東京、アート密度はNY超え――「伝わらない」課題浮き彫り 観光財団が共同研究


 公益財団法人東京観光財団は3月17日、東洋大学国際観光学部の増子美穂教授およびKiwiPR合同会社との3者共同研究「東京のアートツーリズムの可能性~東京のポテンシャルを最大化する戦略の考察~」の報告書を公表した。

訪都観光客の約2割が「美術館・博物館」目的

 東京都の令和6年「国・地域別外国人旅行者行動特性調査」によれば、訪都観光客の約20%が訪問目的として「美術館・博物館の訪問」を挙げている。

 世界のアートツーリズム市場は2024年時点で約450億米ドル(約7.1兆円)とされ、2030年まで年平均約3.0%で成長すると予測されている。近年はアートワークショップや地元アーティストによるガイドツアー、体験型の美術館など、体験を重視した観光として広がり、旅行者とデスティネーションの関係を深める機会を生み出している。

 一方で、東京は多様なアート資源を有する都市であるにもかかわらず、ロンドンやニューヨーク、パリ等と比べるとアート都市としての認知は十分とは言えない状況だ。本研究は、こうした課題の要因整理と方策の考察を目的として実施された。

5つのステップで分析

 研究は以下の5つのステップで進められた。

  • 基本概念の整理(アートの分類とアートツーリズムの概念整理)
  • 東京のアート資源整理と他都市分析(都内におけるアート資源の可視化とソウルとの比較)
  • 識者に聞く「東京のアートツーリズム」の現在地(識者11名へのインタビュー調査)
  • 東京のポテンシャル調査(おでかけウォッチャー、THE TOKYO PASS等を活用したデータ分析)
  • 提言まとめ(東京におけるアートツーリズム推進の方策提案)

「東京モデル」の模索が重要

 まず基本概念の整理では、アートツーリズムをアート先進都市で主流の「芸術鑑賞型」、日本型である「地域実践型」、都市で展開されている「都市型」の3類型に区別した。この3つが重なり合う部分を「東京モデル」と位置づけ、東京ならではのアートツーリズムの模索と追求が重要であると整理している。

アート密度、NYより高い東京23区

 他都市との比較分析では、観光客の主要行動範囲である「東京23区=Walkable Area」で切り取ると、アート施設の集積度はソウルとほぼ同水準であり、ニューヨークよりも密度が高いことが示された。

 一方で、SNSでの情報発信は国内向けの日本語発信が中心で、英語発信を行う施設は限定的。多言語発信やSNS活用の面で海外都市に比べ改善の余地があるとした。

「届かず・伝わらない」が最大の課題

 施設、メディア、イベントプロデューサー、ブロガーなど様々な分野で活躍する識者11名へのインタビュー調査からは、東京ならではのポテンシャルと同時に複数の課題が浮き彫りになった。

 ポテンシャルについては「日本美術と西洋美術、伝統と現代、鑑賞と没入体験が一つの都市で完結できるアート密度が高い都市は珍しい」「充実した、クオリティの高い多様な選択肢等もユニークポイント」といった声が上がった。

 外国人が東京でのアートに求めているものについては、作品そのものだけでなく「空間・ストーリー・作品との出会い」が重なる、日本だからこその体験そのものであるという指摘があった。

 その一方で、「多数のアート資源がありながら、企画展が中心で常設展が弱く、また情報発信の弱さもありその価値が十分に届かず・伝わらないことが東京の最大の”もったいなさ”だ」という声も多かった。

 解決策としては「情報の一元化、施設間連携、ナイトタイム強化など都市としての仕組みを整えることで、東京のアート体験が外国人へも広がりをみせていく」との意見が多く聞かれた。

実際に美術館を訪れた旅行者は約5.3%

 ポテンシャル調査では、情報収集の手法としてリアルのタッチポイントは存在するものの、旅行者はそれを活用していないことが示された。旅行者はウェブサイトやSNSを利用して情報を探しているが、実際に美術館・博物館に訪れた人は約5.3%にとどまるという結果から、情報発信が十分に機能していない可能性が高いとした。

 また、観光客は上野エリアに集中しており、東京に点在する多様なアート資源やエリアごとの魅力が十分に認知されていないことも課題として挙げられている。旅行前・旅行中において、分かりやすく情報を整理して発信することが重要だとした。

「点」から「面」へ、3つの提言

 研究を通じて、東京の強みである「多様なアート資源」と「都市の重層性」を活かし、都市生活と結びついたアート体験の発信が重要であることが明らかになった。東京ならではのアートツーリズムを実現するための提言として、以下の3点が示されている。

  • 東京のアートを「点」から「面」へ。エリアで物語化し、都市全体を体験させる
  • これを見れば「東京のアートの全てが分かる」信頼できる唯一の入口を構築する
  • キャンペーン的な打ち出し方をして、都市型アートツーリズムを定番化させる

 報告書では「本レポートが、今後の都市観光における課題整理や議論の一助となれば幸いです」としている。

 報告書「東京のアートツーリズムの可能性~東京のポテンシャルを最大化する戦略の考察~」は東京観光財団の公式ウェブサイト(https://www.tcvb.or.jp/jp/)から閲覧できる。

 
 
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