【本だな】図解 ホテル空間の演出 シーン別 設計と運営の仕掛け  小島衆太(KOJA)著


 「素敵なホテル」の秘密が科学され尽くしてる!――。ホテルプロデューサーの龍崎翔子氏がこう推薦する本書は、多くの人が抱く「良いホテルだった」という漠然とした感想の裏側にある、無数の「仕掛け」を解き明かす一冊だ。予約からチェックアウトまで、ホテルでの体験をシーン別に分解し、「ホテルのどこがどう良かったのか」を構造的に理解できるようになっている。

 著者は、100軒以上のホテルへ足を運び徹底的にリサーチを重ねてきた小島衆太氏。建築設計事務所とホテルの企画・運営会社の両方でキャリアを積んだ経験から、「設計と運営」という横断的な視点でホテル空間を読み解く。ザ・リッツ・カールトン東京、HOTEL K5、日光金谷ホテルほか、47軒のホテルから見出した77のアイデアを、豊富な詳細スケッチと共に図解している。

 本書は、ゲストがホテルを体験する時間軸に沿って、9つのシーンで構成されている。

 「SCENE 01 ホテル選びの演出」では、「最高の風景を見せるために“窓”を消す」(ザ・リッツ・カールトン東京)や、「原稿を終わらせるために旅に出よう」(The Ryokan Tokyo YUGAWARA)といった、予約段階でゲストの心を掴む仕掛けを紹介。

 「SCENE 03 入室の演出」では、「“キャリーケースさん”のベッドはこちら」(sequence MIYASHITA PARK)や「レコードの音色で出迎えるために」(HOTEL K5)など、客室に入った瞬間の体験を豊かにするアイデアが並ぶ。

 その他にも、「“問診”バーカウンター」(moksa Rebirth Hotel)、「立体パズルアメニティボックス」(メズム東京、オートグラフ コレクション)、「私たちは寝るよりも語りたい」(toggle hotel suidobashi)など、食事、入浴、就寝といった各シーンにおける独創的な演出が、なぜ、どのように機能しているのかを具体的に知ることができる。

 著者は「はじめに」で、ホテルという複雑なプログラムだからこそ、一旦部分ごとに分解して読み解くことが大切だと語る。本書は、抽象的な言葉で語られがちな「良い体験」を、具体的なアイデアの集合体として捉え直す試みだ。細やかなディテールへの配慮が、いかにして総合的な満足度を支えているのかがよくわかる。

 「細部の検討は全体のストーリーを支える重要な演出に繋がっている」。本書はホテル設計者や運営者だけでなく、あらゆるサービス業に携わる人、そして、より深くホテルを楽しみたいと願うすべての人に、新たな発見とインスピレーションを与えてくれるだろう。

 定価2500円+税。

 発行=学芸出版社。

図解 ホテル空間の演出 シーン別 設計と運営の仕掛け  小島衆太(KOJA)著


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