【駅メロとわずがたり49】JR高田馬場駅➀ 「鉄腕アトム」はご当地駅メロ火つけ役 藤澤志穂子


高田馬場駅高架下の壁画

 JRと西武線が乗り入れる高田馬場駅に降りると、どこか懐かしい「手塚治虫ワールド」に引き込まれる。JR駅の発車メロディはアニメ主題歌「鉄腕アトム」、駅を降りると高架下には手塚治虫(1928~89年)が手掛けた、アトムをはじめとするキャラクターたちが生き生きとした表情を見せる巨大な壁画がある=写真。かいわいは早稲田大学や専門学校、日本語学校も多いことで、近年はアジアンタウンのようなにぎわいも見せている。そんなダイバーシティの街を、アトムたちは温かく見守っているかのようだ。

 駅の発車メロディ「鉄腕アトム」は、1963年からTV放送された人気アニメ番組の主題歌で、2003年3月から使用されている。主人公のアトムが2003年4月に高田馬場にある科学省で生まれた設定になっていること、手塚氏の権利関係を管理する手塚プロダクションが近くにあることで、地元の高田馬場西商店街振興組合がJR東日本に働きかけて実現した。メロディは音楽会社が制作、その費用は、組合が負担した。開始当時はまだ首都圏での「ご当地駅メロ」が少なく、JR東日本はメロディを発車合図とすることに安全性の観点から難色を示したという。当初は2カ月間の期間限定だったが、大好評となり、現在まで続いている。高田馬場が火付け役となり、ご当地メロディが広がっていった経緯がある。

 壁画は1998年4月にJR線の高架下、2008年3月に西武線の高架下に各々設けられた。高架下は落書きで埋められ暗い雰囲気になってしまうことも多い。振興組合では街を明るくし、「クリーン高田馬場を実現したい」と、早稲田大学や新宿区、手塚プロダクションのサポートも得て5年越しで1枚目の壁画を実現させた。「ガラスの地球を救え」という、手塚氏が生前に遺した環境問題に警鐘を鳴らした著書のメッセージがベースになっている。春夏秋冬、朝昼夕夜の流れを描いている。2枚目は江戸時代から現代、未来への時間の流れを描いた。付近は地域住民が夜に清掃し、常にきれいな状態に保たれている。

 高田馬場の商店街の一画に手塚氏は仕事場を設け、数多くの名作を生み出した。地域活動にも熱心に協力し、盆踊りの際にアニメのセル画を商店街に提供し、街頭に並べたあんどんに張り付けられていたという。手塚氏はかいわいの店舗もよく訪ね、集まる編集者の分も出前の食事を注文していた。その一つの中華料理店「一番飯店」では、手塚氏が好きだったという具だくさんの「あんかけ焼きそば」を今も食べることができる。その先の路地を入った場所にあるのが手塚プロダクション、壁面にはアトムの絵が描かれ、入り口にはアトムが立っている。

 生前の手塚氏と直に交流のあった人たちも少なくなった。だがその思いはアトムを通じ、着実に地域に根付いている。

 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。
    

高田馬場駅高架下の壁画

 
 
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