ホテルサービスに関するアンケート 分析レポート  サクラクオリティマネジメント 北村剛史


北村

北村氏

はじめに

 本レポートは、当ホテルが2026年3月に実施した「サービスに関するアンケート」の結果を、スタッフが業務に直結した形で活用できるよう分析・整理したものである。有効回答数は500名。設問はホテル選定時の立地意識(Q1・Q2)、チェックアウト延長に対する支払意向と許容料金(Q3・Q4)、災害時の避難・待機先としてのホテル評価(Q5)の3テーマ・5設問で構成されている。いずれも現場サービスの改善・新サービス設計に直接活かせるデータである。

 

 ホテル集積エリアの重視度(Q1:観光目的/Q2:ビジネス目的)

 「著名なホテルが集積しているエリア(ホテルが多い立地)」を、観光目的・ビジネス目的それぞれのホテル選定においてどの程度重視するかを尋ねた。

回答選択肢 Q1 観光目的 Q2 ビジネス目的
①集積エリアを選ぶように思う 8.2%(41名) 8.2%(41名)
②概ね集積エリアを選ぶように思う 27.0%(135名) 25.4%(127名)
③あまり意識していない 52.2%(261名) 52.0%(260名)
④ほとんど意識しない 6.6%(33名) 7.8%(39名)
⑤まったく意識しない 6.0%(30名) 6.6%(33名)
重視計(①+②) 35.2%(176名) 33.6%(168名)
平均スコア(1〜5) 2.75 2.79

 観光・ビジネスを問わず、「集積エリアを重視する(①+②合計)」と回答した割合は観光目的で35.2%、ビジネス目的で33.6%であった。最多回答は両目的ともに「③あまり意識していない」(52%超)であり、過半数がホテル集積の有無をホテル選定の積極的な条件とはしていないことがわかる。

 統計的検定(Wilcoxon符号順位検定)の結果、観光目的とビジネス目的のスコア分布に有意差は認められなかった(p=0.1122、p≧0.05)。すなわち「集積エリアかどうか」の重要度は、旅行目的によって変わらないと言える。

 【現場への示唆】 集積エリアに立地していること自体は、約3分の1の顧客に対し「安心感・信頼性」の補強材料となる。ただし、それだけで選ばれるわけではなく、立地優位性はあくまでサブメッセージとして活用し、サービスの質や独自性で差別化を図ることが重要である。

 

チェックアウト延長の追加料金 支払意向(Q3)

 通常チェックアウト時刻が10時の場合を前提とし、延長に伴う追加料金の支払意向を確認した。

回答選択肢 件数 割合
11時まで延長できるなら支払ってもよい 45名 9.0%
12時まで延長できるなら支払ってもよい 93名 18.6%
★ 支払意向あり合計 138名 27.6%
どちらも支払いたくない 362名 72.4%

 回答者全体の27.6%(138名)が、条件次第で追加料金を支払う意思を持っている。注目すべきは、「11時まで」希望(9.0%)の約2倍にあたる18.6%が「12時まで延長できるなら」と回答している点である。延長時間が1時間から2時間に伸びることで、支払意向が倍増することは、レイトチェックアウトプランの設計において重要な知見である。一方、72.4%の多数派は追加料金の支払いを望まないため、無料の延長サービス(特定プランへの付帯など)との使い分けが求められる。

 【現場への示唆】 「12時チェックアウト保証プラン」は潜在的なニーズが高い。料金設定においては後述のQ4の結果と組み合わせ、1時間あたり500〜999円の価格帯を検討されたい。

 

 許容できる追加料金(Q4)

 Q3で「支払ってもよい」と答えた層も含む全回答者を対象に、チェックアウト延長1時間あたりの許容料金を確認した。

料金帯(1時間あたり) 件数 割合 累積割合
100〜500円未満 296名 59.2% 59.2%
500〜1,000円未満 142名 28.4% 87.6%
1,000〜1,500円未満 47名 9.4% 97.0%
1,500円以上 15名 3.0% 100.0%

 最多は「100〜500円未満」で59.2%を占め、「500〜1,000円未満」と合わせると累積で87.6%に達する。1,000円以上を許容する層はわずか12.4%にとどまる。市場感覚としては、500円〜999円の価格帯が最も受け入れられやすく、1,500円以上の高額設定は利用者獲得の障壁になる可能性が高い。

 【現場への示唆】 レイトチェックアウトの有償オプション設計の際は、「1時間900円」前後を基準として検討することが現実的である。1,000円を超えると利用者が急減する可能性があることを念頭に置きたい。

 

災害時の避難・待機先としてのホテル評価(Q5)

 地震・台風・大雪等の有事の際、「自宅に戻れない・いられない場合に安全に過ごせる場所」としてホテルを利用できることをどう評価するかを尋ねた。

回答選択肢 件数 割合
①高く評価する 185名 37.0%
②ある程度高く評価する 202名 40.4%
ポジティブ評価合計(①+②) 387名 77.4%
③どちらとも言えない 104名 20.8%
④あまり関係ない 5名 1.0%
⑤全く関係ない 4名 0.8%

 約4名に3名(77.4%)が防災機能を持つホテルをポジティブに評価しており、否定的な回答(④+⑤)はわずか1.8%にすぎない。この結果は、防災対応能力がホテルの付加価値として顧客に強く認識されていることを示している。

 さらに、Q1(ホテル集積エリアの重視度)とQ5(防災評価)の関連をカイ二乗検定で分析した結果、統計的に有意な正の関連が確認された(χ²=8.83、自由度1、p=0.0030、p<0.01)。ホテル集積エリアを重視する顧客層ほど、防災機能のあるホテルを高く評価する傾向が強い。ブランド力・立地の信頼性と防災機能への期待は、顧客の中で連動していると言えよう。

 【現場への示唆】 「防災対応ホテル」としてのポジショニングは、顧客の信頼獲得・選択動機の強化につながる。非常食・充電スポット・情報提供体制など、具体的な防災サービスを対外的にアピールすることで、とくにブランド・立地を重視する顧客層への訴求効果が期待できる。

 

総括と現場への提言

 本調査から得られた主要な知見を以下にまとめる。

テーマ 主要な発見 アクション例
立地・集積 重視するのは約35%。観光・ビジネスで差なし(有意差なし) 集積エリアの安心感はサブメッセージ。サービス差別化を優先する
チェックアウト延長 支払意向あり27.6%。「12時まで」希望が「11時まで」の約2倍 12時レイトチェックアウトの有償オプション導入を検討する
延長料金 500円未満が最多(59%)。1,000円未満で約88%をカバー 1時間あたり900円前後の価格設定が現実的である
防災機能 77.4%がポジティブ評価。集積重視層との有意な連動あり(p<0.01) 防災サービスを積極的に広報・客室案内に組み込む

 本レポートで示した数値は、いずれも統計的分析に基づく客観的なデータである。チェックアウト延長の有償オプションや防災サービスの訴求は、顧客ニーズと合致した取り組みであり、サービス改善のための具体的な根拠として活用されたい。さらなる詳細分析や追加調査が必要な場合は、本データをもとに設問を深化させることを推奨する。

 
 
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