設立。城下町に残る古民家など39棟を修復し、宿泊施設や商業施設に再生した。事業者を誘致し、分散型ホテルや城泊を立ち上げ、大洲を滞在型の観光地に転換させた。観光客の評価は高く、市民の地元への誇りも高まった。

キタ・マネジメントの高岡氏
キタ・マネジメントの高岡氏

 ただ、人口減少、少子高齢化は止まらず、若者は市外へ流出、企業の人手不足は深刻さを増す。学校の統廃合も進み、大型商業施設も撤退して経済は縮小している。

 大洲市の現在の人口は約3万8千人だが、愛媛県の推計では、2060年に約1万6千人に減少すると予測されている。若年女性人口の減少が進むと予想されるなど、民間有識者でつくる「人口戦略会議」の発表によれば、「消滅可能性自治体」に分類されている。

◆キーワード 消滅可能性自治体
 民間有識者でつくる「人口戦略会議」は2024年4月、地方自治体「持続可能性」分析レポートを発表した。若年女性人口の減少により出生数が低下することから、20~39歳の女性人口が2020年から2050年にかけて50%以上減少する自治体を「消滅可能性自治体」に分類した。全国1729自治体を分析した結果、全体の約4割を超える744自治体が「消滅可能性自治体」とされた。

交流人口の次に関係人口

 人口減少などの問題を直視し、大洲市を「再生し続けるまち」にしようと、これまで大洲の観光まちづくりに連携して取り組んできたキタ・マネジメント、伊予銀行(松山市)、バリューマネジメント(大阪市)の3者は、「おおず未来のまちづくり構想」を策定し、2030年に向けた行動計画「OZU 555 PROJECT」(以下、プロジェクト)をスタートさせた。

 「交流人口の次のステップは関係人口の増加。通過型から着地型となり、お金の落ちる街になった。さらに広げれば、関係人口が出てくる。関係人口を創出し、経済の拡張、価値の上昇、人材の循環、未来設計につながるグランドデザインをつくった」。分散型ホテルの運営などを担うバリューマネジメントの他力野淳代表取締役はこう語った。

 プロジェクトでは、少子高齢化による人口の「自然減」を許容しつつも、地域の強みを生かし、交流人口にとどまらない、関係人口を拡大することで、若者などが流入する「社会増」を追求する。関係人口拡大の軸とするのは、観光、ものづくり、教育、健康/ウェルネス、AI(人工知能)の五つの分野だ。

 観光は、地域外の人と大洲市が最初に接点を持つ入り口として重視していく。高付加価値化、需要の平準化、人材育成、2次交通網の整備などに取り組む。24年度に33億円だった観光消費額を30年度に55億円にする。

 ものづくりでは、事業者の稼ぐ意欲を喚起し、外部からの新規参入を促進する環境づくりに取り組む。マッチングイベントなどを開催し、移住や起業を含む、ものづくり関係人口を拡大する。

 教育では、進学や就職で一度、地元を離れた若者が大洲に戻る流れをつくり、市民の地元への誇りを醸成するため、街全体を「教室」にする。中高生には地域での学びを、他の都市に転出した大学生には大洲と接点を持ち続ける機会を創出。社会人向けには、リスキリングと地域貢献を統合する仕組みを構築する。

他力野氏
バリューマネジメントの他力野氏

身近な課題に向き合い、希望が持てる街に

 キタ・マネジメントの高岡代表理事は「人口減少の流れは止められないかもしれない。しかし、少ない人口でも、自分たちの未来に希望が持てる街をつくることができれば、生き残り続けることができる。そのためには、観光だけではなく、身近な暮らしの課題に正面から向き合う必要がある」と語った。

 プロジェクトの2030年の主なKPI(重要業績評価指標)は、次の3項目「555」を設定した。(1)五つの先進事例=日本初の城泊、日本最大級の分散型ホテル、持続可能な観光の認証機関「グリーン・デスティネーションズ」の表彰で世界1位(文化・伝統部門)に続く、成功モデルを創出する(2)50の事業誘致・創出=地域資源を生かし、新たな価値を生む企業、起業家を累計50事業者誘致・育成する(3)500人の雇用創出=地域を支える担い手を創出し、若者が「戻ってきたい、関わり続けたい」と思える質の高い職域を確立する。

 関係人口を創出する仕組みでは、個人、法人を問わず幅広く「共創パートナー」を募集する。事業進出や拠点開設の第一歩として、居住地を問わず誰でも参画できるバーチャルコミュニティ「大洲カンパニー」も開設した。大洲の価値を発信し、来訪者と地域をつなぐ人材「大洲アンバサダー」も認定する。

 その上で「第二市民」制度の確立を目指す。年2回以上の来訪や遠隔でのプロジェクト参画などの要件を満たす人々にデジタル市民証を発行し、住民に準ずる特典を受けられる仕組みを構築していく。

 プロジェクトを策定した民間3者では、地域の理解を得て具体的な施策を実践したい考え。東京都内で開かれた記者発表会には、大洲市の二宮隆久市長が出席し、民間からの提案、地域活性化に期待を寄せた。大洲市は、27年度から9カ年の第3次大洲市総合計画を策定中で、まちづくりの方向性を検討している。

【観光経済新聞 編集長 向野悟】

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