観光専門家に求められる「質」とは 専門家4氏が提言、今後の観光政策に一石 地域人材も集結し意見交換


イベント会場の様子。参加者にもマイクが手渡され、自由闊達に意見を交換した

イベント会場の様子。参加者にもマイクが手渡され、自由闊達に意見を交換した

 国内各地に専門家を派遣し、旅行者の地域周遊や長期滞在を促進する観光庁の「地域周遊・長期滞在促進のための専門家派遣事業」。同事業で派遣登録された専門家や地域の行政・DMO職員が全国から一堂に会し、観光行政の課題や今後の在り方について考える「観光の専門家Meet Up」が3月16日、東京都港区の東武トップツアーズ品川オフィスで開かれた。専門家有志らによって企画され、約60人が集結。あまり語られることのない「専門家の質」「行政と民間の壁」「補助金の活用」「効果的なデータの使い方」の論点で、専門家4氏が考えを共有した。

観光庁の観光地域振興課長も招き、現状課題などを議論

 今回のイベントは、自治体・DMO向けにコンサルティング事業を展開するリージョナルリングが事務局を担当。観光庁・観光地域振興課の田中倫英課長もゲストとして招待した。トークセッションやネットワーキング(懇親会)を通じて、「2030年までにインバウンド6千万人」を掲げる観光業界が認識すべき課題や視点について、議論が繰り広げられた。

 冒頭には、イベントの実行委員長を務める山田桂一郎氏(JTIC.SWISS代表)があいさつ。プロの専門家として活動するためのヒントや情報交換の場としてほしいと積極的な参加を呼び掛けた。

実行委員長を務めた山田桂一郎氏
実行委員長を務めた山田桂一郎氏

専門家の質、行政との対峙、補助金やデータ活用で提言

 「専門家とこれからの観光の話をしよう」と題するトークセッションでは、日本観光振興協会(日観振)事業推進グループ観光地域づくり・人材育成部長の大須賀信氏、埼玉県の秩父地域おもてなし観光公社の専務理事兼事務局長・井上正幸氏、岩手県のかまいしDMC代表取締役・河東英宜氏、リージョナルリング社長・丸野敬氏が登壇した。

 日観振の大須賀氏は、秋田県のDMOや市役所で観光行政に携わった経験や、登録専門家としての活動を踏まえ、専門家の品質をどのように担保するか見解を述べた。地域側が専門家の品質を見極めるのには限界があり、専門家を客観的に評価できる制度が求められている現状を報告。「専門家の品格」を意識することの重要性に言及した。

 秩父地域おもてなし観光公社の井上氏は、「行政と民間の壁」について講演。「観光事業は“行政の支援”と“民間の実装”で成り立つ」とし、DMOを介して両者がうまく融合する仕組みが重要だと解説した。行政の「予算主義」と民間の「決算主義」に代表されるように、両者で使命や成功基準が大きく異なることを理解した上で、専門家はその間で“通訳”する役割が求められていると強調した。

日観振の大須賀信氏(左)と、秩父地域おもてなし観光公社の井上正幸氏
日観振の大須賀信氏(左)と、秩父地域おもてなし観光公社の井上正幸氏

 かまいしDMCの河東氏は、「補助金の活用」のテーマで講演した。人口減少に悩む釜石市で集客増に成功し、観光で地域に裨益をもたらしている現状を報告。その要因として、持続可能な観光に関する国際基準に則った施策での地域との合意形成、人的資本・経営資本の増強を挙げた。一過性のイベントなどではなく、稼ぐための投資やコンテンツ造成に積極投資を行った自社の取り組みを紹介し、こうした資本力の増強に補助金を活用すべきとの見方を示した。

 リージョナルリングの丸野氏は、地域側の視点で「効果的なデータの使い方」を解説。①データに何を求めるのか②専門家に何を依頼するか(詳細設計か合意形成か)―などを明確にする重要性を説いた。マーケティングに役立つデータを一元管理できるDMP(Data Management Platform)の活用についても、地域の将来設計にコストが見合っているか、得られたデータは施策に結び付くかなどを見つめ直すべきとした。

かまいしDMCの河東英宜氏(左)と、リージョナルリングの丸野敬氏
かまいしDMCの河東英宜氏(左)と、リージョナルリングの丸野敬氏

地域も明確な意思と戦略を「要件定義の力が必要」

 地域から参加した雪国観光圏・代表理事の井口智裕氏は、各専門家の意見に対し感想を述べた。「戦略があまりない中で事業を発注している地域が非常に多いのではないか。地域経営も“経営”だ。明確な意思と戦略があって初めて専門家を活用できる。地域として何を目指すのか、要件定義をする力が必要だ。戦略や戦い方をクリアにして、整理整頓しないといけない」と強調した。

雪国観光圏の井口智裕氏

 終盤は実行委員長の山田氏が再度登壇し、「私たちがプロの立場でどう向かい合うか。皆さんはそれぞれの専門家だが、地域のことをどれくらい理解しているかが大事だ」と総括した。観光は地域の持続可能性を高めるための「手段」だとした上で、短期的な派遣ではなく、より長いスパンで地域に関われるような制度への見直しについても必要性を訴えた。

イベント会場の様子。参加者にもマイクが手渡され、自由闊達に意見を交換した
イベント会場の様子。参加者にもマイクが手渡され、自由闊達に意見を交換した

 
 
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