ユネスコ無形文化遺産「温泉文化」登録へ 温泉地の活力を未来に


担い手の確保・育成急務 人口減少に危機感

 「温泉文化」は、ユネスコ無形文化遺産の提案候補に選定され、2030年の登録が期待されている。登録が認められれば、日本人にとって、温泉地の担い手にとって、誇らしい出来事だ。半面、登録による保護が必要なほど、衰退や消滅の可能性があるともいえる。登録への機運の高まりを持続可能な温泉地づくりにつなげる追い風にしなければならない。

 昨年11月28日、文化庁の文化審議会無形文化遺産部会で、「温泉文化」がユネスコ無形文化遺産の提案候補に選定された。同日の無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議でも提案候補として了承。2030年の審査、登録が見込まれる。

 「温泉文化」の定義は、日本温泉協会が設置した有識者検討会の提言によると、「自然の恵みである温泉に浸かり、心と体を癒やす、日本人に根付いている社会的慣習」とされる。

 提案候補への選定を受け、「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産全国推進協議会会長の青柳正規氏(元・文化庁長官)は、「温泉文化の文化的価値が評価されたことをとても誇らしく感じる」、登録によって、「その魅力が全世界に伝わり、温泉地に活力を生み出す」とのコメントを出した。

 ただ、日本の温泉地の将来は楽観できる状況にない。地方部における人口減少、温泉旅館の後継者不在や担い手不足、自然災害や地熱発電開発による温泉枯渇など、不安材料は多い。青柳氏も、「温泉文化」の登録が「温泉地で働く人々に誇りと希望を与え、そこに暮らす人々の暮らしと文化を守っていくことにつながる」とコメントした。

 温泉地数はこの15年間でおおむね減少傾向にある。宿泊施設がある場所を「温泉地」としてカウントする環境省の調査結果では、温泉地数は経済成長期、バブル期の開発で増え続け、2010年度には3185カ所とピークに達したが、それ以降は減少傾向に転じ、23年度には2857カ所で、ピーク以降の14年間で328カ所減少している。

 日本の地方部は、出生率の低迷、人口の大都市部への流出など、将来的に消滅の可能性が指摘される自治体が少なくない。当然、温泉地についても消滅の恐れがないとは言えない。温泉地は全国各地にあって、当たり前のように存在しているものと思っていると、そうではなくなるかもしれない。

 温泉地存続の鍵は、担い手に他ならない。「温泉文化」を定義した有識者会議は、その「担い手」についても定義した。「担い手」とは、温泉に親しむ日本の人々に加え、温泉を提供する旅館・ホテルや公衆浴場、源泉管理団体や湯守、温泉協会・組合などだ。温泉地には源泉や配管、配湯を管理する人材、旅行者などに安全、安心に温泉を提供する旅館・ホテルが欠かせない。情報発信、祭りや神事を担う組織の役割も大きい。

 時代の波が温泉地に押し寄せる中、「温泉文化」とは何か、それをいかに次世代に受け継ぐのか、担い手とは誰で、その担い手をいかに確保・育成していくのか、今、問い直すことが重要だ。地域の暮らしと文化を守るため、持続可能な温泉地づくりを進め、その担い手を支えていく必要がある。


ユネスコ無形文化遺産登録の推進に活用されている「温泉/ONSEN」のシンボルマーク

 
 
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