【コラム】ホテルの評価を左右する2つの要素「ホテル格付けと SDGs対応との関係性」 サクラクオリティマネジメント 北村剛史


観光品質認証協会 統括理事 北村剛史氏

 本報告書(コラム)は、ホテルの「格付け(グレード)」 と「SDGs(持続可能な開発目標) への取り組み」 が、顧客の総合評価にどのよう な影響を与えるかを統計的に検証したものです。国の男女200名を対象に、同一回答者が異なるシナリオを評価する手法(反復測定デザイン)を用いることで、個人の好みのばらつきを排除した高精度な分析を行いました。以下に、業界の皆様にとって重要となる主要な発見と、今後の戦略的示唆をまとめます。

 

1.調査結果の核心: SDGsは確実に評価を押し上げる

 分析の結果、最も明確に示された事実は、ホテルのグレードに関わらず、SDGsへの取り組みを強化することで顧客評価が有意に向上するという点です。具体的には、SDGs対応が「低い」 状態から「高い」 状態へと変化するだけで、5段階評価における顧客の総合評価は約1.0ポイント上昇することが確認されました。

 競争の激しいホテル業界において、顧客評価の1ポイントの差は極めて大きく、集客や単価に直結する重要な指標となるはずです。この結果は、環境や社会への配慮がもはや「企業の社会的責任」という枠を超え、顧客満足度を直接左右する「サービス品質の一部」として機能していることを示唆しています。

 

2.格付けとSDGsの相関関係

高級ホテルであっても油断は禁物 

 特筆すべきは、高級ホテル(格付け5)であっても、SDGs対応が不十分な場合の平均評価は「2.96」 にとどまったという事実です。一方で、設備やサービスが簡素なエコノ ミ ーホテル( 格付け1)であっ ても、 SDGs対応が充実していれば「2.89」という評価を獲得しています。

 つまり、いかにハードウェアや人的サービスが最高レベルであっても、環境配慮や社会貢献への姿勢が欠けていれば、顧客からの評価はエコノミ ーホテルと同程度まで低下するリスクがあるということです。現代の顧客は、 ラグジュアリ ーな体験と同じくらい、その消費行動が社会的に正しいものであるかを厳しくジャッジしているということでしょう。

「高級 × SDGs充実が最強の組み合わせ

 最も高い評価を獲得したのは、予想通り「高級ホテルかつSDGs対応も充実している」条件で、平均評価は「3.91」に達しました。対照的に、両方の要素が低い場合は「1.95」と最低評価となりました。

 統計分析における交互作用の検証からは、SDGsの評価向上効果はホテルのグレードに依存せず、独立して「加点」 されていることが判明しました。これは、どのような価格帯やカテゴリーのホテルであっても、SDGsへの取り組みを行えば、その分だけ確実に評価が上乗せされることを意味しているといえます。

 

3.業界への示唆と今後の戦略

 これまでホテル業界では、施設の豪華さ、立地、サービスの質が主要な競争軸でした。しかし本調査は、SDGsへの取り組みがこれらと並ぶ、あるいは補完する「新たな差別化の武器」になり得ることを示しています。

エコノミ ーホテル・ ビジネスホテルへの提言

 設備投資に限界があるエコノミーホテルにとって、SDGsはコストパフォーマンスに優れた評価向上のチャンスとも言えます。アメニティの脱プラスチック化、フードロス削減、地域社会との連携など、大規模な改修を伴わないソフト面での取り組みをアピールすることで、上位グレードのホテルに肉薄する顧客満足度を実現できる可能性があり ます。

ラグジュアリーホテルへの提言

 高級ホテルにおいては、SDGs対応はもはや「差別化要因」ではなく「必須条件」 となりつつあります。富裕層を中心とした顧客層はサステナビリティへの感度が高く、豪華さと環境配慮の両立を求めています。SDGsへの取り 組みを怠ることは、ブランド価値を毀損する重大なリスク要因であると認識すべきでしょう。総じて、これからのホテル経営においては、「格付け」という従来の垂直的な評価軸に加え、「SDGs」という新たな評価軸を経営戦略に組み込むことが不可欠です。顧客は、そのホテルがどれだけ社会に対して誠実であるかを見ています。SDGsへの投資は、社会貢献であると同時に、将来の収益性を高めるための最も合理的な投資であると言えるでしょう。

 

㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役・㈱日本ホテルアプレイザル 代表取締役・不動産鑑定士  北村 剛史

 
 
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