前回の続き。今までいろいろな所で生牡蠣(がき)をいただいた。どれも甲乙つけがたいが、特に強く印象に残っているのが、オーストラリア・タスマニア産の牡蠣。
世界一空気と水の奇麗な島といわれるタスマニア。同緯度に大陸や大きな島がないため、汚染の要素が少なく、何と雨水でもそのまま飲めるのだとか。そんなタスマニア州、実は小さなワイナリーの宝庫で、州の面積が北海道とほぼ同じなのに200以上ものワイナリーがあるという。ワイナリーを訪ねたいし、固有種のタスマニアン・デビルも観たいし、カジノにも行きたいということで、シドニーからタスマニア島へ行く計画を立てていた。
その折シドニーで、世界で最も予約の取れないレストランの一つといわれた「テツヤズ」オーナーシェフ和久田哲也氏(現在は活動の拠点をシンガポールに移されている)とタイ料理店にご一緒させていただき、おススメのワイナリーや食べ物について伺い、現地の牡蠣はうまいと教えて下さった。「テツヤズ」はシェフお任せコースのみのデギュスタシオン形式で、12~13皿の料理が提供される。最初の1皿の定番が「タスマニア産パシフィックオイスターと米酢としょうがのヴィネグレット」。牡蠣はシェフのこだわり食材の一つだったのだ。
実際タスマニアで牡蠣をいただいたら、そのおいしさにビックリ! パシフィックオイスターは日本の真牡蠣と同種で、かつて日本から稚貝が持ち込まれ、養殖が定着したという。有名な産地は、タスマニア島の南にあるブルーニー島。南極に近く、冷たい奇麗な海水で育つから、身が締まってうまみが凝縮されるそうだ。こんなに甘みの強いミルク感のある牡蠣は、初めてだ。タスマニアン・デビルもかわいかったし、ホバートの港も美しかったし、カジノも楽しかったし、ワイナリーも素敵だったが、何より牡蠣のおいしさが記憶に残っている。
同じオーストラリアでも、シドニーで食したシドニーロックオイスターは、全くの別モノ。コチラは同国の固有種で、小ぶりながら、味は濃い。流通しているのはほぼ養殖物だ。海面近くに設置された牡蠣棚が、潮の干満によって海から顔を出す。この干出時、牡蠣への海水の流入が止まるため、うまみ成分が薄まらず濃厚になるとか。また、牡蠣がストレスを感じて、コクや甘みの素とされるグリコーゲンが増えるともいわれる。真牡蠣に比べ、育つのに倍の時間がかかることも影響しているそう。
隣国ニュージーランドの牡蠣もまた違う。南島のマールボロのワイナリーを訪ねた際、近くのレストランで食した牡蠣は、丸くて平らだった。ブラフオイスターという同国南部の在来種だ。南島最南端の港町ブラフで獲れる天然物で、漁期や漁獲量が厳しく制限されており、ほとんど国内消費。短い漁期に現地に行かないと食べられないから、出会えて超ラッキー♪
まだまだ続く牡蠣の旅、次回もお楽しみに!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




