ぷるんっとしていて、頬張れば口の中に潮の香りとクリーミーなうま味があふれ出す、「海のミルク」ともいわれる牡蠣(かき)。牡蠣フライもいいけど、やっぱり生牡蠣が好き♪ だが職業柄、生食を控えている方も多いだろう。弊社内でも別棟の製造所勤務の従業員は牡蠣の生食厳禁だから、食べる時は申し訳ないなぁと思ってしまう。結局、地方や海外など旅先で食すことが多い。喫食後48時間たって発症しなければ、感染の確率が低いといわれており、職場に2日間行かない状況なら、多少は安心だ。
ところが近年、食中毒菌であるノロウイルス・フリーの牡蠣、つまり「あたらない牡蠣」が存在するのだという。どういうこと?
牡蠣は他の二枚貝と違って、砂に潜ったり移動したりせず、一度どこかに定着すると、一生そこから動かない。動かずに栄養補給をするには、大量の海水を吸い込み、その中から餌となる植物性プランクトンを体内に取り込む必要がある。その際、海水に含まれる生活排水や産業排水由来の細菌やウイルスも吸い込んでしまうそうだ。
生食として出荷される牡蠣は、通常紫外線やオゾンで殺菌した海水を循環させた水槽で、雑菌や不純物を排出させ浄化する。約8~12時間で内臓の汚れを全て吐き出すといわれるが、中腸線(肝膵臓(かんすいぞう))にたまったノロウイルスを完全除去するのは難しいとされる。ならば、最初から細菌のいない環境で牡蠣を育てようというワケで、2023年に牡蠣の完全陸上養殖に世界で初めて成功したのが、沖縄県久米島のジーオー・ファームだ。
細菌のいない海洋深層水で、一度も海に入れずに陸上で畜養するという。だが、細菌がいなければ、餌となるプランクトンもいないということ。そのプランクトンの培養成功が、完全陸上養殖を可能にしたそうだ。まだ大量生産には至っていないようだが、市場に登場する日も近いだろう。皆で一緒に生牡蠣をいただける日が待ち遠しい。
ところで、スーパーなどで販売されている牡蠣には、生食用と加熱用があるが、違いは? 鮮度の問題ではなく、取れる海域と先述の浄化が施されているかどうかだ。生食用として漁獲できるのは、水質検査で細菌数が少ない指定海域に限られる。安全ではあるが、一般海域の方が牡蠣の栄養源となるプランクトンが多く、おいしく育つといわれる。また、浄化によってうま味成分も流れ出てしまうので、生食以外なら加熱用がおススメだとか。
牡蠣の味を左右する最も大きな要素は海域だ。ワインのブドウ畑を取り巻く地形・土壌・気候など自然環境を、フランス語でテロワール(Terroir)と言うが、牡蠣など海産物の味わいに影響する地形・水温・塩分濃度・潮の流れなど、海の環境を意味するメロワール(Merroir)という造語があるくらいだ。
確かに、同じ真牡蠣でも産地によって味わいはさまざま。次号では、筆者が各地で食した牡蠣をご紹介。乞うご期待!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。




