これからの旅館経営に求められる「接遇介助士ホスピタント」 日本ホテルレストラン経営研究所 大谷晃理事長に聞く


大谷理事長

多様な人々に配慮できる「ヒューマニティ」を持った人材

 NPO法人日本ホテルレストラン経営研究所の大谷晃理事長が、書籍『接遇介助士ホスピタントの教科書』を発行した。接遇介助士ホスピタントとは、「ヒューマニティ(人間性尊重精神)」を持った、これからの時代に求められる人材像だという。超高齢化が進む社会、インバウンドが拡大している現代において、多様性に対応するための「新しいサービスの形」を提案する大谷氏に、その概念と必要性を聞いた。

 ――接遇介助士ホスピタントとはどのようなものか。

 ホスピタントとは、「ホスピタリティ」と、イタリア語で「たくさんの」という意味の「タント」を組み合わせた「たくさんの奉仕の心を持った人」という意味の造語だ。当NPO法人が設置した「接遇介助士ホスピタント推進機構」では、ホスピタントについて、「目配り、気配り、心配りのできる人」「分け隔てないおもてなしができる人」「自分と違う考えを受け入れられる人」「相手の立場になって物事を考えられる人」「相手のために一生懸命、相談にのってあげることができる人」など、10の項目を定義している。

 ――今なぜ、このような人材が求められるのか。

 現在、サービス業界はフェーズの転換期にある。かつては気の利いた「サービス」が求められていたが、東京オリンピック・パラリンピックを機に心からのおもてなし「ホスピタリティ」へ。そして今、さらに次のフェーズである「ヒューマニティ」の時代に突入している。

 従来の宿泊業では、滞在単価が高いお客さまの期待に応える接客が、価値として語られる場面も多かった。しかし、持続可能な観光産業を考えるなら、海外からのインバウンド客や、妊娠中の方、高齢者、体の不自由な方など、多様な人々に対して、それぞれの状況に応じた配慮を行き届かせ、安心して利用できる体験を提供できるかが問われる。

 現在、宿泊・サービス業界は、人材確保と定着という問題にも直面している。給与や立地条件などの問題もあるが、職場にあこがれの人、尊敬できる人『ヒューマニティを持った人』がいるかどうかも働く側の職場を選ぶポイントとなっていると推測できる。

 職場がホスピタントでいっぱいになれば、働く環境が良くなり、JS(働きがい)もわき、ESが向上し、人材の定着、ひいてはCSの向上にもつながるだろう。

 ――ホスピタントになるには具体的にどうすればいいのか。

 当法人は、このほど発行したこの教科書(接遇介助士ホスピタントの教科書)をもとにしたカリキュラムを作成しており、観光系の専門学校や大学で教えている。授業では、器具を使って高齢者の疑似体験や、体の不自由な方の誘導方法を実践的に学ぶことができる。研修は旅館・ホテルのスタッフ向けにも行っている。

 研修を受ければ当機構がホスピタントとして認定し、「認定バッジ」を贈ることになる。

 バッジは地球をイメージした瑠璃色を背景に、日本を象徴する桜の花が三つ星の様に描かれている。これは「今日、人から感謝されることを三つ行ったか」を意識し続けるためである。なぜならホスピタントたる者は、1日に最低3回は「ありがとう」と言ってもらえる存在であるべきだからである。例えば電車で高齢者に席を譲る、ベビーカーを押しているお母さんを手伝うといった小さな行為の積み重ねだ。

 旅館・ホテルにおいては、例えば女将さんがホスピタントになれば、そのヒューマニティが従業員に伝わり、旅館・ホテル全体の雰囲気が必ず変わる。お客さまの目線に立ち、お客さまに何をすれば喜ばれるかを考える姿勢が従業員の中で身に付くことになる。

 日本の旅館文化や温泉文化を存続、発展させるためにも、このホスピタントの精神は重要だ。これからの旅館経営は、このマインドをいかに次世代に継承するかが問われるだろう。


大谷理事長

 
 
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