ユネスコ遺産の地も含む7都市の歴史まちづくり計画(第2期)を認定 2期計画認定は51都市に拡大


 国土交通省は3月19日、新潟県村上市、長野県千曲市、静岡県三島市、愛知県岡崎市、三重県伊賀市、和歌山県湯浅町、和歌山県広川町の「歴史的風致維持向上計画(第2期)」を認定した。認定は歴史まちづくり法(正式名称:地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律)に基づくもので、文部科学大臣、農林水産大臣、国土交通大臣の3大臣が連名で行った。文部科学省、農林水産省、関東・北陸・中部・近畿の各地方整備局、および各自治体と同時発表した。

 今回の認定により、歴史まちづくり計画の認定100都市のうち、第1期計画を完了し第2期計画の認定を受けた都市は51都市となった。

 

三嶋大祭りに52万人、インバウンド比率28%に倍増 第1期の成果が各地で数字に

 7都市はいずれも平成28年度から令和7年度までの10年間を計画期間とする第1期計画を終え、今回の第2期認定に至った。各都市の第1期の主な成果は以下の通り。

 村上市では、歴史的風致形成建造物保存事業および建造物外観修景事業により、10年間で延べ90件の建造物の修理・修景を実施。また51件の歴史的風致形成建造物の指定を行い、歴史的活動と町並みが一体となった歴史的景観の創出につながった。

 千曲市では、武水別神社神官松田邸の文化財保存修理や道路の美装化、案内サイン整備による景観改善を図り、古文書を専門とする博物館施設の開館につながった。400年以上の歴史を持つ武水別神社の大頭祭を舞台とした伝統文化の継承にも寄与し、コロナ禍で落ち込んだ武水別神社の入込客数が松田邸の開館後に6.4万人まで回復した。

 三島市では、三嶋大祭り(毎年8月15〜17日)の人出がコロナ禍による中止年を除いて年々増加し、令和7年度には県内外から52万人を集めた。また、市が「住みやすい」と感じる「住環境満足度」は平成28年度の89.3%から令和5年度には93.0%へと増加した。

 岡崎市では、岡崎城跡の発掘調査による城郭遺構の解明や石垣の復元整備を進め、発掘調査の現地説明会参加者が延べ約3,000名に上った。また、「旧冨田家住宅(主屋・土蔵)」の大規模改修を支援してレストランおよび郷土史資料展示室として再生させ、登録有形文化財の登録にもつなげた。

 伊賀市では、春日神社拝殿や芭蕉翁生家等の文化財保存修理、道路の美装化、古民家等の再生活用による景観改善を推進。外国人観光客の割合は平成28年度の約14%から令和6年度には約28%へと倍増した。歴史文化遺産の保存・継承に係る市民の満足度も平成28年度の48%から令和6年度には62%へ、参画度も約23%から約35%へと増加した。

 湯浅町では、旧国鉄紀勢西線紀伊湯浅駅本屋(湯浅駅旧駅舎)の保存整備を中心とした駅周辺整備事業により新たな賑わいが創出された。重要伝統的建造物群保存地区内にある醤油醸造家の建物であった旧栖原家住宅を改修し、醤油の歴史や伝建地区について学べる公開施設として整備。日本遺産『「最初の一滴」醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅』の認定も受け、国内外からの観光客を受け入れている。

 広川町では、歴史まちづくりの推進が日本遺産認定につながり、関連イベントへの参加やシンポジウムの開催を通じて住民の気運醸成と観光客増加が図られた。重点区域内の文化観光拠点周辺に物産販売・飲食施設の整備を行い地域内消費の拡大も実現。空き家となっていた歴史的建造物の活用促進により、町並み景観の保存や観光客の長期滞在促進にもつながった。

 

無電柱化、インバウンド対応、長期滞在型観光 第2期が目指す方向

 各都市の第2期計画の概要は以下の通り。

 村上市の歴史的風致は、旧村上城下として発展した城下町、出羽街道・三国街道仲通り・米沢街道などを通じて村上城下と密接なつながりを持った宿場町、北前船の寄港地として栄えた港町で構成される。これらの町家集落には歴史的な建造物と多くの歴史的な町並みが残り、地域固有の歴史・文化的資源を活用した産業や独自の民俗芸能・習俗等が現在も受け継がれている。

 第2期では、引き続き歴史的風致形成建造物保存事業による建造物の保全と、歴史的な活動と一体となった町並みの維持を進める。あわせて無電柱化事業の事業化を推進し、風致の維持向上と歩行者空間の安全性確保を図る。また、民間のまちづくり団体と連携しながら空き家・空き店舗の利活用に向けた仕組みづくりを行い、歴史的建造物を活かした地域活性化と町並み喪失の抑止に取り組む。

 千曲市は、重要文化財や史跡、重要伝統的建造物群保存地区等を含む古代から近代の文化財が市内全域に存在するとともに、開湯120年を超える戸倉上山田温泉街など特徴的な市街地が形成されている。第2期では、文化財の保存修理等のほか道路の美装化など文化財周辺環境の整備を継続し、歴史・文化・景観を礎とした歴史的風致の維持向上を図る。歴史と伝統を反映した人々の活動を支援し、市民の郷土愛醸成と伝統文化・観光情報の発信にも取り組む。

 三島市では、三島を代表する市民参加型の夏まつりである三嶋大祭りや、佐野地区・市南域の河川流域を中心に行われる特徴的な地域信仰、坂の集落における氏神の祭礼、市街地のせせらぎを構成するカワバタを利用した七月盆の行事などが今なお続いており、歴史的価値の高い建造物・周辺市街地と一体となって三島市固有の歴史的風致を生み出している。第2期では、「三島市文化財保存活用地域計画」「史跡等保存活用計画」に沿った文化財の保存・活用推進に加え、良好な景観形成を推進する地区の追加指定の検討、道路の修復、インバウンド需要を踏まえた案内機能の充実などに取り組む。

 岡崎市は、岡崎城を中心として大樹寺をはじめとする松平氏・徳川家ゆかりの寺社周辺および近世の宿場町であった岡崎宿・藤川宿を含む「岡崎城下及び東海道地区」や、重要文化財をはじめとする歴史上価値の高い建造物の集積がみられる「滝山寺地区」等において固有の風情を感じる歴史的風致が形成されている。第2期では、歴史文化資産の調査研究・普及啓発、歴史的建造物等の保存・活用、景観計画と連携した良好な市街地景観の形成を継続する。歴史まちづくりへの参加機会の提供や先端技術の活用等を取り入れた観光振興にも取り組み、市民・来訪者の理解度・満足度の向上と郷土への誇りや愛着の醸成を図る。

 伊賀市は、江戸から近代までの歴史的建造物を背景に上野天神祭(まつり)の楼車(だんじり)が巡行する上野城下町を中心に、忍者発祥の地盤となった地侍・土豪が拠った中世城館群、江戸時代の街道と宿場、村々の神社を舞台に行われる祭礼・神事など、それぞれの地域の個性的な景観が残されている。中心性と地域性、歴史の重層性が織りなす景観と人々の活動の多様性が伊賀市の歴史的風致の特徴だ。第2期では、文化財の保存修理や防災・防犯設備の整備事業をはじめ、環境整備・情報発信、民俗文化財の継承事業などにより歴史的風致の維持向上を図る。文化財・歴史的建造物を活用したソフト事業の展開と情報発信にも取り組み、市民の地域歴史文化への再認識を促すとともに国内外に向けて伊賀の魅力を発信する。なお、伊賀市の「山畑の勝手神社の神事踊」と「上野天神祭ダンジリ行事の楼車」はいずれもユネスコ無形文化遺産に登録されている。

 湯浅町には、醤油醸造の発祥の地として栄えた醸造の歴史、熊野古道の人々の往来、海辺の漁業や段々畑のみかん等の栽培など、固有の風情を感じる歴史的風致が形成されている。第2期では、湯浅駅周辺と重要伝統的建造物群保存地区を周遊できるような歴史的建造物の活用や、よりよい景観を形成していくための取組を進める。これらの推進により、地域固有の歴史的風致の維持向上のみならず、地域経済の好循環を生み出すことが期待されるとしている。

 広川町は、沿岸部の史跡広村堤防・重要文化財濱口家住宅などを含む落ち着いた伝統的町並みが残る広地区周辺を中心とした廣八幡宮の祭礼、出世大黒天の祭礼や「稲むらの火」の防災文化が育まれた地域、山間部の山村集落で信仰されている社や熊野古道周辺の地域において固有の歴史的風致が形成されている。第2期では第1期から取り組んできた長期滞在型観光のさらなる向上を目指し、日中のまち歩き環境を充実させる。広の町並みを代表する重要文化財濱口家住宅の保存修理事業を実施し、広川町所有の東濱口公園とともに一体的な活用のための整備を行うことで、歴史的風致の向上と観光振興を図る。

 

 歴史まちづくりとは、城や神社仏閣とその周辺の町家・武家屋敷等からなる市街地と、祭礼行事・民俗芸能・昔ながらの生業等の人々の伝統的な営みや活動とが一体となって地域の個性とも言える歴史的な情緒や風情を醸し出すまちを「歴史的風致」として地域固有の資産と捉え、関係省庁が連携してハード・ソフト両面から支援する取り組み。

 

 
 
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