東日本大震災から15年がたちました。
震災以降、地域における宿の存在と担う役割が大きくなったように感じます。震災時に1泊5千円で被災者を受け入れた経緯があるからでしょう。
被災してもなお、宿としてのあるべき姿を私は宮城県「ホテル観洋」に見ています。地域のシンボルとしての役割を果たしてきた「ホテル観洋」は、太平洋の大海原にせりだす露天風呂が名物で、宿経営の前から漁業も営んでいたこともあり、新鮮な魚介類がいただけます。名物女将の阿部憲子さんの采配によるもてなしが素晴らしく、何より、震災時の対応や復興までの道のりを今も熱心に伝える憲子女将の語り部としての活動はとても貴重です。
土地に根差し、地域の住民の暮らしと共にあるのが宿です。ただ部屋を貸すだけでなく、寝食を提供する宿だからこそ、人との距離も近くなり、非常時でも人の心に寄り添えるのだと思います。
日本の人気観光地は自然豊かな立地が多いので、災害とは隣り合わせです。
ならば自然災害から復興する際には、ただの地域づくりにとどまらない、新たな姿を具体的に示せないでしょうか。
例えば、災害の詳細を記録した伝承館の設置や語り部の育成、それによる集客を試みてほしいです。また復興用の護岸を活用した「生態系を守る観光地づくり(エコツーリズム)」は意欲的な取り組みだと思います。
加えて、地球の恩恵としての温泉と、地震が起こるメカニズムとの関係性についても示してほしいです。
さて、東日本大震災以降、防災という点でも観光地の考え方が変わってきています。
南海トラフ地震に備える三重県鳥羽市は2023年に災害時の避難所として宿泊施設の活用について、旅館組合と締結しました。
さらに「観光×福祉×災害×地域 分野を超えてつながる研修会」と題し、観光事業者や高齢者支援事業者、障がい者支援事業者、行政職員などを集めて、和倉温泉「ゆけむりの宿美湾莊」の多田計介会長から「被災ホテルの体験談」を伺う場を設けました。
鳥羽市には2002年に日本で最初にバリアフリー観光相談窓口を立ち上げた「伊勢志摩バリアフリーツアーセンター」がありますので、ユニバーサルツーリズムという観点でも防災訓練を重ねています。
本連載でも何度か話題にした、災害時における高齢者・障がい者の避難「逃げバリ」(逃げるバリアフリー)の発案者である親川修さん(NPO法人バリアフリーネットワーク会議代表)は、「実証と訓練で常に備えることが最も大事」とおっしゃっています。詳しいノウハウは『逃げるバリアフリーマニュアル』のWebサイトに記載されています。
(温泉エッセイスト)




