道後温泉本館正面玄関前
1羽の傷ついた白鷺がお湯を見つけたとされてから約3千年。そんな悠久の歴史を持っているのが愛媛県松山市にある道後温泉だ。
その名は日本書紀や万葉集にも登場し、古来より多くの人々に親しまれてきた。特に、国の重要文化財である道後温泉本館の重厚なたたずまいは松山市のシンボルの一つとなっている。
文豪・夏目漱石も小説「坊っちゃん」の中で道後温泉を描いているが、作品に登場する湯の町の風情は、今も息づいている。浴衣姿でそぞろ歩く人、湯かごを持って入浴に向かう人―そんな風景を日常で目にすることができる。

道後温泉本館正面玄関前
一方、道後温泉は伝統を守りつつ、現代アートを生かしたまちづくりでも注目を集めている。2014年から始められたアートプロジェクトでは、いろいろな場所でアートが展開され、まちそのものが作品の舞台となっている。
これまで草間彌生や谷川俊太郎、蜷川実花といった名だたるアーティストが参加してきたほか、市民参加型や体験型など趣向を凝らした展開をしてきた。
この温泉とアートを融合させる試みは、経済波及効果だけでなく、若年層など新たな道後ファンの獲得やブランディングの確立という結果も生み出した。相乗効果として、作品を点在させてまちづくりを面で進めたことが、シビックプライドの醸成にもつながっている。
そして、道後アートは、今もまさに展開中だ。題して「蜷川実花 with EiM×道後温泉DOGO ART」。蜷川さんとクリエイティブチ―ムEiMの作品を各所に展開し、色彩豊かな表現と創造でまちを彩っている。

道後温泉本館北側
道後温泉本館の障子には四季の花々や和傘などで彩られたインスタレーションが散りばめられ、観る者を圧倒する。ほかにも、多くの地元民が利用する椿の湯ののれんや道後商店街入り口に設えられた提灯(ちょうちん)ゲートなど、見所が満載。4月からは作品が追加されるので、飽きさせない。いつ来ても楽しめる、何度来ても楽しめるのが道後のアートプロジェクトの魅力だ。

道後温泉 椿の湯
最古にして最先端―革新を積み重ね、伝統を築き上げてきたことで今の道後温泉がある。現状にとどまらず、温泉地でありながら温泉だけに依存せず歩み続けており、その一端がアートを生かしたまちづくりとなっている。




