書画の大家、小痴の画室「雲林山房」。山を借景とした庭園も見事だ
韓国全羅南道観光財団は、「芸術・伝統・癒やし」をテーマに、韓国南部の魅力を国内外にアピールする事業を行っている。域内を巡る10のモデルコースを設定。昨年11~12月はこれらを体験するファムツアーを韓国、日本の報道陣、インフルエンサーを対象に実施した。そのうちの一つ、「珍島(チンド)・海南(ヘナム)芸響×美食ロード」に参加した。
多くの作品生む芸術の島「珍島」
珍島は韓国西南端にある、済州島、巨済島に次ぐ同国で3番目に大きい島。本土とは橋で結ばれ、全羅南道の主要都市、木浦(モッポ)から車で1時間ほど。
珍島といえば日本ではヒット曲「珍島物語」と、その歌詞に登場する「海割れ現象」で知られるが、現地ではさまざまな芸術を生んだ「芸術の島」として名高い。
山の麓の風光明媚な場所に位置する「雲林山房(ウンリムサンバン)」は、朝鮮時代後期の書画の大家、「許錬(ホ・リョン)」(雅号=小痴<ソチ>、1808~1893)が多くの作品を生み出した画室。小痴をはじめ、その流れをくむ一族5代の画家らが手掛けた作品がここに残されている。

書画の大家、小痴の画室「雲林山房」。山を借景とした庭園も見事だ
珍島で生まれた小痴は、幼い時から絵の才覚があったといい、ソウルで著名な書画家「金正喜(キム・ジョンヒ)」(雅号=秋史<チュサ>)の指導を受けて成長。朝鮮時代後期、書画の大家として確固たる地位を築いた。師の死去をきっかけに生まれ故郷の珍島に戻り、自身のアトリエである「雲林山房」を築いた。
施設は瓦屋根の家屋「雲林山房」と、これらの作品を展示する「小痴記念館」、周囲の山を借景とした庭園で構成。一時、放置されていたが、小痴の孫「許楗(ホ・ゴン)」(雅号=南農<ナムノン>)の手により1982年、現在の姿に修復された。

小痴とその作品を紹介・展示する「小痴記念館」
珍島が「芸術の島」として評価されるのは、この小痴の存在とともに、かつては政治犯の流刑地であり、罪に問われた文官たちがこの地で芸術活動にいそしんだことが背景にあるとされる。
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韓国の伝統音楽「国楽(クガク)」を鑑賞できるのが「国立南道国楽院」だ。「雲林山房」にほど近い、海を見渡す風光明媚な場所に2004年オープンした国による”音楽の殿堂”。プロによる歌と踊りのステージを1公演につき約80分、繰り広げる。

「国立南道国楽院」の開演前のステージ。ここで華麗なパフォーマンスが披露される(開演中は撮影禁止)
この日の出し物は、小太鼓を使った素早い踊りと大太鼓を使った力強い踊りが印象的な、珍島の代表的な芸能「プンノリ」、春のウグイスを表現した宮中舞踏「チュネンジョン」など。
迫力のパフォーマンスに観客は圧倒される。国楽を習う仲間同士で訪れたという米国在住の韓国人団体の熱狂的な応援がこの日は特に目立った。
ロビーには韓国の伝統的な打楽器や弦楽器が多数展示。来場者がこれらの音を聞いたり、奏でたりできる仕掛けも面白い。

ロビーには韓国の伝統的な楽器を展示
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海に囲まれているだけに、珍島には海産物が豊富。この地ならではの食が楽しめる。
昼に立ち寄ったのが「カルビトゥムブッコク」(牛カルビと大根のうま味スープ)を提供する食堂「ベッコドン」。ベッコドンは韓国語で「船の汽笛」の意味。スープは韓国料理店で提供されるテールスープの味わいだが、海藻がたっぷり入っているのが珍島ならでは。
夜に訪ねた「サムゴリ牡蠣(かき)食堂」は、目の前に海が広がるカキ小屋のような雰囲気のカキ専門店。テーブルに山盛りの焼きガキと生ガキがこれでもかと、次々と運び込まれる。焼きガキはビニールの手袋をはめて、専用のナイフで殻を開いて中身を食す。生ガキはお好みでコチュジャンやニンニクなど薬味を付けて。
雄大な海を見下ろすリゾート「海南」
ツアーは韓国本土西南端の海南郡も訪れた。海南郡は全羅南道最大の郡で、木浦と珍島のちょうと中間に当たる。珍島と同様、多くの詩人を輩出した芸術のまち。醸造酒「マッコリ」の産地でも有名だ。
朝鮮時代の著名な文臣・詩人「尹善道(ユン・ソンド)」の古宅で、その遺物が展示される「緑雨堂(ノグダン)」、100年の歴史を持ち、昔ながらの造り方と地域の特産物を生かしたマッコリを醸造する「海倉(ヘチャン)酒造場」が主な見どころ。
宿泊は全ての部屋から雄大な海を見下ろすリゾートホテル「ヘナム126オシアノホテル」。キャンプ場やゴルフ場を展開する「オシアノ観光団地」に立地。2024年オープンの新しい施設で、館内外ともシックで大人のリゾートの雰囲気だ。

全ての客室から雄大な海を一望する
館名の126は、一帯のリゾートが東経126度に位置することからその名が付いたという。

「ヘナム126オシアノホテル」外観
珍島、海南への玄関口「木浦」
珍島と海南の玄関口となるのが全羅南道の主要都市、木浦だ。韓国の高速鉄道「KTX」湖南線の終点で、起点であるソウルのターミナル駅の一つ、龍山(ヨンサン)駅から約2時間30分。珍島、海南へはそこから車に乗り換える。
木浦は先の大戦以前に日本が建築した古い建物が残る風情ある港町。まちの歴史を展示した「木浦近代歴史館1館」(旧・日本領事館)、「木浦近代歴史館2館」(旧・東洋拓殖株式会社)を含めた一帯が「木浦近代歴史文化空間」に指定されている。

旧・日本領事館の「木浦近代歴史館1館」
まちのシンボルは標高228メートルの「儒達(ユダル)山」。麓と山、離島を結ぶ海上ケーブルカー(ロープウエー)が運行されている。

海沿いの遊歩道。上空に麓と山、離島を結ぶ海上ケーブルカー(ロープウエー)が





