JNTOデリー事務所主催の「Japan Travel Fair」の様子
訪日インド人数が2025年の年間で30万人の大台を突破した。コロナ禍前の2019年比でほぼ倍増、2024年比でも約10万人の上積みとなっている。経済発展に伴い海外旅行市場が拡大していることに加え、直行便の座席供給量増加も追い風となっている。JNTOデリー事務所が主催した訪日フェアでは、来場者が異口同音に「私の旅行リストに『日本』が入っている」と言い、熱心に質問をする姿が見られた。
インドの海外旅行者層は三つに大別できる。伝統的な富裕層・上位中間層、経済発展の追い風に乗って成長した新興中間層、裕福な家庭で育った若年層だ。それぞれ特徴があり、伝統層は大家族主義の旅行スタイルを好む。親・子・孫3世代、親類、向こう三軒両隣のご近所さんとの「家族」旅行を年1回以上楽しんでいる。新興層にはLCCで行くタイ・ベトナム旅行が流行で、日本はまだ少し高級な印象だ。
裕福な若年層は友人やパートナーとの旅行、一人旅も楽しんでいる。オンライン旅行会社のウェブサイトで自力で手配し、査証もオンラインで申請する。初訪日でもゴールデンルートにこだわらず、東京+北海道、東京+沖縄といった旅程を組むことも珍しくない。インド市場はオフライン旅行会社の力が強いが、新しい風も着実に吹き始めている。
こうした市況の変化を踏まえ、デリー事務所では訪日者数のみならず、旅行消費額を高めるための情報発信も模索している。訪日インド人の1人当たりの日本国内消費額(観光・レジャー目的)は既に、JNTOの事務所がある全重点市場平均を上回っている(2025年速報値)。東南アジア・南アジア域内ではシンガポールに次いで消費額が大きい。
支出先は「宿泊」が突出している。訪日市場をけん引している伝統層には、部屋の広さ、ラグジュアリー感にこだわりがあるためだろう。他方、買い物消費は市場平均を下回っている。十分な購買力がありつつ、どこで何が買えるかをまだ知らない、旅行会社が連れて行ってくれないと買えないという事情ではないかとにらんでいる。
デリー事務所では訪日送客実績のある旅行会社にアンケートを実施(回答61社)した。パッケージ商品に組み込む買い物時間は、「訪問都市で1~2時間」が21%、「主要1都市で半日」が21%という結果。調査にかかわった現地職員からは「1~2時間だと何も買えない!」との声が上がった。買い物の場所は渋谷や浅草などのストリートショッピング、アウトレット、100円ショップの順で、その選定方法は、「DMCのおすすめ」「旅行会社自身の訪日体験」「(業界の)口コミ」が多く(いずれも複数回答)、旅行会社が顧客を店に連れて行くスタイルが顕著だ。
買い物自体は回答者の9割が「顧客満足度にとって重要」と答えており、接客や支払い、免税などの利便性も高評価で、潜在力は十分にある。まずは旅行会社の力で伝統層を店に呼び、いずれは裕福な若年層に刺さる買い物体験の提供へと進む戦略立案が旅行消費の拡大に重要となるだろう。

JNTOデリー事務所主催の「Japan Travel Fair」の様子




