【口福のおすそわけ 584】麻辣湯 前編 竹内美樹


 ずっと気になっていた「麻辣湯(マーラータン)」。だが専門店はどこも行列だし、メインの客層10代~20代の若い女性たちに紛れ込む勇気もなかった。でもやっぱり食べたい!と行ってみることに♪

 そもそも麻辣湯って? 中国発祥の薬膳スープ料理だ。麻は花椒(ホアジャン)のしびれるシビ辛、辣は唐辛子のピリ辛、湯はスープの意で、激辛料理の一つ。この「激辛」という言葉が一般に認知されるようになったのは、1986年に流行語大賞で銀賞に選ばれてからといわれる。キッカケは1984年に発売された湖池屋の「カラムーチョ」だとか。翌年には激辛カップ麺「カラメンテ」が登場、年間35億円の売り上げを叩き出し、空前の大ヒットを記録したそうだ。この辺りが第1次激辛ブームとされ、日本はちょうど円高不況にあえいでいた。

 続く第2次激辛ブームは、バブル崩壊の1992年。タイ料理「コカレストラン」が日本上陸、赤でなく青唐辛子の辛味と酸味のハーモニーに、多くの人が魅了された。そして第3次の契機となったのが、2003年に東ハトが発売した「暴君ハバネロ」。2008年には「蒙古タンメン中本」のカップ麺が誕生し話題に。折しもリーマンショックの年。こうなると、どうやら専門家が言うところの、不況と激辛ブームは無縁ではないという説が現実味を帯びてくる。実際、人は辛いモノを食べると脳内でβ―エンドルフィンと呼ばれる快楽物質が分泌され、多幸感が得られるとか。激辛でストレスを吹き飛ばす!という感じだろう。

 現在は、2010年代後半から続く第4次激辛ブーム中とされる。当然コロナ禍の影響もあった。2017年末に生まれたパワーワード「マー活」で、花椒のシビ辛がクセになった人たちの多くが訪れたのは、「ガチ中華」の一つ「火鍋」の店だった。だが、大人数で鍋を囲むのは、コロナ禍ではキビシイ。そこで評判を得たのが麻辣湯だ。個食であることや、春雨麺が伸びにくく、デリバリーに向いていることも手伝い、急速に支持が広がった。2025年ウーバーイーツの年間注文数トップは麻辣湯であった。

 人気の端緒となった店が二つある。一つは2007年創業で日本企業の「七宝麻辣湯(チーパオマーラータン)」。もう一つは2018年に日本初出店した中国発グローバルチェーンで、世界に7千軒以上の店舗数を誇る「楊国福麻辣湯(ヤングオフ―マーラータン)」だ。両者ともブレイクしたのは2024年。元々日本に麻辣湯という食べ物がなかったワケで、市場獲得には時間を要した。2025年末で、七宝は約50店舗、楊国福は約20店舗にまで店舗数を増やしている。

 ブレイクの要因は、SNS映えする真っ赤な見た目に反して、春雨麺だから低カロリーでダイエット向き、野菜がたくさん取れる上カラダに良い薬膳も取り入れられ、ヘルシー志向な女性たちの心をつかんだこと。さらに、好みの具材を選べて、スープや辛さもカスタマイズできるエンタメ性がウケた。では、どうやって自分だけの1杯を作り上げるのか? 続きは次号で♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
 
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