岐阜県高山市がにぎわっている。2025年の観光入込客数は過去最高を記録し、国内外から多くの観光客が訪れている。高山市の田中明市長と飛騨・高山観光コンベンション協会の堀泰則会長(ひだホテルプラザ会長)の対談を通して、高山の現状や今後の展望を探った。聞き手は編集委員の内井高弘。(2月下旬、市長室で)

田中市長(右)と堀会長
宿泊者が外国人が4割 韓国市場の開拓課題
――2025年の観光入込客数は。
田中 前年比8.4%増の479万5千人。37万人ほど増え、過去最高となりました。宿泊者数は同3.3%増の232万4千人、うち外国人は同27.1%増の97万8千人でした。宿泊者のうち外国人が4割強を占めており、官民が一緒になって誘客活動をしてきた成果が表れています。

田中市長
堀 国・地域別にみると、台湾が最も多く約12万人、次いで中国の約9万人、米国約6万人、スペイン約5万人、イギリス約4万人と続き、欧米の方が増えているのが特徴です。

堀会長
――JNTOによると、1月の訪日客は4年ぶりに前年割れとなりました。中国が約6割減となったのが響いたようです。高山でも影響は出ていますか。
堀 中国を対象としたプロモーションはほとんどしておらず、今後減ったとしてもインバウンド市場において大きな影響はないと認識しています。欧米客が高山に注目し、増えていることを評価しており、情報発信してきた成果だと受け止めています。欧米に加え、これからは韓国も重点市場とし、誘客活動を展開していきます。25年は2万4千人ほどでしたが、開拓の余地は十分あるとみています。
市民の意識の高さが魅力
――改めて高山の魅力をうかがいたい。
田中 高山祭や古い町並など、豊かな観光資源に恵まれていることはもちろんですが、何といっても人に尽きます。旅行者を受け入れる中で自分たちも喜びを感じ、精一杯のおもてなしをする。高山の風土や伝統文化などを含め、生活に息づくものを次の時代につなげていくという市民一人一人の意識の高さが魅力です。先般、ブッキング・ドットコムの「世界で最も居心地の良い都市10選」に選ばれたことがそれを表していると思います。
堀 協会が策定した「飛騨高山観光ビジョン2025~2029」には、テーマとして「かけがえのないこの日常が、わたしたちの宝物」とうたっており、(1)多様な主体の参加を促し、観光の強みを取り入れた強靭(きょうじん)な地域づくり(2)観光を活用した地域資源の保護・活用や人材育成、郷土愛の醸成による活力ある地域づくり―を目指すことを基本方針に掲げています。市長が指摘された人の営みが高山の文化を醸成させていることは間違いなく、受賞はわれわれの方向性が間違っていないことを裏付けており、大変うれしいですね。
――外国人旅行者が増えてくると、観光地への一極集中、いわゆるオーバーツーリズムの問題が出てきます。
堀 高山においてオーバーツーリズムは発生していないと思っています。私はそこに住んでいる人たちが(1)不満(2)不平(3)不公平―の三つを感じていることがオーバーツーリズムだと捉えており、高山においてはそこまではいっていないと思っています。強いて挙げれば「古い町並」でその兆候が見られるかな、と。ただ、混雑が続き、住民の方が不便を被るようであれば、幅広く周遊していただけるような仕組み作りが必要です。協会ではすでに取り組んでいます。
田中 他の国内主要観光地と比べて、高山は観光客の来訪手段が限られており、輸送力も大きくはないことから、局所的な混雑はあるものの、会長がおっしゃる通りオーバーツーリズムではないという認識です。世間では外国人が来ることの弊害も指摘されていますが、高山には数十年にわたり多くの外国人観光客を迎え入れてきた歴史があります。旅行者には、私たちの日常に対して配慮してもらいたい、私たちも温かい気持ちでお迎えしたい。この思いから「With Respect」(敬意をもって)を合言葉に来訪者へのお願いを伝えています。
――宿泊業界は人手不足に悩んでいますが、高山はいかがですか。
堀 間違いなく人手不足で、今後も続くのではないかと懸念しています。宿泊業界はDX(デジタルトランスフォーメーション)化が難しい業種です。人との応対でもって満足していただくという、おもてなし文化がまず優先されるので、人がいないことには成り立ちません。外国人の活用を含めて、対応するしかないと思っています。
田中 市は「第九次総合計画」(25~34年度)の中に「多文化共生」という項目を入れ、「異なる文化や慣習を認め、共に生きる社会の構築」を掲げています。外国人を雇用する際、補助金を出してバックアップする制度もあります。
宿泊税使途は条例で 定率制も視野に
――25年の話題といえば宿泊税の導入があります。
堀 観光業界としても大きな出来事であり、昨年10月1日から施行されました。1人1泊につき、宿泊料金が1万円未満は100円、1万円以上3万円未満200円、3万円以上300円の徴収により、年間約4億円の収入が見込まれています。現状、混乱もなく、順調に進んでおり、関係各位のご理解、ご協力に感謝したい。
田中 25年度は2億円程度の収入になりそうです。使途は条例できちんと定められており、(1)観光資源の磨き上げや地域特性を活かした観光の振興(2)自然環境の保全・活用や生活環境の向上(3)歴史・伝統文化の保全・継承(4)災害時などにおける危機管理体制の強化(5)観光を活用した持続可能な地域づくりを支える体制支援―などに使います。
堀 税制度について、まずは3年、その後5年たったら見直すことになっており、その時の社会情勢を踏まえ、よりよい制度にしていきたいと考えています。今は定額制ですが、定率制も検討課題になってくるのではないでしょうか。
――堀会長は高山をハブとした周遊・広域観光の実現を目標に掲げています。
堀 ビジョンでは(1)福井方面・妻籠・馬籠方面の高速バス路線整備に向けた事業者の調整(2)ワンデイトリップの充実とプロモート(3)ラグジュアリー層の移動環境の改善に向けた提言(松本プライベートジェットとの連携、ヘリポート設営など)を盛り込んでいます。
DMCの設立目指す
――高山と松本を結ぶ「ビッグブリッジ構想」もあります。
堀 東西をつなぐエリアとして捉え、新たな観光圏を作るイメージです。今年1月には横浜市で「北アルプス トラバース(横断)ルート」山岳観光展が開催されました。首都圏の方々に自然豊かな一帯の魅力をアピールでき、訪れた人々の反応も良かったですね。
田中 市としても協会の取り組みを全面的に支援しています。ただ、観光振興は経済行為であるため、行政のできることは限られていますので、その部分は協会に担っていただきます。市としてもちろん協力は惜しみません。観光を軸とした地域経営、観光プロモーション、障がい者がアクセスしやすいまちづくりなどベクトルを合わせ、官民一体となって取り組んでいきます。
堀 協会はDMOに認定されていますが、25年度にDMO内に市内10の観光協会で組織する「飛騨高山観光地域連携委員会」を新設しました。商工会議所や商工会、まちづくり協議会、NPO法人など地域のプレーヤーとともに連携を深めて、独自性のある地域資源の掘り起こしや誘客に一体感をもって取り組みます。また、他の団体と協力してDMCを設立する方針です。できれば26年度からスタートさせ、観光商品造成や実行する部隊としての役割を果たしてもらいたいと考えています。
――高山の特徴の一つに客室の多さが挙げられます。
堀 18年前後からホテルの建設ラッシュが始まり、25年以降の確定分を含めると5千室規模になります。民泊などの増加もあり、カジュアルからラグジュアリーまで受け入れが可能です。選択肢の多さは群を抜いています。
田中 人口8万人強の都市でルーム数が5千室というのは非常に珍しく、県都の岐阜市にもありません。富山市と匹敵する規模です。ホテル側もビジネスなので、採算が取れなければ進出しません。一定数の方が滞在していただければ地域にお金が落ちるので、市にとってもメリットがあります。
――MICEの誘致については。
堀 客室の多さに加え、今後はコンベンション機能の強化も期待され、MICEを受け入れる体制は十分整っており、誘致活動をさらに強力に展開する方針です。
――市は今年、市制施行90周年を迎えます。何か記念行事などは考えていますか。
田中 高山に暮らす喜びや郷土への誇り、愛着を深めていただくことを目的として、市民が楽しむことができる取り組みを実施します。次の100周年に向けての、大切な節目の年であると考えています。
一般社団法人飛騨・高山コンベンション協会
〒506-0011 岐阜県高山市本町1の2
電話0577(36)1011/FAX0577(36)0091






