「旅館は日本の伝統文化を表現し継続している業種」 台日交流の新たな節目に
日本旅館国際女将会(事務局・観光経済新聞社)は3月17日、「日本旅館国際女将サミット」を台湾中部の日月潭で開いた。日本の10温泉地から11人の女将が参加し、日本旅館と日本の温泉地の魅力をPRした。
台湾内からは台湾観光協会、中華民国温泉観光協会、旅行会社、ジャーナリスト、インフルエンサーらが出席。合計70人以上が出席した。
同会と長年の交流がある陳盛山氏(中華科技大学航運輸管理研究所教授、元台中市政府観光局局長・元高雄市政府観光局局長・元華信航空会長・元中華航空専務、元桃園空港取締役、元台湾交通部観光局局長)も駆けつけた。
冒頭、同会の創始者である一般財団法人日本ホテル教育センター理事長の石塚勉氏と同会会長の長坂正惠氏(下呂温泉しょうげつ女将)が主催者としてあいさつ。続く来賓あいさつでは、開催会場を提供した日月潭温泉力麗ウィンダムホテル社長の楊竫如(ルイーザ・ヤン)氏、中華民国温泉観光協会理事長の李浩瑋(ハオウェイ・リー)氏が登壇した。
イベント内のティータイムでお菓子の提供をスポンサードした、台湾の和菓子製造・販売会社社長の翁羿琦(アイチー・ウェン)氏と、金賞レストランのオーナーシェフでゼリーやクッキーなどを製造・販売もしている宋安妮(アンニー・ソン)氏も紹介された。
会場では、各県、各温泉地の観光協会・旅館組合などから提供を受けた繁体字パンフレットやギフト類を大量に配布。会場内の壁面は日本の観光PRポスターで埋め尽くした。
日本から参加した女将は、長坂正惠氏(岐阜県下呂温泉・しょうげつ)、村田知世氏・村田和華子氏(茨城県五浦温泉・五浦観光ホテル)、岡崎純子氏(山形県蔵王温泉・高見屋旅館)、須賀紀子氏(北海道登別温泉・滝乃家)、山本美姫氏(静岡県下田温泉・黒船ホテル)、若松佐代子氏(福島県いわき湯本温泉・雨情の宿新つた)、八木澤美和氏(栃木県鬼怒川温泉・あさやホテル)、下竹原美穂氏(鹿児島県指宿温泉・指宿白水館)、松本富子氏(兵庫県宝塚温泉・紅葉館別邸あざれ)、松崎久美子氏(熊本県黒川温泉・ふもと旅館)の11名。
同会賛助会員で元旅館女将の中村みさ子氏(元東京都鴎外温泉・水月ホテル鴎外荘)と國米由公子氏(元熊本県阿蘇温泉・阿蘇の司ビラパークホテル&リゾート)も参加した。
サミット開催日の午前中には、日本から参加した女将ら向けの特別プログラムとして、台湾紅茶の達人「アッサム・梁煌義」氏(=渡邊農園執行長)による紅茶教室が開かれた。
本サミットは、台湾で温泉女王(SPA LADY)として有名なジャーナリスト、楊麗芳(ウィンディー・ヤン)氏や、日月潭温泉力麗ウィンダムホテル社長の楊竫如(ルイーザ・ヤン)氏らの全面協力により実施された。

鏡開き
邵族の祈福儀式と鏡開きで開幕

邵族(サオ族)
午後3時30分、司会の楊麗芳(ウィンディー・ヤン)氏が開会を宣言し、サミットが始まった。
開幕の最初に、日月潭に暮らす台湾先住民族・邵族(サオ族)による祈福儀式が約10分間にわたって執り行われた。本行事の成功、来場者の平安、台日友好交流の発展を祈願するもの。
司会の楊麗芳氏は、邵族の文化について「台湾には16の原住民族がある。邵族は白い鹿を追いかけて日月潭までたどり着いたという伝説を持つ民族だ」と参加者に説明した。
邵族の儀式に続き、日本の伝統儀式「鏡開き」が執り行われた。酒槌の参加者は、石塚勉氏、長坂正惠会長、須賀紀子女将、楊竫如董事長(社長)、李浩瑋理事長の5名。鏡開きに先立ち、石塚氏が「同じ動作を3回繰り返し、3回目に全員で一緒にバンとやる」と日本の慣習を来場者に紹介した。
さらに、宋安妮シェフから長坂会長へフラワーゼリーが特別に献呈された。

フラワーゼリーへの入刀 長坂会長(左)と金賞シェフの宋安妮(アンニー・ソン)氏

主催者あいさつ
「台湾に初めて来てから20周年」 石塚勉氏

石塚理事長
石塚氏は、日本旅館国際女将会の設立の経緯から語り起こした。
「30年前の1995年に日本旅館国際女将会を立ち上げた。なぜ女将会かというと、世の中を見渡して、その国の文化であり、現実の営業体の中に生きている業種というのはそれほど多くない。その点、旅館というのは日本の伝統文化を表現し継続している業種だ」と述べた。
また、日本政府が2003年に観光立国政策を打ち出した際に、旅館業界として貢献しようと会の活動をさらに活発化させて経緯も紹介。「21カ国を回り、各地で約100名のお客さんを招きながら、こういうセミナーを開いてきた」と振り返った。
台湾との交流については「当会の台湾初訪問は今からちょうど20年前」と説明。「今回のイベントは、日本旅館国際女将会を作ってから30周年、台湾の初訪問から20周年の記念イベントとして企画した」と節目の年であることを強調し、2018年に台中市政府観光局長(当時)の陳盛山氏に招かれて訪台したことへの感謝も述べた。
さらに「旅館は全国に約4万軒弱あるが、当女将会のメンバーの人たちは、その地方地方において有力な企業群として存在している。各地域で日本の伝統文化、そして地域雇用を守っている。。ぜひとも皆様の応援をよろしくお願いしたい」と呼びかけた。
「台湾は昨年676万人が訪日」 長坂正惠会長

あいさつする長坂会長と司会の楊麗芳(ウィンディー・ヤン)氏
長坂会長は「本日はお忙しい中、大勢の皆様にお越しいただき、本当にありがとうございます」と謝辞から始めた。
日本に発生した数々の災害に際し、いち早く支援を届けてくれた台湾への感謝を述べ「今日は震災のあった福島から、そして隣接する山形、茨城、九州は熊本、鹿児島から元気に女将たちが来ています」と紹介した。
日本旅館国際女将会の活動について「1995年の設立以来、旅館おかみの二道を国際化ということで、外国人旅行者の拡大促進に努めて活動を続けてきた。21カ国60都市を訪問させていただいた」と説明。
台湾との縁については「2005年、女将イン台湾として初めて来台し、2018年には台中フローラ世界博覧会(台中花博)を見学させていただいた」と振り返った。台湾からの訪日客については「当時は1万人にも満たない少数だったが、昨年2025年には676万人のお客様に日本に来ていただくことができた」と述べた。
「旅館の女将はジェネラルマネージャーでもコンシェルジュでもない。〝おかみさん〟の気持ちでご来館くださるお客様をおもてなししようと考えているのが女将だ。この後、各地から参った女将たちが皆様にその地方地方のプレゼンテーションをさせていただく。本日ここでいただいたご縁と絆が、これからの台湾と日本の大きな、そして太い架け橋となりますように、深く長く続きますことを祈って、ご挨拶とさせていただきます」と述べた。

来賓あいさつ
楊竫如氏(日月潭温泉力麗ウィンダムホテル社長)

日月潭温泉力麗ウィンダムホテル社長の楊竫如(ルイーザ・ヤン)氏

日本旅館国際女将サミットの会場となった日月潭温泉力麗ウィンダムホテル
楊氏は、女将を「単なる経営者ではなく、目の前の迎え入れからどのような料理か、部屋のどこかにも、日本の文化が最も細密で感動した場所を見ることができる存在だ。旅館の玄関からお出迎え、部屋の中の品々から食事の出し物まで、一点一点におかみさんのおもてなしが宿っている」と表現した。
「今回、台湾の温泉と日本の温泉が交流の場を持てたことに感謝している。日月潭=ラルー(Lalu)温泉という名でこれを機会に、日本に、そして世界に日月潭の温泉の魅力もお伝えしたい」と述べた。
李浩瑋氏(中華民国温泉観光協会理事長)
李氏は「中華民国温泉観光協会の会員は、全台19箇所の温泉地にある。当地の温泉会社以外にも温泉業者も多くいる」と紹介。「皆さんにぜひ台湾の19箇所の温泉地にいらしてください」と参加者に呼びかけた。

中華民国温泉観光協会理事長の李浩瑋(ハオウェイ・リー)氏

陳盛山氏(中華科技大学航運輸管理研究所教授、元台中市政府観光局局長・元高雄市政府観光局局長・元華信航空会長・元中華航空専務、元桃園空港取締役、元台湾交通部観光局局長)
女将11人がプレゼンテーション 各温泉地の魅力を紹介

五浦観光ホテルの村田和華子女将による英語でのプレゼンテーション
来賓あいさつに続き、日本から参加した11人の女将が順番に登壇し、映像と言葉で各温泉地・旅館の魅力を紹介した。
北海道登別温泉の滝乃家・須賀紀子女将、山形県蔵王温泉の高見屋旅館・岡崎純子女将、福島県いわき湯本温泉の雨情の宿新つた・若松佐代子女将、茨城県五浦温泉の五浦観光ホテル・村田知世女将と村田和華子女将、栃木県鬼怒川温泉のあさやホテル・八木澤美和女将、静岡県下田温泉の黒船ホテル・山本美姫女将、岐阜県下呂温泉のしょうげつ・長坂正惠女将、兵庫県宝塚温泉の紅葉館別邸あざれ・松本富子女将、、熊本県黒川温泉のふもと旅館・松崎久美子女将、鹿児島県指宿温泉の指宿白水館・下竹原成美女将がそれぞれ登壇した。
各発表の後には宿泊券の抽選も実施。日本旅館のペア宿泊券11枚が当選した来場者に手渡された。
各女将の発表の中では、旅館の設備や食材、地元のイベント情報なども紹介された。
指宿白水館の下竹原女将は、1泊2食付きのプランに加え、砂蒸し温泉に15分入ると約1キロ減量できる体重測定実験の結果を紹介。「調理長は鹿児島県の調理師協会の会長です」とも述べた。
五浦観光ホテルからは、全室オーシャンビューの73室で、うち23室に露天風呂が付いていることが紹介された。金目鯛やアンコウなどの魚料理も紹介した。黒船ホテルの山本美姫女将は伊豆・下田温泉を紹介。温泉水を使ったシャンプーの開発なども紹介し、「男性のお客様にも大変興味を持っていただいている」と述べた。蔵王温泉・高見屋旅館の岡崎女将は、蔵王温泉は「スノーモンスター(樹氷)」で有名な場所であることも説明した。
鬼怒川温泉・あさやホテルの八木澤女将は、宿泊施設の規模や多様な温泉施設を紹介した。
宝塚温泉・紅葉館別邸あざれの松本女将は、渓谷に囲まれた自然豊かな環境と離れの客室を紹介。「冷蔵庫には飲料が約20本無料で入っており、ご自由にご利用いただける」と述べた。また「高齢のお客様がチェックイン時に杖をついていらっしゃるのに、温泉に入った後には杖を忘れて帰られることがある」というエピソードも披露した。
熊本県黒川温泉・ふもと旅館の松崎女将は、台南から熊本空港への直行便や、旅館周辺の日本らしい街並みを紹介。「今年、日本温泉協会の総会も黒川温泉で開かれる。台湾の温泉協会の皆さんとも仲良くしていければ」と述べた。
いわき湯本温泉・雨情の宿新つたの若松佐代子女将は、福島県いわき市の地理的特徴を紹介。「山は西に山、東は太平洋に面している。山の米、果物は美味しく、また海の魚も美味しいところだ」と述べた。温泉は硫黄泉、ナトリウム泉、硫酸塩泉などがあることも説明した。
台湾側登壇者からの紹介・あいさつ

翁羿琦(アイチ―・ウェン)女将(社長)

陳允寶泉の和菓子
楊麗芳氏の司会のもと、台湾からの関係者も次々に紹介された。
118年の歴史を持つ台湾の和菓子老舗・陳允寶泉の翁羿琦(アイチ―・ウェン)女将(社長)は「私たちの店は118年の歴史がある。そのうち70年は東京都立川市にある」と紹介。3代目が太陽餅、4代目が鳳梨酥(パイナップルケーキ)など各代の代表品を説明し、東日本大震災の際に太陽餅と鳳梨酥を日本に送ったエピソードも明かした。今日は女将たちへのお菓子として持参したと述べた。
中華民国温泉観光協会の台中市温泉観光協会からも代表が登壇。台中市の「谷関温泉」(古名・明治温泉)の魅力を紹介した。
また、台北市からの参加者として、JR東日本創造旅游(創造旅行社)の社長(董事長兼総経理)、村上拓哉氏も挨拶した。「日本の観光PRは大体、県や市が中心となって、そのエリアだけを宣伝するものだが、女将さんというシンボルを通じて日本中の温泉に来てくださいというやり方は素晴らしいと思う。ぜひ続けていただければ」とコメントした。
台湾で日本酒の普及活動を行っている参加者からは、日本酒の産地や製法、味わいの特徴について紹介があり、参加者全員で乾杯を行う場面もあった。「日本酒は中華料理とも非常によく合う。清酒の包容性が様々な料理に寄り添う」と説明された。
また、楊麗芳氏は会の中で、元旅館女将として同会に関わる中村みさ子氏(元東京都鴎外温泉・水月ホテル鴎外荘)と國米由公子氏(元熊本県阿蘇温泉・阿蘇の司ビラパークホテル&リゾート)も紹介した。

JR東日本創造旅游(創造旅行社)の社長(董事長兼総経理)、村上拓哉氏
女将向け特別プログラム 台湾紅茶の世界へ

アッサム・梁煌義氏(左)と宋安妮氏

サミット当日の午前11時から12時にかけて、日本から参加した女将ら向けに特別茶席プログラムが開かれた。
台湾紅茶の達人「アッサム・梁煌義」氏が主催。台湾茶18号「紅玉」と台湾山茶の2種類が振る舞われた。原住民族(泰雅族)出身の金賞シェフ・宋安妮氏が「馬告(マーガオ)風味クッキー」を提供した。
席上、梁氏は台湾原生種山茶の特徴と歴史について説明。「台湾に山茶が根付いて3〜4万年以上の歴史がある」「山茶は太陽に当てずに製造され、製造過程に3〜4日かかる」などを紹介した。香りの特徴について「淡雅で蘭の花の香りがする」と述べた。
続いて、紅玉紅茶(台茶18号)が提供された。梁氏の説明によると、渡邊という名の日本人が1925年に日月潭でお茶を作り始めた人物であり、今年でちょうど100年にあたるという。梁氏はこれを記念し、「渡邊農園」という名前を改めて使い始め、お茶の生産を再開した。紅玉の特徴については「薄く、ミントとニッキの香りがする」と説明された。
茶席では茶芸師による実演も行われ、女将たちは台湾茶文化を体感した。




協力:SPA LADY楊麗芳(ウィンディー・ヤン)氏
【kankokeizai.com編集長・日本旅館国際女将会事務局 江口英一】




