【本だな】新・コンテンツツーリズム論Ⅱ [地域振興篇]物語世界が生み出す文化のエコシステム  清水麻帆・増淵敏之 編著、北郷裕美・鄭守熙 共著


 アニメやマンガ、ゲームなどのコンテンツ作品の舞台を訪れる「コンテンツツーリズム」。本書は、この現象を「ツーリストの誘引にとどまらず、地域がイニシアティブをとって外部経済を拡大。再訪、交流・関係人口、移住者を創出し、持続性のあるツーリズムへ転換するシステム」として捉え直し、その理論と実践を提唱する一冊だ。著者らは、コンテンツツーリズム(コンツー)は「文化が基盤となり、派生している」と論じ、一過性のブームで終わらせないための仕組みを探求する。

 本書は、理論の提示だけでなく、国内外の豊富な事例研究を通じてその主張を裏付けている。第1章では、「スラムダンク」や「君の名は。」、「らき☆すた」といった作品を題材に、コンテンツツーリズムと地域の維持可能な発展について論じる。第2章では「ドカベン」や「おおきく振りかぶって」などの野球マンガを取り上げ、地域の野球文化を基盤としたツーリズムを文化地理学の視点から考察する。

 さらに、第3章では「戦国BASARA」や「刀剣乱舞」に加え、「エヴァンゲリオン」とのコラボレーション企画などを通じ、伝統とポップカルチャーの障壁を超えた「刀剣文化エコシステム」を検証。第4章では北海道函館市におけるロックグループ「GLAY」や「名探偵コナン」の事例から、コミュニティFM局が果たす役割を考察する。また、第5章では韓国のドラマ「ミスター・サンシャイン」などを例に、政策・ファンダム・ローカルが連携する循環構造を提示し、第6章ではゲーム「Ghost of Tsushima」を切り口に、離島・対馬におけるコンテンツツーリズムの潜在的可能性と具体的な方策を提言している。

 あとがきで「これまでは、コンツーの持続性に関して、コンテンツ作品の良し悪し、つまり質や人気の高さなどの表層的な部分で語られる傾向にあった」と指摘するように、本書はスタンプラリーなどのイベント中心になりがちだった従来の方策に新たな視座を与える。その核となるのが「文化を基盤としたエコシステム」の構築である。これは、コンテンツ制作側、ファン、文化を担う団体、そして地域の公的機関という4者が連携し、クリエイティブな社会関係を築くことの重要性を説くものだ。ファンは「より深い部分でコンテンツ作品に共感し、その共感している部分は有形・無形の固有の文化に関連することが多い」とし、その本質的な欲求に応えること が持続性につながると示唆する。

 観光産業と文化コンテンツ産業がますます重要になる現代において、本書は地域の持続可能な発展を考える上での試金石となるだろう。

 A5判224ページ、定価2,970円(税込)。

 発行=水曜社。


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